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遊助「挑戦し壊しながら進化したい」ソロ活動10年目の新たな想い:インタビュー

3/14(水) 10:40配信

MusicVoice

 上地雄輔としても活動するアーティストの遊助が3月14日に、24枚目のシングル「みんな頑張ってる」を発売。シンプルでアコースティックな音色から温かみが伝わってくるナンバー。彼がこういったフォーク調の曲に挑戦したのは、意外にも今回が初。歌に登場する人々の生活の様子や話し声、匂いといったところまでリスナーが想像できるようにと考えて制作されたという。この他にも失恋に向き合う心情を描いた楽曲や、ダンスナンバー、青春ソングも収録した、遊助の多彩な魅力が存分に発揮された一枚となっている。ソロ活動を始めて今年10年目を迎える。遊助は「いろいろなことに挑戦して壊しながら進化したい」と10周年に向けその意気込みを語る。その決意のようなものが収まった今作について話を聞いた。

完璧に音をはめないところで人間味が出てくる

――新曲「みんな頑張ってる」は、とてもなつかしさを感じるナンバーですね。

 顔とか年代とかは分からないんですけど、初めてこの曲を聴いた瞬間に、なにか見えたというか。それこそハーモニカから始まったときに、ちょっと雰囲気のある商店街、赤ちょうちんの焼き鳥屋さんといったものが、ぼんやりと見えてきたので。そこを歌詞に落としていきました。

――<怒ったところ見た事無かった あの子が大声を出して バス停で子供を叱っていた>という女性が登場しますが、どんなイメージを思い浮かべましたか。

 廊下側の前から2番目に座っている子、みたいな感じですね。

――廊下側というと、まじめなタイプの子ですか?

 まじめでもあるし、かといって、すごく目立ちすぎた子でもないし、みたいな。俺の勝手なイメージですけど(笑)。1番前でもないし、1番後ろでもない。ど真ん中でもないし。

――なるほど。ちなみに遊助さんはどのへんの席にいることが多かったですか?

 俺は窓側の1番後ろか、後ろから2番目。こう(後ろを向く)できるじゃないですか(笑)。

――後ろの人とも話せるから、一番おいしい席ですね(笑)。

 でも前から2番目の子からは、ちょうど反対側ですよね。まあ同じクラスという、勝手なイメージですが。最初はこの席順も書こうと思ったんですけれど、この詞で分かるだろうなと思って。

――<愛想笑いなんか見た事なかった あいつが頭を下げて 焼き鳥屋始めるから来てくれって>と表現されている、店をきりもりする大将については、学生時代のときに遊助さんの近くにいたタイプの人たちでしょうか?

 近いですね。ただ歌詞の中では具体的に書いているんですけど、聴いた人が思い浮かぶような景色でよくて。みんな生まれた場所も育った環境も違うので、歌詞の内容を共有できたとしても、店の配置とか席数とか、同級生の大将のガタイとか、女の子の感じとか、たぶん全員バラバラでしょう。

 でも、だからこそみんなの曲になるのかなと思って、あえて具体的なことを書きつつ余白を残しました。あとはみんなが思う同級生だったり、先輩だったり後輩の中で、「あ、いるいる」「隣町のあの人とかも」みたいな。「あいつ元気にしているかなあ」でもいいんですけど。そういうことを思い出してくれたり、誰かと重ね合わせてくれたりした方がいいかなと思って、逆に具体的なことのなかに抽象的なことを入れているんです。

――歌詞は抽象化の部分も入れているということですが、最初の着想のときは細かくシチュエーションなどを考えるのでしょうか。

 いえ、そこまで深くは考えないです。ただ、ぼんやり頭の中に思い浮かんだ景色を見たとき、「この子はどういう子なんだろう?」とちょっと詮索すると、「席は2番目だな」とか「大人しかった子なんだろうな」と、2、3個具体的なものが浮かびあがる。

 それで「じゃあ、大人しくてお母さんに似た子にしよう」とか考えて、1個だけピックアップして、もぎとって、それを「ここのブロックに入れるか」みたいな作業をしています。大将が焼いているのも「つくねじゃないな。ハツじゃないな、と。この人、ネギマだな」みたいな。

――「みんな頑張ってる」というタイトルですが、曲自体は頑張っている感の強いメロディではなくて、歩いているようなリズムで心地よさを感じます。

 歩いている中で見かけた景色というか、それは同級生じゃなくてもいいんですけど。ぷらっと買い物をしたときに見かけるような景色をピックアップして、「ああ、みんな頑張っているんだな」って思えるような曲を作りたいな、と思ったんです。
――この曲は、子どもも口ずさめるようなやさしさもあります。

 コードはシンプルにできているので。だからこそ、生活の匂いがするというか。温度を感じるような歌詞をのせたほうがぐっとくるのかな、と。

――作曲・編曲を担当された佐藤嘉風さん(22ndシングル「流れ」作曲など手掛ける)には、なにかリクエストをされたのですか?

 いいえ、何もしていないです。候補のなかに佐藤さんの曲があったんですよ。佐藤さんとは、以前一緒に仕事をやったことがあったんですけれど、「遊助さんに合うんじゃないかな、と思って」ということで、この曲を出していただいて。でも「フォークをやりたい」とかは言っていないんです。

 だから「1つだけフォークがあるな」みたいな感じで。曲を聴いたときに「今、映像がぱってきたから、できるわ」と言って選んだんです。「ちなみに、誰が作曲したの?」と聞いたら佐藤さんだったということです。

――今の遊助さんにこういうフォークがリンクしたのはなせでしょう?

 何でなんだろう? 単純に今まであまりやったことがない、ということももちろんありましたけど。一番の理由は、やっぱり映像が思い浮かんだからなんですよね。

――今までフォークをやってこなかったというのも、意外な気がしました。

 そうですね。なんなら、唯一やっていなかったかもしれないです。

――フォークを作る中でどんなことを学んだと思いますか?

 作り方は他のジャンルと多少違ったり、「こういう歌詞にした方が逆にぐっとくるな」とか「こういう歌いまわしのメロディ感にした方が絶対いいな」というのはたくさんあるんです。でも、それはヒップホップをやった時もそうだし、初めてレゲエをやった時や、はじめてバンド系をやった時もそうだし。最初は興味から始まって、導かれるようにストンと映像が下りてくるので。いつも新しいジャンルをやるときと、あまり変わらないですね。

――フォークというと、オーガニック感は重要ですよね。

 それは大事になってくるし、完璧に音をはめないところで人間味が出てくるというか、曲を聴く人が物語に入っていきやすいと思います。「あのママがなんで怒っているのか、なにか聴こえてきそう」みたいな。

 それは歌詞には書いていないし、想像する声は人それぞれ違っていていいと思うんですけど、その奥にある、その声すらも聴こえてくるような曲ができたらいいな、と思いました。焼き鳥屋だったら「いらっしゃい」でも何でもいいんですし。政治家を目指している人は、「皆さん、僕のプランはこうです!」みたいな。その演説の様子もなんとなく想像で聴こえてきそう、みたいな曲ができたらいいな、と思いました。

――今回、こういう曲をやってみていかがでしたか。

 楽しかったです。シンプルだからこそ難しい部分もあったし、合っているかどうか分からないけど、よりいっそう温度感というか、匂い感というか、そういうものを気にしながら作れたので。また同じ音楽を作るのでも、ちょっとだけ違った気がします。

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最終更新:3/14(水) 10:40
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