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マクロ編:IT先進エリア「北九州」が取り組む、IT誘致とラブターン

3/29(木) 7:00配信

@IT

 こんにちは、エンジニアのOFF TOKYO(東京にこだわらない働き方)の実現を支援する「シビレ」で、地方移住専門エージェントとして活動している豊田昌代です。

データセンター内を案内してくださった、DC本部 ファシリティエンジニアリング部 松尾宣仁チームリーダー

 「UIターンの理想と現実」マクロ編、第1回「ITエンジニアにおすすめの移住先を探せ!」は、ITエンジニアの移住事情やおすすめのIT先端エリアを紹介しました。

 今回は、IT企業やエンジニアの誘致を積極的に行っている「IT先端エリア」の1つ、「北九州市」の取り組みを紹介します。IT企業やエンジニアはなぜ、「福岡市」ではなく「北九州市」を選ぶのでしょう?

●福岡市の隣で頑張る北九州の戦略とは

 福岡県北九州市(以降、北九州)は、海上空港を保有する空&海の港。1901年の「官営八幡製鐵所」操業開始以来100年余、「ものづくり」の街として繁栄してきました。

 地震や台風などの自然災害が少ないこともあり、製鉄所をはじめとした製造系の企業に加え、近年はデータセンターや「ヤフー」などIT系企業の拠点設立が増えています。

 北九州は、行政を挙げてのIT支援に積極的です。自治体、公的機関によるITベンチャーの育成支援や官学民によるIT支援が手厚く、北九州IT業界団体「KIP(北九州情報サービス産業振興協会)」や、地域課題解決のために産学官民金のネットワークが連携する「北九州e-PORT構想2.0」などの組織があります。また、ものづくりの歴史にITを掛け合わせた「IoT」(モノのインターネット)戦略も進めています。

 次に、北九州のIT企業を紹介します。

●「東京>地方」ではない、北九州拠点の立ち位置

・大量の排熱処理に適している――「IDCフロンティア」

 「IDCフロンティア」は、3万9000平方メートルの広大な土地に15万2000台のサーバを設置した、西日本最大級のデータセンターです。

 同社が北九州を選んだ理由の1つは、「電気」です。

 東京電力や関西電力ではなく九州電力を利用できることは、会社全体で電力事業者が分散していることが望まれるBCPの観点から好条件です。また、サーバの排熱対策には大量の電力が必要です。

 皆さんご存じのように、サーバは連続稼働させると大量の熱を発し、そのままにしておくと故障や障害の原因となります。サーバ冷却にかかる電気量はサーバ稼働分を上回るため、「熱」をいかに効率よく排出し最適な温度を維持するのかは、データセンターの永遠の課題なのです。

 IDCフロンティア北九州は、涼しい立地に加え、外気を状況に合わせて取り入れる設備を構築して、電気の大幅な節約に成功しています。

 なお、熱の放出だけであれば、北海道などの寒いエリアの方が適しているように思えますが、寒過ぎる地域は逆にサーバを暖めなければならないため、データセンターには不向きなのだそうです。

 電力のコストパフォーマンスが良く、他拠点と電力のリスクを分散できること。そして、地震や台風直撃などの自然災害が少なく、製鐵所が100年以上稼働を続けてきた実績があること。さらに、整地の済んでいる大規模な敷地があること、インフラが整備されていること、つまり産業地として成熟していることなどから、北九州はサーバにとって安心な場所に選ばれたのです。

・「メンバーズ」が、福岡市ではなく北九州を選んだ理由

 「メンバーズ」は、大手企業などのWebサイトの立ち上げから運営までを行うWeb制作会社です。

 本社は東京の晴海。北九州と仙台に拠点があり、メンバーは希望の拠点間をフレキシブルに動いています。仙台から北九州に異動するメンバーや、首都圏で生まれ育ちながら北九州に定着して働くメンバーも多くいるそうです。

 メンバーズ 取締役CFO 兼 情報執行役員の小峰正仁氏は、あえて福岡市ではなく北九州を選んだ理由の1つは、「過剰競争からの脱却」だと話します。

 「福岡市は都市の規模が大き過ぎて、東京と環境的に大差はありません。しかし北九州はある意味ちょうどよく、地方のメリットを享受しやすいのです」(小峰氏)

 しかも給与テーブルは東京と同じなので、家賃が安い分、可処分所得が多くなります。また、都市がコンパクトな分通勤時間が東京よりも短く、徒歩で通勤する社員も多いそうです。

 経営視点では、採用面でメリットがあるとのこと。四年生大学に加え専門学校もたくさんあるので、若手の採用がしやすいとのことです。

・企業の“頭脳”は東京から北九州へ――「bplats」

 サブスクリプション(購読型)ビジネスのプラットフォーム開発をする「bplats」は2016年4月、北九州に開発拠点を新設しました。

 「東京に本社があり、北九州で開発する」と聞くと、「東京で最先端の技術トレンドを取り入れた仕様を作り、地方拠点は開発に専念する」イメージがありますが、bplatsはそうではありません。

 「北九州で最先端のサービスを作り、東京はそれをカスタマイズして販売する」という方法を取っているため、北九州拠点は同社の「頭脳」の役割を果たしているのです。

 北九州開発センタの大谷憲監氏は、「あえて地方拠点で最先端の技術を始めたいと考えました。北九州を選んだのは、行政とIoTに力を入れていて、工場や生産業の基盤が整っているため、新しく開発する拠点としてふさわしいと思ったからです」と話します。

 IT系の専門学校が数多くあり、理系大学も多いため、エンジニアリングに関心のある学生を採用しやすいのも魅力の1つとのこと。事実、福岡県には理工系の大学が集まっていて、国立大の数は全都道府県中2位です。

 同社の「頭脳」をつかさどる拠点だからこそ、優秀な若手エンジニアが集まりやすい立地環境が、北九州を選んだ決め手となったようです。

●北九州で聞かれる「ラブターン」の実態に迫る

 北九州の企業で話を聞いていると、時々「ラブターン」という言葉に出くわします。ラブターン……?????

 「私の出身は京都ですが、妻が九州(福岡)出身なんです。東京で働いていると、夫婦とも実家が遠いので、子どもが熱を出したときなど結構大変でした。そこで、妻の地元に近い北九州に転勤を決めました」(メンバーズ 津村さん)

 パートナーのUターンに付き付き添って、もう片方がIターンする現象を、北九州では「ラブターン」と呼んでいます。奥さまの地元にラブターンした津村さんは、家賃や食費が東京より安く、待機児童問題がなくて子育てしやすい北九州の生活がかなり快適とのことです。

 北九州には、何ともいえない「人情味」が漂っています。古くから築かれたものづくりの歴史と、そこで働いてきた方たちの「よそ者を暖かく迎える」文化が、この街の雰囲気を醸し出しているのでしょう。九州内外から若者が集まる福岡市にはないこの雰囲気こそが、北九州の強みであり、多くの移住者や企業を集める原動力かもしれません。

●筆者プロフィール
シビレ 代表取締役CEO 豊田昌代
人口減や過疎化が進む地方に若い人たちを増やし、活性化させたいという思いで起業。全国各地で始まるIT企業支援の取り組みを、実際に訪れ体感し、OFF TOKYOしたいエンジニアの方々へのサービスに生かしています。

最終更新:3/29(木) 7:00
@IT