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「北九州市は修羅の国」ってうわさ、ぶっちゃけどこまで本当ですか? 市の担当者に直接聞いてみた

3/17(土) 12:00配信

ねとらぼ

 九州最北端に位置し、ネット上で「修羅の国」の異名を持つ福岡県北九州市。「手りゅう弾が路上に転がっているのが日常」「成人式では、ド派手な衣装で武装する」などヒャッハーなうわさが、まことしやかにささやかれています。

【「北九州」という混同されやすい地名から発生した「修羅の国濃縮現象」】

 しかし、これらは本当に正しいのでしょうか。ネット上に広まる「北九州市=修羅の国」説について、同市の広報担当者に取材しました。

●北九州市は修羅の国って本当? → 担当者「違います(即答)」

―― 単刀直入に伺いますが、北九州市は「修羅の国」って本当ですか?

 違います(即答)。

 市としてこのネットスラングと向き合ったことはたぶんないと思うので、個人的な感覚に基づく話になりますが。以前は福岡県全体を指す表現だったと思うんですよ。でも、後から「北九州市=修羅の国」と捉えるケースが出てきて、現在は両方が使われています。

 前提としてお話しておきたいんですが、「北九州市」という地名には、少しややこしいところがあると思うんです。というのも、「北九州」という言葉が指す地域は

・北部九州(九州北部に位置する福岡県、佐賀県、長崎県などを指す)
・北九州地区(北九州市、その周辺を指す)
・北九州市

 といくつもあって。ニュース番組を見ると「福岡市で豪雨」を「北九州で豪雨」と言ってたりしますしね。間違いではないんでしょうけど、「北九州“市”」と誤認する人もいるんじゃないの、と。

 こういう分かりにくさがあるなかで、例えば、福岡県内で何か物騒なことが起こり、ネット上で情報が拡散したとしますよね。

―― 「さすが修羅の国」とコメントする人が出てきますよね、きっと。

 ええ。さらに「やっぱり北九州は違うわ」みたいなことを言う人が現れると、ネット上のお祭り騒ぎの中で、地名の勘違いが起こって「北九州“市”は~」という話になってしまう可能性があるのではないか、と。

 実際、ネット上の記事を見ると県内にある別の市で発生した事件が、北九州市で起こったかのように書かれていることがあります。ただでさえ、ネット上のうわさのせいで怖がられている節があるのに、よその怖い話を吸収して修羅の国イメージが濃縮されているというか……。

―― インターネットには、修羅の国を強化してしまう力があったのか……。

●「路上に手りゅう弾が転がっている」って本当? → 担当者「見たことないです」

―― そもそも「修羅の国」というネットスラングは、いつからあるのでしょうか。

 正確なことは把握していませんが、私が「修羅の国」という表現をよく目にするようになったのは2000年ごろ。ちょうどインターネットが普及していった時期なのですが、このころに福岡県では物騒な事件が重なってしまいました。それで「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」あたりを起点に、修羅の国という呼び方ができていったのではないか、と。

 さらにさかのぼると、炭鉱で栄えていたこと、福岡県を舞台にした任侠映画が多数作られていたことなどから、もともと「気性の荒い人が多そう」というイメージが広まっていた可能性も考えられます。このことも間接的に影響しているのかもしれません。

 「北九州市=修羅の国」という図式が現れたのは最近のことで、市内でロケットランチャーなどが発見される事件が数年前に起こってからだと思います。

―― 「その手の物騒なものが路上に転がっているのが、北九州市の日常」なんて真偽不明の情報もありますが。

 もしもイメージ通りの修羅の国が存在したら、そんな感じなんでしょうけどねえ……。調べれば分かることですが、確かに北九州市には指定暴力団が1団体あります。でも、市民が安全に暮らせるように対策していますし、日常生活の中でトラブルに巻き込まれることなんて、まずありえないですよ。私自身、本物の手りゅう弾なんて見たことないですから。

 ネット上では「2013年にJR小倉駅で手りゅう弾が見つかった」という情報が出回っていて、記憶に残っている人もいると思います。でも、あれって結局、おもちゃだったんですよね。発見当初はそれが分からなくて、騒ぎになってしまっただけなんです。

 確かに北九州市は、刑法犯認知件数が多かった時期があります。2002年は政令指定都市全20カ所のうち、ワースト3位。でも、2016年には件数が5分の1に減り、10位になっています。ちょうど真ん中くらいですね。

―― 5分の1とは、ずいぶん減りましたね。

 件数に関しては、全国的に減少傾向にあるというのもあるんですけどね。その中でも特に改善されているから、順位が良くなっているわけです。

 でも、県外の人は「国内ぶっちぎりの1位で、治安が悪い地域」と思い込んでいることが多いらしくて。北九州市への出張が決まって「げぇっ北九州!?」と思った、職場の人から「防弾チョッキ着ていけよ」と言われたみたいな話を時折耳にします。

―― ネット上だけではなく、現実世界でも修羅の国のイメージが強いですね。

 反対に、私が県外に出張に行ったときも「銃弾なら3発まで避けられます」と言うとウケますね。

―― あなたもノリノリじゃないですか!

