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【かながわ美の手帖】ポーラ美術館「エミール・ガレ 自然の蒐集」展

4/15(日) 7:55配信

産経新聞

 ■アートと博物展“融合” 自然の美ガラスで表現

 19世紀後半のフランスで活躍した世界的なガラス工芸家、エミール・ガレの作品を紹介する企画展「エミール・ガレ 自然の蒐集(しゅうしゅう)」が箱根のポーラ美術館で開かれている。植物や昆虫、海洋生物などの自然の造形に魅せられ、作品のモチーフに多く取り入れたガレ。デザインのもとになった標本や版画を合わせて展示することで、自然への興味も深められるという、アートと博物展が融合した展覧会だ。

 ◆「植物マニア」の顔

 展示されているガレのガラス工芸作品は国内外から集めた約130点。東京大学総合研究博物館と協力して、モチーフとなった植物や昆虫の標本約80点と、ガレの創作に影響を与えたと考えられる海洋生物を詳細に描いたエルンスト・ヘッケルの博物版画約50点も展示している。

 ガレはガラス工芸家として優れた作品を残しただけでなく、熱心な植物研究者としての顔も持っていた。自宅の庭には約3千種もの植物を植え、自ら標本も製作するなど、「いわば植物マニアだった」(同館)という。

 加えて、植物をよりどころにする昆虫の生態にも精通していた。そのぶん、作品に取り入れるデザインにも妥協がなかった。高度な加工技術を駆使し、自然の精緻な造形をガラスで見事に表現している。

 「草花文水差(みずさし)」は、しなやかな植物の葉茎と花がモチーフ。透過度の高いガラスに、白を基調とした植物の模様が立体的に飾り付けられている。ガラス表面にレース柄を表現するなどデザイン性も高い。

 一方、昆虫をモチーフにした「水差『トンボ』」は、取っ手部分の曲線をトンボの胴から尾の形で表現。よくしなるトンボの体の特徴をうまく生かした作品といえそうだ。

 「水差『ギアナの森』」は、世界最大のカブトムシ、ヘラクレスオオカブトが張り付く大胆なデザイン。黄緑色のガラスは森の中をイメージさせ、その輝きは息をのむ美しさだ。カブトムシはガラスの塊を部分的に溶着する特殊な技法を使うなど、細部まで技巧が凝らされている。

 海洋生物のクモヒトデがモチーフのガラス容器は、本来のクモヒトデが持つグロテスクさを感じさせない。並べて展示されている博物版画と見比べることで、ガレがいかに忠実に再現したかが分かる。また、ガラスという加工の難しい素材で、それを実現できる技術の高さもうかがえる。

 ◆着色加工の先駆け

 ガレは独国境に近い仏北東部のロレーヌ地方に生まれた。父がガラス工芸の企業経営者で、跡取りとして育てられたため、幼少からガラス工芸に携わった。

 工芸家として頭角を現すようになったのは、経営を継いだ30代。パリ万博への出展や受賞を通し、世界的に実力が知れ渡った。

 同館によると、ガレはガラスに着色加工を施した先駆的存在だという。彫刻や腐食をはじめ、溶着や箔(はく)のはさみ込みなど、作品を美しく見せるための技術やアイデアを次々と投入し、当時の人々を驚嘆させた。

 同館学芸員の工藤弘二は「自然界についての豊富な知識に基づき、数々の美しい作品を生み出した。いまも女性を中心に人気を誇るが、標本や博物版画と見比べられるので、男性も子供も楽しめる展覧会だ」と話している。 =敬称略

  (外崎晃彦)

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 企画展「エミール・ガレ 自然の蒐集」はポーラ美術館(箱根町仙石原小塚山1285)で7月16日まで。午前9時から午後5時(入館は午後4時半まで)。会期中無休。入館料は大人1800円ほか。問い合わせは同館(電)0460・84・2111。

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【プロフィル】エミール・ガレ

 美術運動アール・ヌーボーを代表する仏ガラス工芸家。1846年、仏北東部ロレーヌ地方の都市、ナンシーで生まれる。植物に興味を持ち、10代で採集・標本製作を開始。20代で普仏戦争の志願兵となり、地中海沿岸に滞在したことで海への憧憬を深める。30代で父からガラス工芸の会社経営を正式に引き継ぎ、自身の名を商標とする。89年、パリ万博でガラス部門のグランプリを受賞。1904年、白血病により58歳で死去。

最終更新:4/15(日) 7:55
産経新聞