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「健康」なら「タニタ」と、想起してもらうのが狙い

3/14(水) 18:05配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 谷田千里タニタ社長(2)

 ――「タニタ健康プログラム」で健康経営に取り組む顧客が効果を認めて続ければ、顧客は累積的に増えますね。

 そうです。ただ私は「タニタ」の名前を出すことにはあまり頓着しません。中には、この部分はうちのを使って、上乗せする部分は他のものにして、我々はこういう健康への取り組みをしていますという企業さんもあります。

 うちは「いいですよ。それで」と言っています。そういうお客様はずっとうちの健康プログラムを使っていただいています。

 他の商品でのコラボレーションでも、同様に細かいことは言いません。例えば、「タニタ食堂」監修の森永乳業のプリンや栗山米菓のおせんべいなどがあって、一番売れているのはマルコメのミソです。

 私は企業の認知度が高まればいいので、ロイヤルティー・ビジネスとは考えていないんです。当初、ロイヤルティーはいらないと言ったら、知財と広報の担当から駄目だと言われまして。確かに知的財産なので「ごめんね」と言って、いただくことにしましたけれど。

 ――スーパーに行くと、「タニタ」のコラボ商品をよく見るので、インスタントみそ汁やおせんべいなどを買いますよ。

 有難うございます。消費者に「健康」なら「タニタ」とブランドを想起してもらうのが狙いです。体重計などを買うのは10年に1度くらいですか、その時、どこかで「タニタ」を見ていて、他よりうちの製品を選んでくれればいいなと思っているんです。

 「タニタ」(のロゴ)が小さいじゃないかなんて言いません。売れればいいので、先方には、うまくお使いくださいと言っています。向こう様も、ちゃんとした物を作っていますから、縛りはあまり無く、ロイヤルティーをもっと寄こせとか言わないんです。そんなことも影響して継続的に使っていただいているのかなと思います。

 ――確かに、自然に頭に刻み込まれますね。

 それだけ頭にブランドを刻み込んでいただくには、テレビCMをどれだけやればいいのか。そこまで皆さんの目に入れば十分なんです。最近は、本業の売り上げに、だいぶ効いていますよ。

 ――タニタは体重、体脂肪などを測る体組成計などの計測計量機器から、健康管理プログラム、さらには「タニタ食堂」まで幅広く、健康関連の事業を営んでいますが、コアにある強さは何ですか。

 私は結構、原理原則に基づいてやっています。理念と経営基本方針を作り、行動指針の筆頭に「人生万事因己(じんせいばんじおのれがもと)」というのを入れています。何事も原因は自分にあるという意味で、祖父(故谷田五八士氏)が言っていたことから選んだのです。

 私は子供のころしか、祖父の記憶が無くて、祖父がどういう人だったか、大人になってから知りました。私は、やること、考えることが、祖父に似ているらしくて、そういう祖父からのレガシーが私の経営の底流にはあるのかなと思います。

 父(谷田大輔氏)も、同じことを言い方は違いますけど言っていました。

 私は「1粒で2、3度おいしい」ということを言っています。例えば、コスト削減を目指して、うまくいかなければ、失敗と言われます。しかし人事制度もよくなりますと、複数の狙いを掲げていたら、1つこけても残りがものになれば、成功したことになります。

 父は「二段構え三段構え」だったかな、問題への備えを二重三重にしなさいと言っていました。祖父は木の机に鍵をもう1つ付けていました。鍵が1つでは信用できなかったようです。

 ――「人生万事因己」は基本ですか。

 万事、自分に起因するので、うまくいかなかったら、文句を言わず自分ができなかったと思いなさいということですね。

 会社の業績が悪い。なぜか。会社が悪いからだ。それを因数分解すると、経営陣がちゃんと働いていませんでしたとなる。

 前のことを言うと父や元の役員さんが怒りそうだけど、あまり一生懸命に働いていなかった。管理にも目が届いていませんでした。だから業績が悪かった。

 突っ込みどころがたくさんあったので、一生懸命働いて、それを直していったら、どんどんよくなっているんです

 みんなが働かないからではなくて、会社の仕組みが悪かったり指示が悪かったり理由があるのです。それを経営者は自分に起因すると認識しないといけない。考え方をそう改めたので、好転したのだと思います。

 ――何の技術をどうこうと言う前に、本質的なものが大事なのですね。

 私が今、うまく行きつつあるのは、自分が先ではなくて、お客様や従業員が先と考えているからではないですか。

 会社をよくするには、お客様にいい商品を提供しなければなりませんが、そのためには従業員の生活が安定しないと駄目です。

 例えば、ボーナスもきちんと出すように徹底しています。なるべくみんなが先に取ってくれ、よくなったらオレも取るとやってきました。よそからのいただき物も全部、社内の新年会やパーティーでのゲームの景品にしています。

 本社ビルも東日本大震災の少し前に、耐震性が足りないとわかり、どうせ工事をやるならと、約6億円をかけて完全リニューアルしました。売上高1000億円(2016年度連結売上高158億円)を目指すとも言っているので、少しはよくしようと思いました。

 従業員には「皆さんの環境をよくしていきます」と言ってきて、だいぶ信じてもらえるようになったようです。

 従業員が安心して仕事に集中するようになり、前と比べていい商品なりいい企画が出るようになってきました。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:3/14(水) 18:05
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