ここから本文です

お使いのInternet Explorerは古いバージョンのため、正しく表示されない可能性があります。最新のバージョンにアップデートするか、別のブラウザーからご利用ください。
Internet Explorerのアップデートについて

タニタ社長、幹部の一部から突き上げくらう 「上司は最後に帰る」制度の導入で

3/18(日) 18:30配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 谷田千里タニタ社長(3)

 ――谷田さんは2001年にタニタに入り08年からは社長になって、社員の意識改革に努めてきました。具体的にどんなことですか。

 おカネが一番かからなかったのは、人事評価の基準を変えたことですかね。それまでは前年と同じことをしていても、「いい仕事をしています」と100%評価していたのです。

 競合メーカーや中国企業に追い上げられているのに、冗談じゃない。昨年と同じで成長が見られない人間には、評価を90%に落として、給与、ボーナスが下がりますとしたわけです。

 効果は絶大で、「エッ、もう少し努力しないといけないのか」となりました。当たり前だと思うのですけど、そういう会社だったのです。まずは、そこからスタートでした。

 ――本当に評価が下がり、給与、ボーナスに跳ね返るのですか。

 ボーナスには少なくとも跳ね返ります。がくんとはなりませんが、開びゃく以来、ちょっぴり下がることもなかったので、驚きが走ったのです。同じことでは駄目だと気づいてくれよという趣旨なんです。

 ――ひどいじゃないかという声は無かったのですか。

 それは無いですが、ぶつぶつ言う人はいました。そんなことには構っていられません。私だってたくさん払いたいけど、毎年、同じことをしていたら原資が減るのでね。

 ――会社を変えなくてはいけないという意識づけが狙いなのですね。

 そうです。働き方については「上司帰宅ポリシー」というのをやりました。

 私は07年に取締役になったとき、現地法人のタニタアメリカの取締役をしていました。このため月のうち1週間だけ日本にいて、3週間は米国でした。

 それで時差の影響でどうしても眠くて定時の午後5時半に帰ろうとすると、とある部署の上司が「お疲れ様」と言って帰るのと毎回出会うんです。

 私は調子が悪いときで、しかも1週間しかいないのにですよ。こいつは部下の面倒を見ていないなと思ったわけです。

 「じゃあ、がんばっとけよ」とか言って部下を残して帰る上司は、私の理想の上司像と違うので大嫌いなんです。そんな無責任なのはあるかと、部下がいる間は、上司は帰ってはいけませんと。これが「上司帰宅ポリシー」で、08年に社長になってすぐに実施しました。

 早く帰りたければ、部下の仕事を手伝うとか、仕事の割り振りをうまくやるとか、それでも駄目なら「もう1人雇ってください」と言えばいいんです。そのトリガーになるように「帰るな」とやったわけです。

 ――部下に効率的に仕事をさせろと。

 そのためにやったのですが、始めた瞬間に、自分が最後まで帰れないことに気づきました。私は一番上なので、土日も営業がイベントで働いていると休めません。

 これは苦しいなと感じて、3カ月くらいで止めました。幹部から突き上げもあったためですが、これは逆によかったんですがね。

 「ちょっと来てくれ」と会議室に呼ばれたら、幹部が20人くらいいました。「これ違法だろう」と。「我々は幹部だから時間を規制されていない。自由なんだ。労働基準監督署には、大丈夫なのか」

 私は内心冷や冷やでしたが、「オレは考え方を伝えているので、その命令に違反したかったら、いいぞ。(労基署に)訴えたいなら、やってみろ」と、言ってやりました。ケンカですよ。

 これもあって「上司帰宅ポリシー」を止めたのですが、副産物もありました。このつるし上げ会議が一種の踏み絵になったのです。こいつは、何を言っても反抗するだろうとわかったわけです。

 それからは、ゴマすりも入っていたと思いますが「社長の考えはわかります」と言ってくれた人を中心に指示を流し、反抗した連中には必要最小限にとどめました。これが会社の改革に影響しましたね。

 ――「チャレンジャー制度」というのも、やったのですか。給料2割減額する代わりに、勤務時間中に好きな活動をしてよいと。

 社長になって新人の面接を始めて、世代ギャップというのか、人生のモチベーションが変わったなと気づいたんです。私なら1億円もらえたら滅茶苦茶に働くでしょうが、そんな話には関心の無い人がいるので、エッと思ったわけです。

 会社との接点は最小限にして、奉仕活動に出たいとか考え方が違うんです。それで「いろんなことができますよ」と言おうと思ったけど、当時、業績がまだ悪かったので、好きなことをやっていいですよ、だけど給料の2割は減らしますとしたのです。

 選択肢があって、例えば給料2割分の勤務時間を短縮して、その自由になった時間を自分のために使えるというのもあります。また開発をやっている人は、給料2割分を開発費用に充てて好きな物を作っていいというのも選べます。

 しかしこれは業績が厳しかったときの話で、今は応募する人はいないんです。面白い企画なら、予算をつけてあげられるので、自分の給料を削らなくても好きなことができる環境になったからです。

 ――社員がお互いに評価し合う制度もあるそうですね。

 全社員が1人1票ずつ、よく働いていると思う人に投票するんです。1票1万円で10票集まった人はインセンティブとして10万円をもらえます。

 ただし投票の対象は一般社員だけです。毎年1回実施して、最多得票の人と僅差で続いた上位3人くらいを全社員の前で表彰します。

 上からの評価では気づかれない縁の下の力持ちがいるでしょう。そういう人は非常に重要なので、何とかできないかと考えて設けたのが、この360度評価の制度です。

(次回に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:3/18(日) 18:30
ニュースソクラ