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長生き怖い…低所得層転落、移民送還で介護士不足。米国理想の老後はどこへ

2018/3/25(日) 10:00配信

THE PAGE

備えあれば憂いなしとはいかない現実

2017年7月7日付けのニューヨークタイムズの記事「One Woman’s Slide From Middle Class to Medicaid」は、メディケイドが必ずしも低所得者や障がい者を救済するだけの公的保険ではない例を示した記事です。

ある女性は、夫を亡くした直後の1998年当時、60万ドル(6400万円)ほどの貯金がありました。健康状態も良好で、3年間のナーシングホーム費用がカバーされる長期介護保険にも入っていました。ところが昨年94歳で亡くなる前の数年は認知症を患って、ナーシングホームへの入居も5年半におよび、最終的には記事のタイトルにもあるように、「中流からメディケイドに転落」してしまったのです。

あれほど完全な老後の備えをしていたはずが、認知症と予定より2年半長かったナーシングホームの入所でそこまで計画が狂うことになるとは、誰にもなかなか想像できないことでしょう。多くのアメリカ人は、歳をとれば高齢者用の医療保険「メディケア」のお世話になることは意識していても、メディケイドのお世話にまでなることまでは実感していないはずです。

しかしKaiser Family Foundationによると、65歳以上の高齢者の3人に1人がある時点でナーシングホームに入居し、その62%は費用を自費でまかなうことができません。

たとえば2017年のナーシングホームの個室1カ月の費用は平均8121ドル。筆者の住んでいるブルックリンなら1万2927ドルだそうです(大汗)。これに認知症などで「メモリーケア」と呼ばれる介護がつけば、その額はさらにはね上がります。これを問題なく支払い続けられる人はなかなかいません。年金生活を10年も20年も続けた後となればなおさらです。

その上、すべてのナーシングホームがメディケイド認定施設なわけではありませんし、たとえ認定であったとしても、すべてのメディケイド入所希望者を受け入れなくてはならない義務があるわけでもありません。ということは、入所当時には少なくとも自費で支払う能力がある人の方が、希望のナーシングホームに入れる確率は高いだろうということになります。

さらに現在、トランプ政権のもと共和党が支配する米議会では、メディケイドの予算を削減する議論が進行中です。たとえば、上院に提出されている法案が制定されれば、2036年までに予算の35%が削減される可能性があるといいます。多くのアメリカ人が、メディケイドは貧困層と障がい者のためのものと他人事でいるうちに、いつか自分もお世話になる可能性が高い制度の予算が大幅に削られようとしているのです。

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最終更新:2018/10/2(火) 15:39
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