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東京のゲーム会社が「別府」で歓迎された理由――温泉Tシャツで知事と握手!~UIターンの理想と現実:大分編

4/4(水) 7:00配信

@IT

 初めまして。「fuzz」の對馬です。国民的RPGで有名な某大手ゲーム会社で15年間エンジニアとして働いた後、6年前に独立してfuzz東京本社を、2年前に別府支社を設立しました。

立地表明式での一コマ 左から安達支社長、柏谷副社長、私、広瀬県知事、長野市長。 名誉ある「立地表明式」に全員温泉Tシャツで臨みましたが、「仕事場所と服装は仕事の質とは無関係であるとアピールするため」という意図をお伝えしたところ、事なきを得ました

 fuzzは、ゲーム開発を主軸としつつ、ゲームの枠にとらわれないアプリ開発や技術開発を行っている会社です。今回は「U&Iターンの理想と現実:大分編」の前座として、別府支社設立に至った経緯をつづります。

●エンジニアによるエンジニアのための会社を作ろう

 私の知る限り、優秀なエンジニアほど理屈っぽくてワガママです。

 でも、それでいいんです。理屈っぽいのは論理的であることの裏返しで、エンジニアにとって最も重要な素養の1つですし、ワガママでいられるということは、ワガママを許してでも必要不可欠なエンジニアであることの証左です。

 であれば、論理性を重視しつつ個人の都合を優先できる会社を作れば、優秀なエンジニアが集まってくるのではないか、何より自分にとって居心地のよい会社になるのではないでしょうか。

 私は過去に2回、シアトルとサンフランシスコのITベンチャーへ出向した経験があります。両社に共通していた日本企業との大きな違いは、「全社員が常に仕事よりもプライベートを優先すること」と「そのためのリモートワークの環境が整っていること」です。

 息子の誕生日にチームのミーティングに出席するために出社して、「どうしてそんな大事な日に出社してるいんだ! もう二度とこんなことはしないで!」と同僚に叱られたこともありました。数カ月後、その同僚は家庭の事情でオーストラリアに帰ったのですが、帰国後もまるで隣の席にいるかのようにリモートで働き続けていました。

 これは、今から10年以上も前の話です。このエンジニア天国を日本で実現するために設立したのが、fuzzという会社です。創業以来6年間ずっと、取締役も社員も半数以上がエンジニア。優秀なエンジニアが働きやすい会社を目指しています。

●「作業場所」と「作業時間」の自由度

 fuzzは、エンジニアの作業場所の自由度を重視しています。

 最近ようやく日本でもリモートワークを導入する企業が増えてきましたが、「オフィスに来るのが主」で、やむを得ない場合に「在宅勤務をするのが従」というケースが多いように思います。

 ただでさえ育児や介護などで大変な社員に、追い打ちをかけるように在宅勤務の後ろめたさを感じさせたところで、生産性は全く上がりません。私たちは、オフィスワークとリモートワークが、「主従」ではなく「対等」な関係になって初めてリモートワーク環境が十分に整備されて生産性の向上につながるという仮説を立てました。

 それを実証するために、私たちは、あえて数百キロ遠方に住んでいるエンジニアを社員として採用しました。まさに必要は発明の母です。彼の存在によって、わが社のリモートワーク環境は劇的に改善し、生産性も向上しました。

 この“実験”のおかげで、後日別府支社を設立する際も、東京本社から距離が離れていることは一切問題になりませんでした。

 fuzzが作業場所と同じくらい重視しているのが、作業時間の自由度です。

 作業時間の自由度を高めるために、私たちは「ゆるコアタイム」という制度を導入しています。一般的なコアタイムは、会社に決められた時間帯は在席していないといけませんが、ゆるコアタイムは事前に連絡すれば在席する必要はありません。上司の承認すら不要です。

 仕事に応じてライフスタイルを設計するのではなく、ライフスタイルに合わせて仕事をはめ込んでいく。

 リモートワークとゆるコアタイムの組み合わせによって、この主体的なライフスタイル設計が可能になりました。ただし、この生活に慣れてしまうと、普通の会社では働けない体になってしまうかもしれませんが……。

●転機となった2枚の名刺

 実は、2年前まではfuzzが支社を設立するなんて夢にも思っていませんでした。ところが2枚の名刺を受け取ったことによって、支社設立は夢を通り越して一気に現実味を帯びました。

