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長生き怖い…低所得層転落、移民送還で介護士不足。米国理想の老後はどこへ

2018/3/25(日) 10:00配信

THE PAGE

そして誰もいなくなった

日本では社会の高齢化のみならず出産率の低下から、介護分野での人手不足に対する懸念が深まっています。米国でも近ごろこの問題が語られていますが、ちょっと日本とは様相が違うようです。

不足している、あるいは不足していくのではないかという懸念の理由が若者の人口減少ではなく、移民の人口減少なのです。今年2月に、これもまたニューヨークタイムズ紙ですが、その名もずばり「もし移民が追い出されたら、だれが高齢者の介護をするのだろう?」という記事が掲載されました。

テキサス州ダラス在住のある93歳の女性は、週に4日買い物や洗濯、掃除、運転をしてくれているヘルパーの女性の行く末を案じています。彼女が大きな信頼を寄せるヘルパーはメキシコからの非正規滞在者のため、いつか拘束され、強制送還されてしまうのではないかと恐れているのです。

ニューヨーク市ブルックリンでは、大手リハビリ介護センターが、人材派遣会社に20人ほどの看護師アシスタント派遣をいつものように要請したところ、今までは翌日までに山のように送られてきていた履歴書が、今回は1カ月で5通しか来ませんでした。

センターの責任者は、トランプ政権の移民政策が移民を応募から遠ざけてしまったと考えています。この施設では、一時滞在と労働を認められていたハイチ出身の看護師アシスタントや介護士が昨年11月に突如許可を取り消され、現時点では2019年7月までに出国しなければならなくなりました。

記事内で紹介されている国勢調査のデータ分析によると、ナーシングホームやAssisted Living Facility、ホームケア仲介所の介護職の4人に1人は外国生まれ。前出のテキサス州の高齢女性のケースのような個人契約ともなれば、その割合はさらにずっと高いことが想像されます。

ニューヨークの調査団体P.H.I.は、介護職の人材不足が拡大しているこうした現状について、介護業界全体、そして高齢者や障がい者、その家族に直接的な影響を及ぼす可能性を指摘しています。それと同時に、この分野の労働力不足は長期的な人口の変化によるところが大きいという指摘もあります。

高齢者の寿命が伸び、ベイビーブーマーが高齢者層に突入する中で、これまで典型的に無償・有償の介護を提供していた働き盛りの女性の人口が減少傾向にあり、かつ彼女たちのキャリア選択も広がっていることなどがその理由です。

介護は米国生まれの人々があえてつかない職業の典型例になりつつあるのです。体力的にもきつい職種にもかかわらず、たとえば2016年の平均時給はわずか10ドル49セントで、通常は福利厚生も含まれません。一方、そんな穴を埋めるかのように、介護職につく移民の数は2005年の52万人から、2015年には約100万人にまで増えました。ニューヨーク州・カリフォルニア州・フロリダ州などでは介護職の40%超が移民です。

もし移民が入国管理の取締りを恐れて仕事ができなくなったら、その打撃は計り知れません。記事によると、実際すでに人出不足に陥って閉鎖を余儀なくされたり、入居者募集を停止したナーシングホームも出ているそうです。

米国における介護士の人手不足や劣悪な労働条件は、日本と大いに共通点があるようです。移民大国の米国ではそのひずみをこれまで移民がカバーしてきたという点は大きく異なりますが……。日本では今後やってくる超高齢化社会に備え、国を挙げてベトナムなどの東南アジア諸国から看護師および介護福祉士を受け入れる試みが一部進められており、そのコントラストが興味深いところではあります。

移民ありきの米国は移民を失ってはじめて、そこにぽっかりとあいた穴に気づくことになるのかもしれませんね。ある調査によると、先の大統領選でトランプ氏に投票した年齢層は65歳以上が53%ともっとも多かったそうです。

しかし、彼の移民政策および年金・公的保険政策が高齢化社会に与えつつあるインパクトを、高齢者自身が肌身で感じるようになったとき、今度はいったい誰に投票するのか。早ければ今年秋の中間選挙でもそれを垣間見ることになるかもしれません。

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最終更新:2018/10/2(火) 15:39
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