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シリコンバレーで発表された宇宙ホテルの不動産事業とは?

4/14(土) 8:02配信

ITmedia ビジネスオンライン

 4月5日、米国カリフォルニア州のシリコンバレーで開催された宇宙ビジネスカンファレンス「SPACE 2.0」に参加してきた。同カンファレンスは参加者100人弱と、規模こそ小さいが事業モデルなど実利的な議論が多いのが特徴であり、また新たなプレイヤーの登壇があるため、市場の最新動向を探れる場と言えるだろう。

Bigelowの膨張式居住モジュール(出典:NASA)

 今回初めて発表されたのが、米Orion Spanによる商業宇宙ステーション構想だ。同社は2017年に起業したベンチャーであり、IT分野での起業経験をもつフランク・バンガー氏がCEOを務めている。CTO(最高技術責任者)はNASA(米航空宇宙局)のジョンソン宇宙センターで有人宇宙船業務に10年以上携わっていた。現在従業員は6人で、これまで2人のエンジェル投資家から資金調達を行なっている。

 同社では「Aurora Station」という独自開発モジュールを高度320キロメートルの地球低軌道に打ち上げる計画で、技術的な詳細は明らかにされていないが、モジュールの大きさは全長13.3メートル、全幅4.3メートル、与圧容積160立方メートル、2人のクルーを含めて6人が収容可能で、地球とも高速インターネットでつながるという。同モジュールは90分で地球を1周する予定だ。

●宇宙へ行く準備期間を3カ月に短縮

 Aurora Stationで提供されるサービスは3つだ。1つ目はいわゆる宇宙ホテル事業であり、12日間の滞在を950万ドルで提供するという。

 方法論は明らかにされていないが、宇宙に行く前にかかる準備期間を従来の24カ月から 3カ月に短縮することを掲げている。同社の公式TwitterによるとSpace 2.0での構想発表後、72時間で4カ月分の予約が既に入ったとのことだ。

 2つ目は「Space as a Service」と同社が呼んでいるサービスだ。昨今、国際宇宙ステーションにおいて微小重力環境下で実験したり、軌道上での部品製造を目指したりする企業が注目を集めているが、同社もこうした企業に対して「Pay as you go(使用に応じた支払い)」でモジュールを提供するサービスを実施する。

 3つ目が分譲販売だ。モジュールごとの販売、リース、住居としての提供など、まさに宇宙の不動産ビジネスだ。

 今後の計画では、21年終わりごろにAurora Stationを低軌道に打ち上げて、22年初めまでに宇宙旅行者を滞在させる予定だが、現時点ではモジュールの製造拠点がまだないことをCEOも認めており、資金調達も今後具体的に検討していくため、コンセプト先行とも言える。スケジュール通りに進むかは不透明だ。

●膨張式のホテルを考えるベンチャー企業も

 同社のような商業宇宙ホテル構想を掲げる企業は、米Axiom Space、米Bigelowなど複数存在する。例えばBigelowは、宇宙ホテルとしても活用可能な商業宇宙ステーションの建設を目指している。鍵となるのは膨張式居住モジュールの開発だ。モジュール自体は柔軟な素材の多重構造で約10分の1に折りたたまれており、宇宙空間で膨張させて居住空間として使う構想だ。

 元々はNASAが開発を進めていた技術を応用してBigelowが取組みを進めているが、16年4月から国際宇宙ステーションに実証モジュールがドッキングしており、実用性や耐久性の面におけるテストが行われている。その結果も踏まえて、早ければ21年に膨張式軌道モジュールを打ち上げる計画だ。

 また今年2月には、将来的に商業宇宙ステーションを管理、運用するためにBigelow Space Operationsという別会社を設立した。加えて、現在国際宇宙ステーションにある米国のNational Laboratoriesを運営する非営利組織Center for the Advancement of Science in Space(CASIS)との提携も発表、商業宇宙ステーションの利活用を見据えて需要や市場規模の理解を深めることが目的のようだ。

●国際宇宙ステーションの成果や今後も関係か

 このように米国でさまざまなベンチャー企業が商業宇宙ホテル構想を掲げる背景には何があるのだろうか。

 Orion Spanのバンガー氏は「宇宙にアクセスする技術の進化、コストの低下、これまで国際宇宙ステーションで培われてきた先駆的取り組みとそこからの学びを踏まえて、恒久的な商業宇宙ステーションとコミュニティーを形成する時期だ」と語っている。

 国際宇宙ステーションは科学技術発展や産業振興、青少年育成、参加国の国際プレゼンスの確立など多岐に渡る成果を上げてきており、24年までの運営は各国で合意されている。他方、2月に発表された米国連邦政府の予算教書では、深宇宙に向けた多数のプログラムが組まれている一方で、地球近傍の宇宙空間における活動は、民間企業の力をより活用して商業化を進めていく。国際宇宙ステーションに対する政府予算直接支出を25年に終結する方針が示されたのである。

 しかしながら、合意形成には至っておらず状況は流動的であり、今後米国議会、産業界、各国政府からさまざまな反応が出ることが予想される。ベンチャー企業が掲げる商業宇宙ステーションや宇宙ホテル構想の実現性もまだ不透明な中、今後の動向を注視していきたい。

(石田真康)