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<強制不妊手術>聴覚障害者らも提訴へ 福岡の男性ら

4/13(金) 22:21配信

毎日新聞

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らへの不妊手術が繰り返された問題で、聴覚障害のある福岡県内の男性が国家賠償を求めて年内にも福岡地裁に提訴する準備を進めている。福岡県聴覚障害者協会への取材で13日分かった。同協会によると、福岡市内の80代の男性が望まない不妊手術を受けたとみられ、手術を受けた可能性がある他の約10人にも事情を聴いており集団提訴となる見通し。この問題で聴覚障害者による提訴の動きが明らかになるのは初めて。

 全日本ろうあ連盟(東京)の全国調査に伴い、同協会が今年3月から実態調査している。子どものいない高齢夫婦ら約100人を中心に5月下旬まで調査し、弁護士と相談して提訴する方針。

 協会によると、望まない不妊手術を受けたとみられる男性は20代で病院に連れて行かれた。当時は手話通訳もおらず、内容を十分に理解しないまま言われるままに手術を受けた。その後結婚したが子どもに恵まれなかった。

 協会の太田陽介事務局長(59)は「知らないまま手術を受けた人も、子どもを作らないことを承知して手術を受けた人もいるとみられる。慎重に調査したい」としたうえで「障害者への偏見が強かった時代背景もあるだろうが、子どもを作るのは当然の権利で、それを奪うのは国による犯罪だ。国にはしっかり考えてほしい」と話している。

 強制不妊手術を巡っては、手術をされた宮城県の60代女性が今年1月、個人の尊厳や自己決定権を保障する憲法に違反するなどとして、国に賠償を求め仙台地裁に提訴した。北海道や東京でも提訴の準備が進められている。

 全日本ろうあ連盟は47都道府県で3月から強制不妊手術の実態調査を始め、5月まで実施して結果を6月に公表する予定。

 福岡県聴覚障害者協会(電話092・582・2414、ファクス092・582・2419)は不妊手術を受けた県内の聴覚障害者からの相談を受ける。【平川昌範、石井尚】

 ◇多くの聴覚障害者が対象の可能性が浮上

 旧優生保護法は不妊手術の対象となる疾患として、遺伝性の精神疾患などのほかに「遺伝性の難聴又はろう」を含めていたが、手術の実態は分かっていなかった。今回の国家賠償提訴に向けた動きから、多くの聴覚障害者が実際にその対象となっていた可能性が浮上した。

 「聴覚障害者は『赤ちゃんの泣き声も聞こえない』と言われ、子育てに責任が持てないとの偏見を持たれてきた」。そう振り返るのは自身も聴覚障害がある協会の太田陽介事務局長(59)。以前から聴覚障害者が不妊手術を受けることがあると知ってはいたが「それぞれ家庭の事情がある。踏み込んで聞ける話題ではなかった」と明かす。「手術を受けた当事者も社会的な偏見がある中では言い出せない。人権問題として捉えられていなかった」

 同法を巡る問題に詳しい東京大大学院総合文化研究科の市野川容孝教授は「全国で同様の事例が相当数あるとみられ、調査が必要」とした上で「聴覚障害者は子どもを育てられないと思い込み、親族が『本人のため』と手術を受けさせたケースも考えられる。行政だけでなく私たちの障害への理解も問われなければならない」と指摘している。【平川昌範】

最終更新:4/13(金) 23:34
毎日新聞