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製造業派遣2万人、ジョブグレード制度で戦力化

4/1(日) 15:03配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 若山陽一UTグループ社長兼CEO(1)

 製造業向けの人材派遣と請負業で急成長している企業がある。JASDAQに上場しているUTグループである。正社員の派遣が原則で、働きに応じた賃金やキャリア形成に配慮した人材マネジメントで、人手不足を追い風にして伸びる。47歳の創業者、若山陽一社長兼CEO(最高経営責任者)が、その独特の人材ビジネスを語る。

 ――まず生産現場に派遣している社員数からうかがいましょう。

 2018年3月期末で1万9000人を超えて、ほぼ2万人になります。ここ数年、毎年4000人から5000人の純増です。

 ――そのうち、無期雇用いわゆる正社員はどのくらいですか。

 約70%の社員は無期雇用ですが、約30%は有期雇用になります。地域限定や一定期間だけ働きたいとの理由で、有期契約を望む人がいるためです。基本的には無期雇用にしていきたいというのが方針です。

 ――17年3月期決算の業績は売上高約576億円、営業利益約34億円でした。18年3月期はいかがですか。

 途中で上方修正して、売上高が820億円、営業利益が50億円の見込みです。過去最高を更新します。

 ――業界でのランキングは?

 今3月期で恐らくトップになる水準だと思います。歯切れが悪いのは競合が未上場会社なので、正確な数字がつかめないためです。

 ――以前は請負が多かったと思いますが、現在は派遣が主力のようですね。

 今は派遣契約が中心です。請負は2割くらいです。派遣は、お客様企業が指揮命令することができますので、派遣の方が便利だという見方も強いのだと思います。

 当社の特徴は、チーム派遣というやり方です。社員をばらばらに派遣するのではなくて、チーム単位で派遣します。創業以来、変わらぬ基本的な方針です。

 派遣社員は一般的に、お客様の所で働きますから、お客様が上司で、評価は派遣会社がするわけです。指揮と評価が分かれるので、実際に誰が上司なのか、誰が部下で誰が同僚なのか、要するに自分の帰属先はどこなのか、不安定な状態におかれます。

 当社は社員を「顧客」とみていまして、派遣社員の人たちに「安心、つながり、成長」を提供すると言っています。その基盤になるのが、チーム派遣なのです。まとまった人数で仕事に就くと、自分の帰属先がある程度わかりやすくなります。

 また当社がマネジメントの面で介在する余地が生まれ、社員が働きやすい職場づくりを支援できます。

 ――チームは何人くらいの規模ですか。

 平均すると30名強です。多い職場では500名近くになります。「安心、つながり、成長」を実現して、誰もが安心して、孤立せずに働けて、自分の成長をはかれる環境を職場の中につくるには、自ずとある程度の人数で派遣することが必要になります。

 職場の中で当社の派遣社員のシェアが高くなれば、不景気になって、派遣契約の解約が始まっても、当社の順番は後の方になると思います。これも安心につながるでしょう。

 ――どのようなマネジメントで介在するのですか。

 基本的に労務管理に立脚したマネジメントです。当社は派遣後も、社員が定着して生産性を上げていけるように、労務管理面で介在する余地を増やそうとしています。お客様の企業にとっては、派遣社員が戦力化するわけです。

 具体的には、例えばジョブグレード制度を導入しています。お客様の職場の中で、派遣社員の職務等級を職務(ジョブ)のグレードによって分けます。顧客と一緒に、その職務等級のテーブルを作り、職務単価を決めるのです。

 ジョブグレードが上がれば、派遣単価を上げていただいて、社員に還元するように派遣契約を結びます。

 これにより派遣現場で働く社員にとっては、自分たちのスキルが給料にどう反映するのか、ある程度、明示されるわけです。頑張っても給料がどのように上がるのか、はっきり説明されない派遣労働と比べると、不安がだいぶなくなります。

 それが離職率の低下をもたらし、顧客企業から見ると、派遣社員の戦力化につながるのです。

 ――派遣単価は同業よりも高くなるのですか。

 平均して10%程度高くなっていると思います。今までは単一派遣単価しかなかったのですが、ジョブグレード制度でスキルに合わせて派遣単価を決めるというやり方は、お客様にとっても合理的でわかりやすい話ではないでしょうか。

 ――安ければいいと考える企業は抵抗しませんか。

 そういうお客様ももちろんいます。しかし10年前と比べると少なくなりました。以前は表面的な派遣単価の安さが重要で、ジョブグレードで単価が上がるのなら、人を入れ替えればいいという発想でもやれました。

 ところが今は、そんなことを言っていると人材確保ができなくなります。有効求人倍率が約1.6倍の中で安定した生産を保つために、人材の定着と戦力化に、一定のコストを払うようになっています。

 ――派遣社員の職務等級と派遣先企業の制度との整合性はどうとるのですか。

 顧客企業は整合性をとるようにしたり、職場を分けたり、対応はいろいろです、最終的には、派遣社員のジョブグレード制度が、顧客企業がいかに職務等級を決めて、自社の正社員だけでなく、派遣社員も含めて適用するかという場合に、評価の基盤になるのではないかなと思っています。

 この10年で生産現場での派遣社員の比率は急激に上がりました。今や生産性を上げるのに、外部労働力の戦力化は避けて通れない課題になっています。

 それに応えられる派遣会社でなければ、活用されません。こうした変化が、当社の成長の背景にあると思います。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫:「わが経営」を語る(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:4/1(日) 15:03
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