 1枚目の名刺の主は、fuzz東京本社と同じ日幸五反田ビルの別フロアに入居している、「フォー・クオリア」の松永社長です。

 松永さんの名刺には、東京本社と並んで「山口オフィス」の住所が記載されていました。興味本位で「どうして山口にオフィスを作ったんですか?」と聞いてみたところ、松永さんが山口県宇部市の出身で、ニアショアという言葉がはやり始めていたこともあって、山口にオフィスを設立したとの答えをいただきました。

 もう1枚の名刺の主は、その数日後にCG制作の営業でいらっしゃった、「ミックス」の堀川さんです。

 堀川さんの名刺には、「八戸支社」の文字がありました。同じように理由を尋ねてみると、CG制作会社が1つもない地域に支社設立を考えていたところ、たまたま社長とご縁のあった青森県八戸市に誘致してもらえることになり、支社設立に至ったとのことでした。

 立て続けにこのような出来事に遭遇したため、私の中で「自分の名刺にも支社を入れたい欲求」がふつふつと沸き上がってきました。それも、大阪、福岡、札幌のようなメジャーな都市ではなく、名刺交換した相手が「どうしてそんなところに支社を?」と、つい聞いてしまうような地域で、です。

 私は頭の中で候補地を探し始めていました。

●別府支社設立

 点と点はつながるものです。そこからさかのぼること1年、つまり今から3年前、社内のエンジニアから「大分を拠点に働いている若くて優秀なエンジニアがいる」と紹介されて、現別府支社長の安達さんと出会いました。

 最初は業務委託で1年間、ゲーム開発とゲーム機開発のお手伝いをしてもらいました。当時の安達さんは、大分と東京を行ったり来たりしながら複数の仕事を掛け持ちしており、会話の行きつく先はいつも大分推しの「大分ラブ」な思いがあふれ出ている人でした。

 安達さんは常々「大分のゲーム開発を盛り上げたい」と熱弁していました。そこに先の2枚の名刺です。名刺を受け取った直後、私は安達さんに「支社長をやってみないか」と打診していました。

 安達さんはやりたいことが多くて忙しい人だから断られるかもしれないと思っていました。ところが、優秀なエンジニアが働きやすい環境を目指してきたfuzzの社風を気に入ってくれたようで、とんとん拍子に支社長就任が決まりました。

 最初は安達さんの地元の大分市でオフィスを探していました。しかし、安達さんから「Iターン先としては別府市の方が魅力的ではないか」と提案され、「別府支社」のイメージが持つワクワク感に、私はあらがえなくなってしまいました。

 そして翌週には、別府駅前のオフィスを契約してしまいました。

●地元の期待

 別府に支社を設立してみて分かったのは、地元の半端ない期待です。

 fuzz別府支社は支社長1人+社員1人の2人体制でスタートしたのですが、別府市が若者の流出を食い止めるべくIT企業誘致に力を入れていることもあり、地元の皆さんに大変歓迎されたのです。

 「期待」は行政からもあり、私たちは大分県庁に招かれて、大分県知事と別府市長へ「立地表明」まで行いました。

 広瀬県知事は私の父より年上で、幾つも修羅場をくぐり抜けた人特有のオーラが出ていました。一方、長野市長は私より年下で、YouTubeを利用した情報発信やクラウドファンディングを利用した地域おこしイベントを開催するなど、既存の政治の枠にとらわれず次々と新しい手法に挑戦する人です。

 立地表明式終了後は、大分県庁で地元新聞社などのメディアから取材されました。fuzzが紙の新聞に掲載されたのは、今のところこれが最初で最後です。「満員電車で疲弊して机に向かっているだけではクリエイティブな仕事はできない。温泉でリラックスしている時にこそ素晴らしいアイデアが生まれる」という私の持論を記事にしてもらい、地元の期待に応えたいという思いがより一層強くなりました。

 U&Iターンの理想と現実 大分編、次回は別府支社長の安達さんにバトンタッチして、別府のリアルな話をお伝えします。お楽しみに!

●筆者プロフィール
「fuzz」 代表取締役社長 對馬正
あらゆる人が思いのままにクリエイティビティを発揮できる世界を目指して起業。
社長業の傍ら、いちエンジニアとして毎週1つWebアプリを開発し、ソースコードと一緒にこちらで公開しています。

最終更新:4/4(水) 7:00
@IT