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劇場アニメ「リズと青い鳥」特別なものとして届けたい

4/14(土) 10:15配信

産経新聞

 【映画深層】

 アニメーションは年季がものをいう世界だと思っていたが、この若さですでに4本目の劇場作品というのだから恐れ入る。4月21日公開の「リズと青い鳥」は、前作「映画『聲(こえ)の形』」(平成28年)で国際的に評価を受けた山田尚子(なおこ)監督(33)が、高校の吹奏楽部を舞台に現実と童話の2つの世界を対比させて描いた意欲作だ。監督という立場について「責任も感じるが、この作品をこう読み取っていくということをダイレクトに表現できる立場。それが一番のやりがいかな」と笑顔を見せる。

 ■指先から瞳の動きまで繊細

 4月4日、東京都内で行われた「リズと青い鳥」の完成披露上映会。主役2人の声を演じた種崎敦美(たねざき・あつみ)と東山奈央(とうやま・なお)、ゲスト声優の子役、本田望結(みゆ)とともに山田監督が登壇すると、会場を埋め尽くしたアニメファンから大きな拍手がわき起こった。

 すでに作品を見た東山が「いつまでもこの空気に浸っていたいと思うくらい」と感動を口にすれば、種崎も「指先、髪の毛1本1本から瞳の動きまですべてが繊細で、私たちのお芝居の前に絵がお芝居をしてくれていた」と絶賛の嵐に、山田監督は「京アニ(京都アニメーション=監督が所属する制作会社)のスタッフたちみんな喜びます」と盛んに照れていた。

 「リズと青い鳥」は、テレビアニメの「響け!ユーフォニアム」シリーズから派生したスピンオフ(番外編)的な作品だ。

 北宇治高校吹奏楽部で共に3年生のオーボエ担当、みぞれ(種崎)とフルート担当の希美(のぞみ)(東山)は、最後のコンクールを目指して練習していた。自由曲の「リズと青い鳥」には、オーボエとフルートがソロでかけ合う重要なフレーズがある。希美への複雑な思いを胸に秘めるみぞれはうまくかみ合わず、曲の元となっている童話「リズと青い鳥」をひもとく。

 映画では本編と並行して、孤独な少女のリズと彼女に助けられた青い鳥の童話のストーリーが、本田が1人2役で声を演じる劇中劇として描かれる。「現実と物語の世界とは全く別物として描き分けている。音楽の使い方も芝居の付け方も違います」と山田監督は振り返る。

 ■周りの空気ごと撮りたい

 芝居の付け方の違い、とはどういうことなのか。山田監督によると、みぞれと希美の物語は日常的な動きをしっかりと拾っているのに対し、童話の世界はけれん味のあるアニメーションの作り方を大事にしたという。

 「例えば物理的な重力といったものを、ある瞬間、無視することが、アニメーションにとっては快感につながる場合がある。全力でアニメっぽく作ることは、すごく楽しかったですね」

 もう一つ挑戦的だったものに音楽がある。クライマックスの合奏場面では、みぞれと希美の心の機微をオーボエとフルートの音色で表現しなければならない。録音を担当した演奏者には2人の関係性を説明した。

 「愛や悲しみを音に乗せるといったことをしてきている方たちだから、“すごい芝居”をつけてくださって感動しました」

 非常に気持ちを乗せた演奏をしてくれたと喜ぶ。

 「例えばキャラクターがしゃべっているときは、そのキャラクターだけでなく、周りの空気も動いていると思っている。その空気ごと撮りたいという気持ちはありますね」

 こう話す山田監督は、子供のころから映画をストーリーだけで見ていたわけではない。映画はもっぱらテレビの深夜放送で親しんだが、絵やレイアウトから立ち上がってくる感情を揺さぶられるような感覚、映像として訴える力といったものに魅入られたと打ち明ける。

 ■物理的な理屈を超えた感覚

 自ら絵も描いていた。京都造形芸術大学を卒業するに当たり、「絵を動かしたい」と京都アニメーションに入社。絵を1枚1枚描いていくことで動きが生まれる感動は、アニメーションならではの魅力ではないかという。

 今回もほぼすべてを手描きの作画で撮り上げた。

 「物理的な理屈を超えたアニメーションの感覚というのは、人が手で描かないと生まれないと思う。それは物理現象に対して嘘をつくということですが、機械は嘘をつかないですからね。人が描くことでそれまでの人生経験などすべてがにじんでくるし、そういうのが面白いんです」

 テレビシリーズも手がける一方、すでに劇場映画は4作目となる。大勢のスタッフを束ねる監督は相当なプレッシャーがあるのではないかと思うが、「いろんな分野からたくさんの人がかかわっている。音や絵が重なっていくのを見て、その人たちに感謝の念を持つことができる。作ることに対して貪欲でいることを許されるし、いろんな角度からやりがいがあります」と指摘する。

 テレビシリーズも毎週毎週積み重なっていく快感があるが、映画に対する憧れや尊敬は4本作った今も消えはしない。「映画は、ずっと作っていたい。やっぱり特別なものだという思いがあるので、見ていただく人にとっても特別なものであるようにお届けしたいなと思いますね」(文化部 藤井克郎)



 「リズと青い鳥」は、4月21日から東京・新宿ピカデリー、横浜ブルク13、大阪ステーションシティシネマ、名古屋・ミッドランドスクエアシネマ、福岡・T・ジョイ博多、札幌シネマフロンティア、仙台・MOVIX仙台など全国公開。

 山田尚子(やまだ・なおこ) 京都府出身。京都造形芸術大学卒業後、平成16年に京都アニメーション入社。テレビアニメーション「AIR」から原画、「CLANNAD-クラナド-」から演出を手がけ、「けいおん!」の監督に続き、23年、「映画けいおん!」で劇場映画初監督。26年の「たまこラブストーリー」で文化庁メディア芸術祭新人賞受賞。28年の「映画『聲の形』」は、東京アニメアワードフェスティバル2017アニメオブザイヤー部門のグランプリを受賞したほか、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭に選出されるなど、国際的に高い評価を受けている。

 「響け!ユーフォニアム」 武田綾乃著の小説シリーズで、「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」(平成25年)を皮切りに10冊が宝島社文庫から出版されている。北宇治高校吹奏楽部の部員らが全国大会を目指して繰り広げる青春物語で、26年からの漫画化に続き、27年には京都アニメーション制作でテレビアニメーションが放送。「リズと青い鳥」は、シリーズ中の1編「北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」に登場するエピソードをもとに映画化された。

最終更新:4/14(土) 10:15
産経新聞