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海藻グルメ「じんばご飯」どこへ行った… 兵庫・但馬地方の“ソウルフード”の謎

4/14(土) 7:30配信

神戸新聞NEXT

 昨年4月、兵庫県豊岡市竹野町の港であった催しを取材中、ある郷土料理を初めて耳にした。その名も「じんばご飯」。ジンバという海藻を使ったまぜご飯で、大層美味だというが、瞬く間に売り切れてしまった。食料品店では生のジンバも見たが、昨年は結局食べられずじまいだった。「今年こそは」と地元の方に調理法を教わり、準備は万端。なのに、今年は肝心のジンバが見当たらない。ジンバって何? どこへ行ったの?(阿部江利)

 「神葉」「神馬藻」とも書くジンバの正体は、調べてみると「ホンダワラ」という海藻で、ヒジキや最近人気の「アカモク」と同じ仲間という。長さは約3メートルで、平らな葉と粒状のたくさんの「浮袋」があるのが特徴。1~4月が旬で、但馬では古くから食用や神事に使われてきた。

 では、ジンバはどうやって食べるのだろう。同町竹野で住民有志が運営する交流拠点「なごみてぇ」でレシピを尋ねると、ボランティアの1人で、1841年創業の老舗しょうゆ店「花房商店」の花房順子さん(69)が教えてくれた。

 代表的な食べ方は、つくだ煮や白あえ、じんばご飯だという。家庭の味はしょうゆと砂糖、酒が基本の味付けで、薄味に炊いて油揚げやにんじんとあえれば総菜に、濃い味でつくだ煮にすればご飯のお供になる。

 「海藻は最初に洗ったら駄目」と花房さんがアドバイス。火が通りにくくなるのだという。沸騰した湯でゆでてから3センチほどの小口切りにした後、水で洗う。旬にたくさん作り、冷凍して保存するのもいい。

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 海藻料理はジンバだけではない。人さし指ほどの幅で長さ10センチくらいの「ハバ」は、ゆでて水にさらし、油で炒めてから炊くとおいしいという。寒い時期の「岩ノリ」も格別。板状のものをあぶってもみ、しょうゆや酒で味付けしたご飯と一緒に食べる。正月には雑煮に岩ノリと餅だけを入れ、赤みそ仕立てでいただくのが地域のごちそうだ。

 鮮度が一晩も持たないので一般には出回らない「ソゾ」は、採りたてを洗って熱いみそ汁をかけるとシャキシャキに。分厚い「アラメ」はみじん切りにしてみそ汁をかければ、トロッと粘りが出る。ワカメも養殖ではなく天然で、歯ごたえや香りが違うという。

 「いろんな海藻を新鮮に食べられるのは、『竹野におりゃあこそだな』って、みんなでいつも言ってます」と笑う花房さん。そう、おいしいものに巡り会えるのは、但馬に居ればこそですよね。さあ、いよいよジンバだ!

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 雪解けのころから「じんば♪ じんば♪」と勇んでジンバを探してみたが、なぜか全く見つからない。昨年じんばご飯が出たイベントを主催した、但馬漁協竹野支所の岩崎智さん(43)を訪ねた。「ジンバが見当たらないんです」

 岩崎さんによると、ジンバは採れる年と採れない年に差があり、今年はかなりの不漁という。例年1シーズンで3~4トン水揚げされるが、今年はわずか数十キロで終わってしまった。岩崎さんは「ジンバは胞子で増えるのですが、今冬は沿岸部で降る『浜雪』が多かった。浜雪になると海水温がぐんと下がるので、胞子が飛ばなかった可能性があります」と話す。

 何たることだ。今年もジンバに会えないなんて-。

 だが岩崎さんが教えてくれた。「わずかに採れた分はつくだ煮にして、瓶詰めで出荷しましたよ」。加工済みだが、やっとジンバにたどり着けた。早速、白いご飯にのせていただく。軟らかいが、適度な歯ごたえがあり、ご飯が止まらない味だ。ひじきよりはみずみずしい。お酒にも合いそうだ。大変おいしゅうございました。来年こそは、生のジンバを自分で料理してみよう。

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 「ジンバ」ことホンダワラは万葉集にも登場し、飛鳥-平安時代にかけては、播磨地域も産地だった。ホンダワラを海水に浸して煮詰め、藻塩を作っていたようだ。しかし瀬戸内ではあまり食用になっていない。

 県立農林水産技術総合センター水産技術センターによると、ホンダワラは日本全域の海にあるという。但馬地域の勤務経験もある、水産増殖部の岡本繁好主席研究員(56)は、「ホンダワラは、京都府(丹後)から兵庫県(但馬)、鳥取県、島根県で盛んに食べられているようです」。

 一方、日本海北部の沿岸部では、粘りけがある「アカモク」が好まれているという。また瀬戸内では「生息はしていますが、食習慣があるとはあまり聞きません。水揚げもほとんどないのでは」と話す。

 ではなぜ、豊岡市竹野町をはじめ但馬の海で、豊かな海藻が手に入るのだろうか。兵庫県立大地域資源マネジメント研究科の松原典孝講師(37)によると、山陰海岸の沿岸部は、硬い火山岩のごつごつした岩でできており、海流や日本海の荒波の影響で砂などがたまりにくく、海中にも広がる岩場に海藻がくっつきやすいのが理由の一つという。豊かな森からは川を伝って海に栄養が流れ込んでおり、海藻が育ちやすい環境が整っている。

最終更新:4/14(土) 9:26
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