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大谷の活躍は人間国宝級だ! 落語家が芸術祭の大賞とR-1優勝するようなもの

4/13(金) 16:56配信

夕刊フジ

 【桂春蝶の蝶々発止。】

 いやはや…圧巻でした。この選手には、どのような称賛の言葉も小さく見えてしまいます。ロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手の活躍は、野球という枠を超えて、われわれ日本人全員に感動と勇気を届けてくれていますよね。

 メジャー1勝目のときは「大谷は投手に専念すべきだ!」と言われたでしょう。そして、3試合連続となる3ホーマーを放ったときは「大谷は打者に専念すべきだ!」と指摘された。

 しかし、ハーラー2勝目を勝ち取ったときには、「大谷様…もうあなたの好きなようにしてくださいませ…」という雰囲気に、全米を飲み込んでしまった。大選手というのは、結果ですべての異分子をねじ伏せてしまうものなんですよね。

 投手と打者、この「二刀流」で活躍するというのは、どういうことか?

 われわれの業界で例えれば、落語家として芸術祭の大賞に輝きながら、R-1グランプリで優勝してしまうくらいのことだと思いますね。

 「そんなのと一緒にするな」って?(笑)

 まぁ、それはそうなんですが、少し説明をさせてください。

 落語は「お笑い」と思われがちだけど少し違うのです。落語は上質なストーリーを的確な間とリズムで語る「語り部」であり、人の情や業を伝える独特な話芸なのです。

 対して、R-1グランプリは「笑い」をどれだけ多く生み出せるか。そのために作られたネタで競い合う場ですから、2つはまったく異なる。それを両方とってしまった。これは私らからすれば、驚きを禁じ得ない。

 しかも、それをメジャーでやってしまっている。これは上記の受賞に重ねて、重要無形文化財保持者(人間国宝)の域にまで達してしまった、雲の上の存在と呼べるのでしょうな。

 さて、昨今の日本人プレーヤーはどんどん海外に挑戦しています。そこで活躍することも、珍しくなくなりました。

 不肖私も、落語家として台湾での公演を何度かさせていただきました。3公演で累計1800人を集め、お客さまのほとんどが、20~30代の男女でした。私が舞台袖から登場すると、絶叫とともにスタンディングオベーション(笑)。

 そう、彼らにとっては落語って何か知らないので、ロックのライブと同じなのです。バックのスクリーンに同時通訳で中国語を載せて進行したのですが、落語を演じる最中、緊張のあまり1カ所、致命的な間違いをしてしまったのです!

 しかし! お客さんはまったく動じず笑ってくださっている。そう。通訳は何も間違えてませんからね。心の中で「私は何をしゃべってもいいんかなぁ?」と、思ってしまいましたよ(笑)。

 海を渡る、歓びとロマン。島国である日本人は、どの国の方々より海の向こうに「憧憬の念」を持っているのかもしれませんね。

 ■桂春蝶(かつら・しゅんちょう) 1975年、大阪府生まれ。父、二代目桂春蝶の死をきっかけに、落語家になることを決意。94年、三代目桂春団治に入門。2009年「三代目桂春蝶」襲名。明るく華のある芸風で人気。人情噺(ばなし)の古典から、新作までこなす。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。

最終更新:4/13(金) 16:56
夕刊フジ