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<医療>深刻な乳児の虫歯につながる離乳期の誤り

4/14(土) 10:00配信

毎日新聞

 虫歯によって、前歯が広範囲になくなっている子供を見かけることがあります。これは「哺乳う蝕」と呼ばれ、離乳期を誤るとリスクが高まることが分かっています。このように、誰にでもできる虫歯ですが、子供、成人、高齢者と年代によってでき方や背景が違います。口腔細菌学の第一人者、日本大学の落合邦康特任教授が、それぞれの年代の虫歯の特徴と予防法について解説します。【毎日新聞医療プレミア】

 ◇ミュータンス菌が作る「グルカン」

 最も患者数が多い成人の虫歯(う蝕<うしょく>)から説明しましょう。

 虫歯の原因菌であるミュータンスレンサ球菌(以下ミュータンス菌)は、成人の場合は口の中にすんでいる常在菌です。ミュータンス菌は砂糖を餌にして増殖します。砂糖の摂取量が少なければミュータンス菌が増殖する過程で、砂糖はエネルギー源として消費されるので問題ありません。

 しかし、砂糖が過剰に摂取されると、ミュータンス菌は多糖類のグルカンを合成します。さらに、そのグルカンから、水に溶けにくく粘着性の強いグルカンを作り出します。そして、このグルカンで自分(菌体)の周りを覆って身を守り、さらに歯の表面のエナメル質にくっつきます。そして他のミュータンス菌や別の種類の菌と凝集してデンタルプラーク(歯垢<しこう>)を作ります。

 ◇乳酸がカルシウムの結晶を溶かす

 デンタルプラーク内でもミュータンス菌は砂糖を餌にして増殖します。砂糖を分解するときには乳酸も作られます。乳酸はカルシウムを溶かす力が最も強いことが知られています。エナメル質と呼ばれる歯の表面は、カルシウムの結晶でできていますので、乳酸によって溶かされてしまうのです(脱灰<だっかい>)。これが初期の虫歯です。

 一方で歯は、唾液中のカルシウムイオンを取り込み、脱灰部分を修復します(再石灰化)。このせめぎ合いがしばらく繰り返されるのですが、エナメル質には神経がないので痛みを感じません。そのために放置されることが多く、虫歯は進行してしまいます。

 虫歯は、エナメル質の内側にある軟らかい象牙質に達すると急速に進みます。そこでようやく歯髄に痛みが伝わって、虫歯に気づくのです。

 改めて言うまでもありませんが、予防に最も重要なのは、砂糖を取りすぎない食習慣と歯ブラシなどの口腔ケアです。

 ◇重症化しやすい乳歯

 生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはミュータンス菌はいません。ミュータンス菌は子供の時に、家族内感染で両親や近親者からうつります。食事の砂糖が原因で虫歯になるのは成人と同じです。

 成人と大きく異なるのは、乳幼児から小学生ぐらいの年代には、乳歯が生えていることです。乳歯は成人の永久歯と比べ、エナメル質が薄い構造になっています。ですから、成人よりも比較的簡単に虫歯ができてしまい、重症化しやすいのです。

 ◇離乳期を守らないと哺乳う蝕に

 乳歯は3歳ぐらいまでに生えそろいます。この頃に問題になるのが「哺乳う蝕」です。歯が歯肉から露出している部分を歯冠と呼びます。前歯の歯冠が虫歯によって広範囲になくなってしまうのが哺乳う蝕です。

 離乳期を過ぎても哺乳瓶を使ってジュースや清涼飲料水を飲ませていると哺乳う蝕になりやすいことが分かっています。哺乳瓶だけでなく、母乳を与える期間が長すぎることもリスクになります。そして、夜間におやつを食べたり、甘い飲み物を飲んだりすることも哺乳う蝕のリスクが高まることが知られています。

 乳歯の虫歯は永久歯の歯並びにも影響します。離乳の適切な時期に、母乳の授乳と哺乳瓶の使用をやめることが大切です。幼少期からの口腔ケアはもちろん、夜間の食べ物にも注意が必要です。

 ◇歯頸部に虫歯ができやすい高齢者

 高齢者の虫歯は、エナメル質とセメント質の境界(歯頸部<しけいぶ>)付近にできやすいという特徴があります。歯周病や加齢によって歯肉が下がり、本来歯肉に隠れている部分(歯根)が露出してしまうことが原因です。

 歯根の最も外側は、たんぱく質を含むセメント質でできています。セメント質は歯冠のエナメル質よりもプラークがたまりやすく、すぐに溶かされて薄くなってしまいます。さらにその下にある象牙質は、たんぱく質を多く含み、歯周病菌などの細菌によって比較的簡単に壊されてしまいます。ですから、高齢者の虫歯は、象牙質のたんぱく質やカルシウムが溶かされ、くさび形の深い脱灰が起こるのが特徴です。

 歯頸部にできるプラークは歯冠部よりも除去が難しいので、高齢になるほど丁寧な口腔ケアと歯科医による定期的な健診が必要なのです。

最終更新:4/14(土) 10:00
毎日新聞