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こうしてダメな文章は作られる! 読み手を混乱させる「ダメ文」の特徴 その傾向と対策

3/14(水) 12:05配信

ねとらぼ

 大学教員として、学生の書いたレポートを多く読む中で発見した「ダメな文章の書き方」。いわゆる「ダメ文講座」の続編をお届けします。前回は、

【「誰よりもキミが好き」のもう1つの意味】

・読点を使わない、変なところに打つ
・文をねじれさせる
・並列関係を混乱させる

 という3つのダメ文ポイントについてお伝えしました。

(参照:【関連記事】これさえ守れば「ダメ文」が書ける! 人に伝わらない「ダメな文章の書き方」講座)

 今回はさらに踏み込んで、もう少し“書くのが難しいダメ文”についての研究をしてみたいと思います。これらのポイントをきちんと守れば、人に全然伝わらない、正真正銘のダメ文を書くことができるでしょう。

●多義文 ~1つの文に複数の意味がある~

 次の文を読んで、意味を説明してみてください。

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誰よりもキミが好き
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 どうでしょうか? この文には2つの内容があります。1つは、「(他の女の子の)誰よりも君が好き」で、もう1つは「(君のことが好きな他の)誰よりも君が好き」という内容です。

 つまり、「誰よりも」で比較されるのが相手の側なのか自分の側なのか、というちがいです。

 このように、1つの文に複数の意味があるタイプのものを「多義文」と呼びます。このような多義文は、読み手に複数の解釈をさせてしまうため、もしも読み手が書き手の意図とは異なった意味で解釈してしまった場合、読み手がそのあとの文章を読み進めたときに混乱してしまいます。

 以下は、あるWebメディアの記事を改編したものです。

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小野寺さんは東京都日野市のマンションに居住していたが、今年4月ごろから、家族も含め、連絡が取れなくなっているという。
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 上の文の場合、「小野寺さん一家と連絡がとれなくなってしまった」という解釈と、「小野寺さんとは、周囲の人間だけでなく家族ですらも連絡がとれなくなってしまった」という解釈の2つが成り立ちます。

 さらに、以下も実際にあった新聞記事を少し変えたものです。

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補助金は来年度から大規模企業に対象を絞った上で支給額を減らし、企業の自立を促す方針だ。
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 この文では、「補助金の支給を大規模企業のみにして、その上で支給額を減らす(これまで支給してきた、小規模企業対象の補助金は打ち切る)」のか、「補助金の支給額を減らすのを大規模企業のみにする(小規模企業の支給額は減らず、現行のまま支給される)」のか、どちらか判断に困るところです。

 多義文は、書こうとしても、なかなか書けるものではありません。多くは前後の文脈で1つの意味に固定されるものです。ですが、前後の文脈が少ないとき、例えばまとまった文章の冒頭部や見出し文などに多義文があると、その後の読解をミスリードしてしまうことがあります。

 上の文章を例にすると、「補助金の対象を大規模企業のみにする」場合は、

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補助金は来年度から支給対象を大規模企業のみとし、また支給額を減らすことで、企業の自立を促す方針だ。
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 とするか、あるいは、

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補助金は来年度から小規模対象のものを打ち切る。また、大企業についても支給額を減らし、企業の自立を促す方針だ。
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 とすれば、文脈が明確になります。

 「補助金の支給額を減らすのを大規模企業のみにする」場合であれば、

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補助金は来年度から大規模企業に対象を絞った上で支給額を減らし、企業の自立を促す方針だ。なお、小規模企業については、現行の補助金が継続される。
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 と、一文を加えればよいでしょう。

 ところで、この多義文については、集中的に解説している本(『誰よりもキミが好き―日本語力を磨く二義文クイズ』山内博之)があります。本の題名をみれば分かる通りですが、本稿の執筆についても参考にしました。

◆ダメ文のポイント=====

・複数の解釈を許す文=多義文がある。
・複数の解釈を許さないように、文脈を明確にする。


●「ことこと」煮込んだ文 ~繰り返しのダメ成分~

 同じ表現が繰り返し続くと、文が平板になりますし、読みづらくなります。例えば、次の文をみてください。

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この手続きを簡略化することによって、投票の意欲がなくなることがなくなり、期日前投票の投票率が上がることになる。
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 これは、実際にわたしが読んだレポートを少し改編したものです(元の文は、読点が一切ありませんでした)。

 さて、この文の問題点は「繰り返される『こと』」です。なぜかは分かりませんが、文章を書き慣れていないひとは「『こと』を繰り返す」傾向があります。このように、「こと」を繰り返すタイプのダメ文を、わたしは「ことこと煮込んだ文」と呼んでいます。わたしの授業を履修してくれている学生のみなさんには、「文をことこと煮込まないように」と注意しています。

 なお、この文ですが、

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当該の手続きの簡略化によって投票意欲の向上が見込まれる。そのため、期日前投票の投票率もまた、向上が予想される。
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 とすれば、すっきりします。

 「こと」のほかにも、繰り返すことでダメ文になる成分があります。例えば、「的」がそうです。

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世界的に共通する文化が、国境を越えた中性的なルールとなる。そのような普遍的な文化的現象が繰り返されることで、進歩的な局面をきりひらく。
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 何を言っているか分からないと思いますが、わたしにも分かりません。ただ、ここでは「~的」が多くて、その「分からなさ」を助長しているのは確かです。

