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打倒LINEは可能なのか 「+メッセージ」導入の狙いを読み解く

4/14(土) 6:05配信

ITmedia Mobile

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、5月9日に「+メッセージ」と呼ばれる新サービスを開始する。+メッセージとは、世界各国の通信事業者が加盟する業界団体・GSMAが標準化した「RCS(リッチコミュニケーションサービス)」の規格に基づいたメッセージングサービス。日本からも、各社が仕様の策定に協力している。

SMSと+メッセージの違い

 GSMAによると、2018年2月時点では北米や欧州を中心に、27カ国、50キャリアで導入されており、ネットワークベンダーではEricssonやHuawei、ZTEが、端末ベンダーではSamsungやHuawei、LGエレクトロニクスといった名だたるメーカーがこれを支持している。Googleは、同社が2015年に買収した「Jibe」の技術を活用し、Android標準の「Androidメッセージ」をRCSに対応させた。

 「さらに30カ国、40のキャリアで導入が予定されている」(ドコモ スマートライフビジネス本部スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長 藤間良樹氏)と、世界各国で急速に広がる兆しを見せているメッセージングの規格だ。特にGoogleとGSMAが2016年にRCS普及を目指すイニシアチブを立ち上げて以降、利用するキャリアが急速に増加している。

●SMSの拡張版と位置付けた+メッセージ、3キャリア共同でUIも統一

 +メッセージは、そのRCSを下敷きに開発されたサービスだ。ユーザーインタフェースは、よくあるチャット型のメッセンジャーのもの。左側に相手のコメントが並び、やりとりが進めば進むほど、スレッドが縦に長くなっていく形になる。テキストや写真、動画も、区別なく時系列に並んでいくのが特徴だ。画面下にはテキストを入力するウィンドウの他、スタンプや画像、動画、位置情報といった各種付加データを加えるためのボタンが並んでいる。

 これだけだと、LINEやFacebookのMessengerといったサービスとの違いが分かりづらいが、+メッセージは「SMSの進化版」と位置付けられている。そのため、コミュニケーションを取る相手とはあらかじめ“友だち”になっている必要がなく、SMSと同様、電話番号を知っているだけで送受信することが可能だ。やりとりできるメッセージの文字数が全角70文字から2730文字に広がり、最大100MBの添付ファイルも付けられるようになった。

 さらに、SMSでは1通3円程度の料金がかかっていたのに対し、+メッセージはパケット通信料としてカウントされる。SMSとは異なり、回線交換ではなく、データ通信を使ってメッセージをやりとりしているというわけだ。+メッセージはあくまでRCSの一部で、「VoIPなど、一部のAPIは使っていない」(藤間氏)というが、いわばLTE時代のキャリア版メッセンジャーといえるかもしれない。

 もっとも、これを1キャリアだけが始めても意味がない。コミュニケーションサービスは利用者が増えることがすなわち価値の向上につながり、それがまた利用者を増やすことになる。俗にいう「ネットワークの外部性」が働きやすい分野なのだ。過去には、iモードがインターネットのコンテンツやユーザーを取り込むことで、ネットワークの外部性を生かして拡大したという経緯もある。

 一方で、1つのキャリアに閉じたネットワークサービスは、ユーザー数が増えず、ひっそりと終わってしまうことも多い。ドコモでいえば「プッシュトーク」、KDDIでいえば「Hello Messenger」が、そういったサービスの代表格といえる。これらのサービスも、仕様を公開し、他キャリアなどに開放していれば、もっとユーザーに使われていた可能性もある。RCSはこうした失敗を糧に、3キャリアで同時にスタートすることにこだわった。ドコモの藤間氏は語る。

 「(SMSや絵文字は)他社にメッセージが送れない、絵文字が送れないという、多くの不満をいただいていた。こういった過去の経験も踏まえ、サービス提供前からキャリア間で仕様を統一し、提供することにした」

 仕様はもちろん、ユーザーインタフェースや操作方法、サービス名称、サービスロゴまで統一。キャリアの枠を超えた、RCSベースのスマートフォン用メッセンジャーが出来上がった。iOS向けのアプリも開発を進めており、サービス開始日以降に導入される。

