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自己中心的! “思惑”が見え隠れする「えこひいき」路線図

4/9(月) 7:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 企業を訪問する前に、Webサイトで「交通アクセス」を確認しておく人も多いだろう。最寄り駅からの経路のほか、商業施設などは「車でお越しの方」「電車でお越しの方」と交通手段ごとに案内が記載されていることもある。路線図マニアとしては、この「電車でお越しの方」が見逃せない。企業が交通案内のために独自に路線図を作っている場合があるからだ。

【画像】スカイツリーの「えこひいき」路線図

 例として、六本木ヒルズのWebサイトに掲載されている路線図を見てみよう。六本木ヒルズの最寄り駅は六本木駅と麻布十番駅。この2つの駅を中心に、路線図に載せる駅や路線を絞り、「六本木ヒルズに来るための路線図」に特化させている。

 鉄道会社の路線図が路線全てを網羅するのに対し、企業の路線図は自分のところへ導くことを目的としている。このため、企業が作った路線図は「自己中心的」になりがちだ。その表現はときに「誰をターゲットにしているか」すらも浮き彫りにしてしまう。

 六本木ヒルズの路線図で言えば、JRや地下鉄を絞りながらも空港アクセスを載せているのは、インバウンドを意識したものだろう。六本木や麻布十番を通らない都営浅草線(浅草~大門間)をわざわざ描いているのも、浅草を訪れる外国人観光客を意識したものだと思われる。

●ターゲットを絞る路線図・広げる路線図

 先月末にオープンした東京ミッドタウン日比谷の路線図にも、成田空港や羽田空港が描かれている。こちらもインバウンドを意識したもの……とは思うが、六本木ヒルズと違って駅や路線に英語表記が無いのは少し気になる。

 東京ミッドタウン日比谷の最寄り駅は日比谷、有楽町、銀座の3駅。他には新宿や六本木などが主要駅として掲載されているが、原宿や新橋などは乗換駅にも関わらず名前が無い。「本物を知る大人たちが集う街」というコンセプトから、ターゲット層の選択と集中を行った形跡がうかがえる。

 一方、ターゲットを「絞る」のではなく、「広げる」方向で描かれた路線図もある。一年を通じてさまざまなイベントが開かれる幕張メッセは、千葉を中心に一都三県にわたる広範囲な路線図を掲載。また、味の素スタジアムでは東北新幹線や東海道新幹線が描かれており、地方からの「遠征組」も視野に入れたものになっている。

●鉄道会社グループ施設の「えこひいき」

 目的地だけでなく、その経路も併せてアピールしているのが「鉄道会社グループが運営する施設」の路線図だ。自社の鉄道やバスを利用してもらうため、路線図の中に「えこひいき」が起きている。

 東武グループである、東京スカイツリーのWebサイトに掲載されている路線図を見てみよう。東武スカイツリーラインや東武東上線などの東武鉄道のほか、直通バス「スカイツリーシャトル」の路線も記載されている。和光市やお台場、東京ディズニーリゾートから、バス1本でスカイツリーまで行けることを、路線図上でアピールしているのだ。

 西武ゆうえんちの路線図は、周辺を走る西武鉄道各線をくまなく掲載。新秋津駅から徒歩5分の距離にある、秋津駅も乗換ポイントとして記載されている。西武ゆうえんち最寄り駅の遊園地西駅と西武遊園地駅で出迎えるのは、マスコットキャラクターの「BooBooマン」だ。

 大阪府枚方市にある遊園地・ひらかたパークは、京阪電鉄グループが運営している。京阪電車が他の路線よりも大きく太く描かれており、えこひいきもここまで来るとすがすがしさを覚えるほど。東京-京都-新大阪間は普通なら東海道新幹線で結びたくなるが、JR高槻駅から京阪バスが使えることをアピールしたいので、「JR東海道線」としていることにも注目したい。

●自己中心的の究極系「マンション路線図」

 企業が作った路線図は「自己中心的」「えこひいき」という性質がある。この性質を最もよく表しているのが、マンションや住宅分譲地のチラシに記載されている路線図だろう。

 これまで見てきた路線図は、商業施設など目的地に「到着」するための路線図だった。対してマンションや住宅分譲地の路線図は、自宅から「出発」する路線図である。アピールポイントも変わり、最寄り駅までの近さや、ターミナル駅までのアクセス、少ない乗換回数でたどり着ける主要駅の多さなど、「家から近い」「どこでも行ける」ことが重要になる。

 マンションのブランディングに合わせるため、路線図のデザイン性が高まるのも特徴の1つだ。「Brillia高輪TheHouse」の路線図は、品川駅を山手線の中心におき、南北線を中心にシンメトリーになるよう駅を配置している。最寄り駅アピールのため、品川駅と五反田駅がとても近くなっているのも見どころである。

 レコードレーベルに例えるなら、鉄道会社が作った路線図は「メジャー」であり、企業が作った路線図は「インディーズ」だ。インディーズ路線図は企業の数だけデザインが異なるもの。「なぜこのデザインなのか」に思いを巡らせれば、ターゲット層やブランディングといった「深層心理」が見えてくる。