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HoloLensで海運・海洋産業にもDX――陸海空のDX市場を制覇したHoloLensの実力とは?

4/14(土) 15:59配信

ITmedia エンタープライズ

 日本マイクロソフトが、Mixed Reality(MR)デバイス「Microsoft HoloLens」の活用について、船舶用配電機器や制御装置などの開発、生産、販売を行うJRCSと、新たに協業することを発表した。JRCSでは、「JRCS Digital Innovation LAB」を設置。船舶の自動航行までを見据えたプロジェクトを開始する。

船舶の自動航行までを見据えた”陸上での”操船ソリューション「INFINITY Command」

 HoloLensを活用したこれまでの協業では、飛行機の整備士やパイロットのトレーニングに活用する日本航空(JAL)の例や、建設現場の効率化などにHoloLensを活用する小柳建設の例がある。また、三菱ふそうトラック・バスも、車両の開発やメンテナンスにHoloLensを利用するといった取り組みを開始している。

●海運・海洋のデジタルイノベーション事業を展開

 今回のJRCSとの協業では、第1ステップとして、船員の訓練や資格証明などに関する国際条約であるSTCW条約に準拠したリモートトレーニングプラットフォームなどを開発。さらに、世界標準となるデジタル製品やサービスの開発を加速させる。

 日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「今回の協業によって、陸、海、空の全ての領域で、HoloLensが利用されることになる」とコメント。「地上の現場だけでなく、海上の現場でも利用されるようになるのが特徴」とした。

 具体的には、第1フェーズとして、海洋事業者向け遠隔トレーニングソリューション「INFINITY Training」を開発。HoloLensやAIを活用して、船員や陸上で勤務する監督を含め、海運・海洋産業に関わる人材を教育する。

 「これまでは下関のトレーニングセンターで船員向けの専門トレーニングを提供してきたが、海外顧客の参加が難しいなどの課題があった。HoloLensを活用することで、こうした課題を解決。さらに、『Microsoft Translator』の翻訳機能を活用することで、いつでも、どこでも、言語や時間、距離の壁を超えて、機器やシステムの操作トレーニングに参加できる」(JRCSの近藤高一郎社長)という。2019年3月からサービスの提供を始める予定だ。

 また、第2フェーズとして、海洋事業者向け遠隔メンテナンスソリューション「INFINITY Assist」を開発。HoloLensを活用して、船員の負担やケガ、人的ミスを軽減するソリューションを提供する。

 ここでは、エンジニアがメンテナンス作業をする際に、HoloLensを装着。メンテナンス対象となる機器上に、HoloLensを通じて作業手順などを表示し、短時間で安全に作業ができるようにする。船舶の特殊事情までを熟知したエンジニアのスキルを展開できるのがポイント。2019年中に、JRCS製高圧配電盤のメンテンスアプリケーションを商品化し、2020年から順次、コンテンツの拡大を図る計画だ。

 さらに、船舶の自動航行までを見据えた操船ソリューション、「INFINITY Command」を開発することも発表した。船舶操舵を行うキャプテンが、IoTやAI、ビッグデータを活用することで「デジタルキャプテン」に進化。陸上から複数の船舶をコントロールできるようになるという。実用化に向けては、日本マイクロソフトと検証を進め、2030年のサービス開始を目指すという。

 近未来に登場する「デジタルキャプテン」は、HoloLensなどを通じて、遠隔地にいるデジタルキャプテンと3D海図を共有。航路、天候、海底地形などの情報をAIを活用しながら確認し、船舶の安全や海上輸送の正確性を確保し、効率性を高められるという。

 なお、JRCSでは、今回の協業に合あわせて、同社内に、4月1日付けで、デジタルイノベーション推進室を設置し、これらのプロジェクトを推進することになる。

 JRCS社長の近藤高一郎氏は、「海運・海洋産業は、環境が厳しい職場という認識があり、日本の若者から敬遠されている。そのため、日本人で船員を希望する人が少なく、外国人船員が増加している。『海運・海洋産業はワクワクする業界』という認識を持ってもらえるように、業界全体に輝きを取り戻す取り組みが必要」と前置きし、「デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を通じて、海洋業界のイメージを変えられないかと思っていたところに、JALや小柳建設がHoloLensを利用して、業界を変えようとしていることを知った。2018年1月に、米シアトルのMicrosoftのラボを訪問したところ、よい意味でショックを受け、これは必ず行けると感じた。若い人たちの海運に対するイメージを変えたい。それを実現できるのがHoloLensだと確信している。この取り組みをきっかけに、将来的には売上高の6割以上をデジタルによるものにしたいと考えており、デジタルによって、新たな価値を市場に提供できる企業にJRCSを変貌させたい」と述べた。

●日本のHoloLens普及がMR市場拡大の追い風に

 今回の協業に合わせて、日本マイクロソフトでは、HoloLensのプロジェクトにおいても、デジタルアドバイザーを活用することを初めて明らかにした。

 デジタルアドバイザーについては、本コラムでも何度か紹介しているが、HoloLensを活用したDXのケースに、デジタルアドバイザーが参加するといったことはこれまでなかった。

 日本マイクロソフトの平野社長は、「デジタルアドバイザーは、海でいえば『航海士』に似た役割を果たすことになる。企業の経営方針やビジネスそのものを理解すると同時に、テクノロジーをどう活用すればいいのかを提案できるスキルを持った人材。今後はHoloLensを活用したDXで、デジタルアドバイザーが活躍する場面が増えることになるだろう」とする。

 現在、日本国内のデジタルアドバイザーは10人未満だが、平野社長は、この陣容を大幅に拡大する意向を示している。「日本市場で、デジタルアドバイザーによる支援が求められるケースが急増している。グローバルの流れに合わせるよりも、日本の成長に合わせて増員させる必要がある」とする。

 また、米Microsoft本社では、MRに関する開発体制を強化。AI Perception & Mixed Realityという組織が発足し、AIとHoloLensを融合した形で開発する姿勢を明確にした。世界でも先進的といわれる日本のHoloLensビジネスを、さらに加速することにもつながりそうだ。

 「陸、海、空が終わっても、まだまだやることはある。そして、まだまだ発表できる案件も増えていく」と平野社長。日本におけるHoloLensの取り組みは、陸海空を制したこれからが本番だ。