 修羅の国という扱いに納得しているわけではありません。しかし、残念なことに、自虐ネタっぽく使うとめちゃくちゃ強いので……。

●どうして成人式の衣装がド派手なの? → 担当者「テレビカメラが来るようになってから、ああなった」

―― 北九州市といえば、ド派手な衣装の新成人が登場する成人式も有名。あれを修羅の国のイメージと関連付ける声もありますが。

 本人たちも狙っているんじゃないですか。最初は「仲間内ではかま姿で式に出る」くらいの感じだったと思うのですが、テレビで取り上げられるようになってから、カラフルでインパクト抜群な衣装を着用する路線に変わっていったような覚えがあります。

 あの衣装は何十万円もかけてオーダーレンタルしているらしく、「一生に一度のイベント。目立たなきゃ!」みたいなところがあるんですよ。テレビカメラだけではなく、毎年アマチュアカメラマンも来ていて、変な言い方ですが「ちょっとした観光資源」みたいになっています。

―― あのような格好をしているのは、どんな若者なんですか?

 成人式参加者のうち数%くらいで、かなり少数派です。外の広場で集まって、式典会場内には入りません。でも、中身は普通の子が多いですよ。時折、いざこざがあると大きく取り上げられてしまいますが、基本的にケンカなどのトラブルは起こりません。レンタルした衣装をダメにしてしまったら大変ですしね。

 中学対抗のクラスマッチのような側面もあって、この学校はこのカラーと決まっていたり、先輩の衣装を後輩が翌年着たり。代々受け継がれる若者文化になっているようです。彼らはそのために綿密に打ち合わせして、コツコツお金をためて、たった一度のイベントに臨んでいるんですよ。「今の若者はそういうことをやらない」と思われているなかで、あそこまで熱意が持てるのはある意味、すごいことだと思います。

 個人的には、老婆心から「どうせ頑張るなら、他にやることがあるんじゃないの?」と思ってしまうところもありますが、ルールの範囲でやっている分には、まあ、いいのかな、と。

●「住みたい田舎」第1位に選ばれた修羅の国

―― 修羅の国という呼び名についてどう思っていますか?

 元ネタになっている「北斗の拳」(※)は、私も読んだことがあります。戦闘シーン、モヒカン・肩パッド姿の敵のような「危険な世紀末」要素が注目されがちですけど、その一方で、家族愛、師弟愛などの「愛」というテーマが通底している作品だと思います。

 でも、修羅の国という呼び名だと、ヤバい方の印象だけ抽出されてしまうので……そりゃあ、どう考えたって良い気はしませんよね。

※ 第2部に登場する、死闘を勝ち抜かなければ生きることさえ許されない過酷な国家という設定。

―― まあ、そうですね。

 なかなか修羅の国のイメージが払拭できていないのは、「北九州市といえばこれ!」といえる要素が特になく、自分たちの魅力をうまく発信できていなかったからかもしれません。キャラが立っていないというか。

 でも、北九州市には「あまり発展しなかったことで、かえって良いものが残った」みたいなところがあって。実は「田舎暮らしの本」(宝島社)による「『住みたい田舎』ベストランキング 2018年版」で1位を獲得しています。

 物価は安いし、食べ物はおいしいし、お酒が好きなら角打ちで安くおいしく飲めるし、インスタ映えする観光地だってあるし。本当は、いいところだと思うんですよ。定着してしまったイメージを克服するのは大変なことですが、修羅の国を乗り越えてやっていきたいですね。


―――――


 取材中、印象的だったのは「北九州市に異動が決まった人は、2回泣くらしい」という広報担当者の話。

 修羅の国というネット上のイメージから「どうして自分があんな治安の悪い場所に……」とつらくて泣くのが1回目。しかし、実際に引っ越すと予想に反して住みやすく、次の異動が決まると、今度は同市を出るのが嫌で泣いてしまう人がいるとか。

 作り話かと疑うほどよくできたエピソードですが、筆者が調べた限り、「行く前」「行った後」で大きな印象の違いがあるのは事実のようです。複数のメディアが「『住みたい田舎』ベストランキング」の結果を、「修羅の国がまさかの1位」のようにギャップを強調した切り口で取り上げているのですが、「北九州市は住みやすくて良いところ」「修羅の国? 行ったことないんじゃないの?」などのコメントが現れています。

 涙腺の緩さには個人差がありますが、「イメージの北九州市」「実際の北九州市」の差を考えると、本当に2回泣いてしまう人がいても不思議ではないかもしれません。

最終更新:3/17(土) 12:00
ねとらぼ