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トップとは他を全て犠牲にすること!? ~『情熱大陸』皆川夏穂にみるハタチの覚悟~

4/13(金) 15:34配信

トレンドニュース(GYAO)

スポーツ・演劇・音楽・学術などの各分野で活躍する人物にスポットを当て、その人の魅力・素顔に迫る人間密着ドキュメンタリー番組『情熱大陸』。
1998年4月に放送が始まって丸20年が経過した。その20年を記念して、当時生まれ現在20歳となった才能あふれる若者たちに今月は密着している。題してスペシャルシリーズ“ハタチの情熱”。
第1夜は東京オリンピックでメダルを狙う新体操のエース・皆川夏穂。自由を謳歌(おうか)する普通の20歳の女の子には想像を絶する、“過酷・孤独・涙”のロシア生活に密着している。

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■プロフィール

皆川夏穂は去年、新体操世界選手権の種目別フープで日本人として42年ぶりにメダルを獲得した。2020年の東京オリンピックでメダルが期待されている。

170センチの長身に長い手足、透き通るような色白の肌、凛(りん)とした佇(たたず)まい。美しくしなやかな演技は「世界一のエレガントさ」と称賛されている。
12~13年と全日本ジュニアで連続優勝し、中学卒業と同時に特別強化選手(フェアリージャパン個人競技選手)として新体操大国ロシアへ派遣された。以来5年、1年のうち約10カ月間は徒歩3分圏内にある宿舎と練習場をひたすら往復するだけの生活だった。言葉もわからず、身ぶり手ぶりでのコミュニケーションからスタートし、ロシアのトップ選手らを育てて来たコーチにマンツーマン指導を受けた。

15年の世界新体操選手権で15位。アテネ五輪以来3大会ぶりに新体操個人総合でのオリンピック出場権を得、16年リオ五輪ではオリンピック初出場を果たした。
17年世界選手権種目別フープで銅メダルを獲得し、18年3月新体操リスボン国際トーナメントでは、フープ・ボール・ロープ・個人総合で優勝を果たしている。
2020年の東京オリンピックで、メダルに最も近い新体操のエースである。

■ドキュメントの見せ場

日本代表の山崎浩子監督によれば、皆川には世界でも屈指の長所があるという。
「しなやかな動きができるというのはすごく魅力。その評価は世界でも高い」
ただしそのダイナミックかつ優雅な演技の裏には、“過酷・孤独・涙”の苦労があった。

ロシアで約5年、孤独の中での1日8時間の猛練習だ。コーチの過酷な要求に歯を食いしばりながら挑み続けている彼女にとって、同年代の女性が味わうような楽しい学園生活も、心ときめく恋愛も、未知の世界だという。
カメラが捉えた圧巻の映像は、同じ演技を何度も失敗し、半泣きの表情でロシア人コーチとやりとりする場面。新体操がいかに過酷で厳しいスポーツで、不可能に近い壁を突破し続ける強靭(きょうじん)な精神力を持ち合わせていないと一流になれないか、ましてやオリンピックでメダルに手が届かないかを思い知らせる。

番組ではそんな彼女のロシアでのストイックな毎日に密着している。厳しい指導で心身ともに徹底的に追い込まれ、落ち込みながらも自分の弱さをコントロールする術を徐々に身につけ、目覚ましい進化を遂げていく姿である。
実は皆川には、躓(つまず)きだすと次々に崩れてしまうメンタルの弱さがある。その克服がどうなされて行ったのか。心の内面の問題なので、決定的な瞬間が映るわけではないが、さまざまなシーンの集積が皆川の成長と進化につながっていることを感じさせる。

驚くべきは彼女のインタビュー。
可能性が未知数な状態でロシア派遣という大抜擢(だいばってき)は重荷だったのではないかという質問に、次のように答えている。
「日本全体のトップとして来ているわけではなかったので、私で良いのかなっていう気持ちはあった」「結果を残さなきゃと思ってしまってうまく行かない期間もあった」「自分で楽しむ方を選ぶか、自分でプレッシャーに捕らわれる方を選ぶか、それを選ぶのは自分」「楽しもうと自分で思ってから少しずつ変わってきた」
とても20歳が達観できる境地ではない。

そしてもう一つの言葉は「自分を甘やかせれば、先には進めない」。
皆川は二十歳にしてこの真理を知り、実践し続けてきた。
それを実証するような映像もある。
今年3月の新体操リスボン国際トーナメント。皆川は種目別で3つ優勝し、さらに総合優勝も果たした。ところが表彰式の後、唯一3位に終わったクラブを黙々と練習し続けた。2年後の東京を思えば、原因を見極めずにはいられないからだと言う。

自由の謳歌という普通の二十歳とは対極の孤高を行く皆川夏穂。
そのドキュメント映像は、見る者にアスリートであり表現者であることの重みを十二分に追体験させてくれる。想像を超える崇高なドキュメンタリーと言えよう。

文・次世代メディア研究所