 このタイプのダメ文は、文章を書くことが苦痛なタイプのひとよりむしろ、文章を書く意欲のあるひとが書きがちのように思います。おそらく、「的」の前にくる語にバリエーションが必要なためでしょう。ある程度の語彙力のあるひとでないと、このタイプのダメ文は書けません。

◆ダメ文のポイント=====

・(文章を書き慣れていないひと)「こと」を繰り返す。
・(ある程度の語彙力があるひと)「的」を繰り返す。

●頭でっかちな修飾 ~蓄積されている情報が、読み手の負担になる~

 最初から読んでいくと、情報は蓄積されていくのにそれが何を意味するのかが分からず困惑する文。それが「頭でっかちの修飾をもつ文」です。実例をみてください。

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18世紀当時は蒸気機関を動力とし、その後19世紀になってガソリンエンジンを動力とする機関を備え、日本国内でも20世紀になって生産が始まった自動車は、現在、極めて一般的なものとなっている。
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 「自動車」を修飾している部分が長すぎます。途中までは、まるで「自動車」を当てるクイズのようです。この文の修飾部は70字弱ですが、手元のサンプルでは、90字をこえるものもあります。被修飾語の「自動車」が出てくるまで、「この内容は一体、何についてのものなのだろう?」と、蓄積されていく情報を保持しながら読まなければなりません。読み手には大きな負担がかかりますし、途中で内容を忘れてしまいそうになります。

 この文章の場合、修飾部分をうしろにもってくると、読みやすくなります。

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現在は極めて一般的なものとなった自動車であるが、日本国内での生産は20世紀に入ってからである。エンジンを動力とするようになったのは19世紀のことで、それ以前、開発当初の18世紀では、蒸気機関を用いていた。
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 このように、修飾部分が長すぎるものを、わたしは「頭でっかちの修飾」と呼んでいます。頭でっかちの修飾と相性のいいのが、前回記事でも紹介した「ねじれた文」や「長すぎる文」です。以下は、あるWebメディアの記事を改編したものです。

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××国の大統領が昨年9月に公表した声明により、××国との関係が冷え込んだ○○国では2020年の××国万博開催の決定を控えて、△△国のオンライン請願掲示板で、万博の開催を阻止する署名運動が開始されたことを紹介する書き込みが立ち上げられた。
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 まず、「大統領が昨年9月に公表した声明により、隣国××との関係が冷え込んだ」が「○○国」を修飾するのは、容易に理解できます。が、挿入された「2020年の××国万博開催の決定を控えて」がその「○○国」と、どのような関係にあるのか、考えながら読み進めることを強制されます。そして、「△△国のオンライン掲示板で、万博の開催を阻止する署名運動が開始されたことを紹介する」が「書き込み」を修飾しています。ここで、××国でも○○国でもない、第三の要素が現れたことが、内容を複雑にしています。

 そして、その「書き込みが立ち上げられた」で文が結ばれているので、その主語は「○○国」ということになると思われますが、オンライン掲示板は「△△国」のもののはずなので、文意がうまく通じません。

 そうすると、どうやら「○○国」で立ち上げられた書き込みは、△△国のオンライン請願掲示板とはまた異なったサイトもしくはオンライン掲示板かもしれないと推測されます。

 ……おそらく、多くの読者の方は、上の解説を読み飛ばしたはずです。わたしが読者であれば、スルーします。つまり、それくらい面倒な構造になっている、ということです。頭でっかちの修飾・ねじれ文・長い文の三重苦です。実のところ、上の説明も確かな内容といえるのかどうか、自信がありません。

 とはいえ、この文は、修飾関係がややこしく、ねじれも生じているものの、「多分書き手は○○国を批判したいのだろうな」という気合いのようなものだけは感じ取ることができます。もしかすると書き手は、その「気合い」を理解してもらって、「気合い」に共感してもらえれば表現はどうでもいい、と思っているのかもしれません。

◆ダメ文のポイント=====

・修飾部分を長くすると、文全体の意味を理解させづらくなる。
・長い修飾部分を持つと、文全体が長くなりがちである。
・長い文の場合、文のねじれを生じさせやすい。
・気合いが伝われば、文としての整合性は無視してもよい。

 いかがでしたか。そういえば、この時期、大学生は学期末の試験やレポートも終えて、勉強から解放された、と一息ついているころでしょうか。一方、大学に入ろうとしている受験生のみなさんの中には、入試がまだ続いているというひともいるでしょう。

 私立大学の一般入試にはあまりありませんが、国立大学の二次試験では小論文を課すところも多いと思います。二次試験対策で小論文を書く練習を繰り返してきた受験生のみなさんであれば、本稿にみるようなダメ文を書くことも少ないと思います。が、ひょっとすると、ちょっとくらいはダメ文が生まれるかもしれません。

 前回記事と今回記事を読めば、受験生のみなさんもダメ文が書けます。何しろ、稿者のわたしは浪人を2回、留年も1回経験していますから、自信をもって断言できます。

最終更新:3/15(木) 18:09
ねとらぼ