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「できれば誰も転勤したくない」損保大手AIGが全国転勤を廃止する理由--金融エリートも人手不足に危機感

3/15(木) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

新生活が一斉にスタートする春は、転勤の季節。この春は引っ越し業者の人手不足から「引っ越し難民」が大量発生するのでは、とも言われているが、その一因は4月1日付けの異動に合わせた“民族大移動”が起きるからだ。

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そんな中、外資金融大手のAIG損害保険が、総合職も含め全国転勤制度を廃止することが話題となっている。

今後は国内を13のエリアに区分けし、希望エリアの中でしか異動させない。男女共に、育児や介護に直面することを想定し、より働きやすい環境を整える狙いだ。全国に支店をもつ大手金融としては異例の決断。その背景には、業界4位の危機感に駆られた戦略がある。

「全国転勤して昇進することに興味がない」

「社内の声をとると、できれば誰も転勤したくないのです。採用選考では全国転勤しますと言うが、入社後に希望をとると『職種はなんでもいいので関東で』といった声が多い。女性を積極的に登用したいが、全国を飛び回ってキャリアを形成していくことができないし、興味もないと言う。それならいっそ、転勤制度のない会社をつくればどうか、という話になりました」

そう話すのは、AIG損保の人事担当執行役員の福冨一成氏だ。

AIG損保は2019年1月から、社員が希望する勤務地からの転居を伴う異動をなくし、望んだエリアで長期的なキャリアを築く制度を本格導入する。

2018年は試行期間とする。制度のポイントは以下のとおりだ。

・全国を13のエリアに区分。そこから「ホームベース」と呼ぶ、希望の勤務地を社員が選ぶことができる。

・一方で、勤務地をどこでもいいと意思表示した社員で「モバイルエンプロイー(仮称)」の集団をつくる。

モバイルエンプロイーを、ホームベースで希望の集まらなかった支店に配置。その代わり、住宅手当を引き上げたり、会社が負担する帰省費用を毎週分認めるなど、単身赴任となる負担を極力、会社が負うと言う。

・全社員を対象に「ホームベースをどこにするか。どういう仕事に就きたいか」のアンケートを2~3月に実施中。対象者は、約7000人に及ぶ。

アンケートの結果に基づいて「試験的に(2018年の)7月に希望を反映した異動を2エリアで実施して、そこで何が起きるかをあぶり出したい」と、福冨氏はいう。

全国に、営業店舗と事故受付センターで約370の拠点があるAIGのような金融大手は、転勤がつきものだ。金融大手の多くは、転勤を免除される「地域限定社員」の採用枠を作るが、それにならわなかったのはなぜか。

「地域限定社員を作る発想もなかったわけではないが(他社の例では)賃金にも登用にも差がある印象。それでは地域限定社員が多くなってしまうと、主要なポジションにたくさんのタレント(能力ある人)をつけることができなくなる。だったら全員を転勤なしにしようという発想に変わった。むしろ、転勤のある人が特別とした方がスッキリするのでは、と」

実際、各国のAIGでは、世界を転勤する社員が「特別」というのが通例だ。

日本が大きな変革に出たことについて、福冨氏はいう。

「少子高齢化で育児や介護を抱える社員が増えているが、転居を伴う異動は変動要素になる。社員が少しでもライフプランを立てやすいように、会社がサポートする仕組み、環境をつくりますよというメッセージです」

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最終更新:3/15(木) 12:15
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