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初っ切りにも不祥事の余波 大相撲巡業

4/13(金) 21:01配信

時事通信

◇禁じ手から暴力連想? 
 4月1日から行われている大相撲春巡業で、「初(しょ)っ切り」から、ひしゃくが消えた。暴力問題が巡業の人気演目にも影を落とした形で、厳しい世論にさらされ続ける相撲界の現状が、ここにも表れている。

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 13日、川崎市とどろきアリーナで行われた川崎巡業。三段目の琴陸山と琴隆成(ともに佐渡ケ嶽部屋)が息の合った動きを見せた。まげつかみ、キック、空手チョップ。「何すんだよ」「何だと?」。相手めがけて塩をまく。口に含んだ力水を吐きかける。行司も巻き込んだ掛け合いに、観客は沸いた。
 だが、ボクシングをまねてグーで胸を突いたり、スリッパでたたいたりする場面や、最後に力水をつけるひしゃくで相手の頭をパカーンとやるおなじみの「オチ」がない。巡業に同行している親方が事情を明かした。
 「今回の春巡業が始まって間もない頃、そういった場面で客席が静まり返って、お客さんが引いたことがあった。暴力問題を連想したようだった。これはちょっと考えなければと思い、内容を見直した」
 ボクシングをまねる場面はポーズだけ。蹴りも以前のような迫力がない。急ごしらえの見直しとあって、琴隆成は「うちの部屋に伝わるもの(筋書き)でやっていましたが、変えてからはお客さんの沸き方も違うし・・・」とやりにくそうだ。
 初っ切りで手のひらいっぱいの塩をまくネタも、同じように自粛している。別の親方は「お客さんにかかる時があって、喜ぶ人もいれば、目が痛いしぐさをする人もいるから」と話す。現場から報告を受けた日本相撲協会幹部は「あれもこれもできなくなってしまう」と嘆いた。

◇自粛、萎縮の連鎖
 初っ切りは江戸時代から伝わり、決まり手や禁じ手(反則)を観客に分かりやすく紹介する出し物。現在では巡業や花相撲で幕下以下の力士が演じ、プロレスばりの禁じ手を使ってコントのような取組を展開する。貴乃花部屋の双子力士、貴源治と貴公俊が務めたこともあった。
 もとより格闘技の動きや技は、ルールがなければ大半が暴力。禁じ手だけから暴力を連想するのは道理に合わないが、一連の不祥事がそうさせるようだ。新しい相撲ファンの増加や巡業開催日数の回復で、初めて初っ切りを見る観客が多い事情もある。
 2007年に時津風部屋で若手力士が死亡した事件の後には、通常のぶつかり稽古なのに、見物客が「かわいがりだ」とざわつく光景が見られるようになった。知らず知らずにぶつかり稽古が甘くなり、引き技を食って前に落ちる力士が増えた理由の一つだと指摘する親方は少なくない。
 過剰反応とも自業自得とも言える事態だが、こうした萎縮や自粛が続けば、競技力や相撲文化の先細りにつながる。巡業会場では関係者が一様に「このままではどうなるのか」と顔を曇らせた。
 協会幹部の親方は「初っ切りは時代とともにコントっぽくなり過ぎた感がある。本来はもっと珍しい決まり手や難しい技をしっかり紹介するものだった。昔のことも調べて作り直したい」という。新しいファンは誤解が広まりやすい半面、新しい価値を生み出すパートナーにもなり得る。「初っ切りに限らずいろんなことを、萎縮するだけでなく、『温故知新』で見直していきたいと思っている」と、苦境打開への決意を口にした。(時事ドットコム編集部)

最終更新:4/13(金) 21:08
時事通信