●狙いは“法人利用”にあり? スタンプでの課金も検討

 SMSの機能を大幅に拡張したRCSだが、ユーザーには無料で提供される。先に述べたように、1通あたりの料金もかからない。キャリアの収益という観点で見ると、現時点では、マイナス要素しかない。とはいえ、現状の+メッセージは、あくまで第一歩にすぎない。3社とも+メッセージの将来像として、「お客さまと企業の間の関係をサポートする、総合的なプラットフォームに拡張していきたい」(藤間氏)という青写真を描いている。

 具体的には、「カスタマーサポートや、各種お申込み、予約確認などを、チャットを通じて簡単にできるようにしていく」(藤間氏)といったものだ。また、「送金(決済)という質問もあったが、それもユースケースとしてはありえる」(ソフトバンク テクノロジーユニット 技術戦略統括 IoT事業推進本部 技術デザイン統括部 APIマネジメント部 部長 千葉芳紀氏)。

 一言で言うと、LINEの公式アカウントやチャット機能に近い形だが、それをキャリアとして提供しようとしているというわけだ。実際、RCSにはビジネス用途を見越して、QRコードの表示や返信用ボタン、位置情報の取得といったさまざまな機能がAPIとして備えられている。2018年2月にスペイン・バルセロナで開催されたMobile World Congressでも、このビジネス利用が大々的にアピールされていた。海外では、例えばソフトバンク傘下のSprintもRCSでのサービスを始めており、すでに法人向けサービスを導入している。

 このように特徴が近いためか、+メッセージは「3キャリアが結託してLINEに対抗しようとしているのではないか」とウワサされることもある。実際、RCS導入をMWC前に伝えた記事でも、「打倒LINE」というパワーワードが見出しに踊っていた。では、+メッセージはLINE対抗なのか。先の藤間氏は「対抗の意思は全くない」と、その意図を否定する。「SMSでご不便をかけていた部分を解消したい」(千葉氏)というのが、導入の狙いというわけだ。

 ただ、海外での取り上げられ方を見ると、やはり各地のメッセンジャーサービスに対抗したサービスという色合いが濃い。欧州ではWhatsApp、中国ではWeChatといった具合に、それぞれの地域でトップクラスのサービスから、メッセージサービスの主導権を“奪還しよう”という意図は見え隠れする。これは、ドコモ、KDDI、ソフトバンクがそのような意思を持っているというより、GSMAの思惑といっていいだろう。

 +メッセージではスタンプも無料で提供されているが、「コンテンツプロバイダーが作られたものを、有料で配信するということも検討している。ビジネスをどういうスキームやっていくかも、まだ検討している段階」(千葉氏)だという。

●「打倒LINE」は可能なのか、+メッセージの今後

 +メッセージの魅力として分かりやすいのは、やはり電話番号でやりとりできるところだろう。職種にもよるが、仕事でのコミュニケーションをしている相手(同僚、上司、部下、取引先など)とは、LINEの“友だち”にはなりづらいという人も、少なくないだろう。

 電話番号だけでメッセージが送れるのは、いざというときに役立つはずだ。相手に電話がつながらないときでも、メッセージを送っておけるからだ。筆者も、待ち合わせにどうしても間に合わないときなどは、電車の中でSMSを送ったりすることがある。ただ、文章が途中で切れてしまったり、画像が送れなかったりと、SMSにはどうしても仕様上の古さを感じてしまう。このようなときに、+メッセージは便利なサービスになりそうだ。

 実際、3社とも+メッセージをSMSの正常進化と位置付けており、「今、SMSをお使いの皆さまには、ぜひ手に取っていただきたい」(千葉氏)とアピールする。ターゲットとしては、「30代より上で、ビジネスに(SMSを)使っている方々。あとは、安心・安全を理解していただける方に訴求できると思っている」(藤間氏)。

 その割にはアプリのデザインが“若い人向け”な印象も受けたが、まずは、ビジネス利用の多い、SMSユーザーに訴求していくというのが、ドコモとソフトバンクの見解だ。かつては1つのキャリア内に閉じて失敗したサービスも多かったが、+メッセージは「十分普及する余地はある」(藤間氏)。

 とはいえ、やはりLINEのユーザー基盤は厚く、スタンプなどのコンテンツや、LINE Payなどの資産にもひもづいているため、+メッセージが出たからといって、ユーザーがすぐに乗り換えるとは考えにくい。また、「それなりに準備があり、提供も検討している」(藤間氏)というが、MVNOやサブブランドでのサービス提供もめどが立っていない。iPhoneユーザーに、+メッセージのアプリをどうインストールさせるのかも、今後の課題になりそうだ。

最終更新:4/14(土) 9:41
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