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この際、参議院をリストラしろ

3/13(火) 11:02配信

ニュースソクラ

合区逃れ自民改憲案のお粗末

 自民党が、憲法改正に参議院の「合区逃れ」条項を盛り込もうとしている。選挙制度いじりの姑息な案に他党は背を向ける。この際、参院のリストラも含む2院制改革を、正面から取りあげてはどうか。

 日本国憲法の土台となったGHQ(連合国軍総司令部)草案は「1院制」だった。日本政府が巻き返し、貴族院復活を懸念したGHQと折り合ったのが「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という憲法43条の条文だ。

 1946年の帝国議会での新憲法案審議で、この条文に噛みついたのが、憲法学者の佐々木惣一貴族院議員。「全国民を代表する同じものが2つ必要か。参院には衆院と違う職責があるべきだ」という論旨だった。

 第1院の衆院は(1)首相指名(2)予算の議決(3)条約の承認、で参院に優越するが、予算が通っても関連法案が通らないと執行は妨げられ、条約も関連国内法案が通らないと履行に支障をきたす。両院の権能は、ほぼ等しく「同じものが2つ」に近い。

 両院で多数派が異なる「ねじれ」だと、参院は“政争の府”と化し国政が機能不全に陥る。多数派が同じだと、参院は「衆院のカーボンコピー」と揶揄される。「良識の府」「再考の府」の美名にほど遠い現実だ。

 議院内閣制をとる主要先進国では、英国もドイツもカナダも第1院の権能が圧倒的に強い。イタリアは日本と同じで両院が対等だが、政権がころころ替わることで知られる。第2院が強すぎるのだ。

 そんな教訓も踏まえ、43条を変えるのなら感心なのだが、自民党案は、両院議員の選挙制度にかかわる47条の改正なのだ。

 都道府県を単位とした参院の選挙区は、1票の格差(議員1人当たりの有権者数の格差)が5倍にもなり、最高裁が「違憲状態」と判断、国会に選挙制度自体の仕組みの見直しを求めた。

 これを受け、参院を、全国をブロックに分けての比例代表制や大選挙区制にする案なども検討されたが、結局、選挙区制を残し、2016年の参院選から「鳥取、島根」と、「高知、徳島」の2つの合区を導入した。これが有権者の評判が悪いというので、合区解消を目指した自民党の47条改正案になった。

 この案だと、1票の格差は広がり放題で、最高裁が眉をしかめた選ばれ方で正当性が低い参院が、衆院とほぼ同等の権能を持ち続けることになる。先週の参院憲法審査会で自民党が改正案を説明したが、野党や公明党が反発したのは当然だ。

 自民党が改憲4項目とする他の3つ「9条」「緊急事態」「教育充実」は、国民的関心を集めるテーマだが、合区解消は「参院自民党のための改憲」。他党の冷淡さからみて、国民投票にかけるに必要な衆参両院での3分の2以上の賛成は得られまい。

 ならば、この際、72年前に佐々木貴族院議員が求めた参院独自の職責を明らかにする改憲を検討してはどうか。参院を都道府県代表にするのも一案だが、その場合、地方政府代表で構成するドイツの連邦参院のように、権能は限定されるべきだろう。参院は何を代表し何を職責とする院なのか、をはっきりさせる改憲なら、ぜひやってほしい。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:3/13(火) 11:02
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