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<学びの代償~奨学金返還の実情>(1)夫婦ともに負担 2世代分の教育費重く

4/8(日) 14:00配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 大学生や専門学校生の2人に1人が利用しているとされる奨学金。奨学金事業で国内最大の日本学生支援機構は本年度から、返還不要の給付型奨学金を本格実施したが、対象は低所得世帯などごく一部にとどまる。大多数の学生は貸与型を利用し、卒業後に数百万円の“借金”を負う。返還しながら就職、結婚、出産に臨む静岡県内の若者の実情と支援策を探った。

 奨学金の利用者が増えた今、返還という借金を背負って結婚する男女も少なくない。

 金融機関の正行員の望月翔太さん(32)と契約社員の妻桃子さん(33)=いずれも沼津市、仮名=は長男(4)との3人家族。夫婦で毎年、合計約40万円を返還中だ。「返還額をわが子のために貯蓄できれば、もう1人産みたいけれど」。第2子妊娠を目指すか、諦めるか―。夫婦の進学を支えた奨学金が、決断のネックの一つとなっている。

 年齢の近い兄弟がそろって進学を希望した翔太さんは両親の負担軽減のため、日本学生支援機構から第二種奨学金(利子あり、貸与型)240万円を借りて大学に進んだ。父親がリストラに遭った桃子さんも同奨学金270万円を利用して大学に通った。「とても感謝しているし、しっかり返還するつもり」と口をそろえる。

 望月さん夫婦の毎月の手取り額は計33万円。周囲と比べて悪いわけではないと思っている。しかし、長男の保育料、学資保険、夫婦分の奨学金返還と、教育に関わる費用が支出の3分の1を占める。若い夫婦にとって親子2世代分の教育費の負担は重く、収支は毎月ぎりぎりだ。

 夫婦は、大学での学びが現職で役立っているとは感じないと明かす。一方、長男にも「周りと同じように」大学に進学してほしいと願う。わが子の奨学金利用を想定すれば、子どもが増えても収支の悪化は避けられる。しかし、「子どもにまで返還の苦労を連鎖させたくない」。そろって否定的だ。

 大卒後の数年間、翔太さんの昇給はほぼなかった。仕事で必須の資格取得の費用などが天引きされ手取りが10万円を切り、通帳残高が0円となることも。保証人の親族に督促がいかないよう食事を抜くこともあった。

 関西で契約社員となった桃子さんも収入は不安定だった。遠距離恋愛の末の結婚による退職や、出産が続いた時期は金銭的に一層追い詰められた。

 現在、新たな不安要素として契約更新の問題が浮上する。雇い止めとなったら家計は悪化し、第2子妊娠はまた遠のく。

 夫婦の奨学金の返還が終わるのは6年後の見通し。「きょうだいの年齢差や自分の体力を考えると、返還が終わる前に2人目がほしい」と桃子さん。だが、家計簿を見詰め、つぶやいた。「やっぱり今は考えられない」

 <メモ>静岡県労働者福祉基金協会は昨年、報告書「教育費の実態と課題」を公表した。勤労者調査で、自身か配偶者が奨学金利用者である130人に、返還が結婚、子育て、住宅取得などに影響を与えたかを尋ねた質問で「大いに影響」「やや影響」と回答したのは72人(55%)。返還が家計に与える影響については「少し苦しい」「かなり苦しい」が合わせて54人(42%)だった。子どもが奨学金利用者の165人のうち、返還が子どもの将来設計に影響するかを尋ねた質問では「大いに影響」「やや影響」が合わせて143人(87%)に上った。

 奨学金に関する著書のある中京大の大内裕和教授は「若者のライフコースが制限されていることは大きな問題。低所得層だけでなく、人数の多い中間層への支援がなければ未婚化や少子化は打開できない」と警鐘を鳴らす。

静岡新聞社