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「原子力発祥の地」で人材育成 茨城県東海村、産学官連携で科学研究の中心地を目指す

4/16(月) 7:15配信

SankeiBiz

 「原子力発祥の地」として原子力関連企業が集積する茨城県東海村で、原子力技術の継承に欠かせない人材の育成に産学官が力を入れている。2011年の東京電力福島第1原発事故を受け原子力業界への就職に二の足を踏む若者が増え、作業現場では高齢化と人手不足が深刻化。低迷する採用の打開に向け企業説明会を開いたり、インターンシップ(就業体験)を実施したりして呼び込みに躍起だ。村も原子力技術を他の自治体にない地域資源として活用、「原子力サイエンスビレッジ」を目指す。

 ◆若手少なく不均衡

 大学生への企業説明会が解禁された3月最初の土曜日、東京・秋葉原で開催された日本原子力産業協会主催の合同企業説明会に、東海村の原子力関連企業7社が集まった。

 参加を呼びかけたのは、東海村や周辺の関連企業、大学・高校などが連携して16年2月に設立された「原子力人材育成・確保協議会」(東海村)。文字通り、原子力に携わる若い人材を確保し次代の担い手を育成するのが狙いだ。

 説明会では大手電力や原発メーカーなどがそろう中、協議会のブースには多くの学生が立ち寄った。参加した原子力エンジニアリング(同)は採用担当の古川弘取締役らが熱心に魅力を訴えていた。

 同社は50歳前後の熟練社員が多く、若手は少ない。「人員構成は不均衡で、採用できなければ10年後、20年後は危機的状況になると頭を痛めていた」(石田卓也社長)だけに協議会への期待は大きい。会員企業が当初の9社から14社に増えたのもそうした業界の危機感の表れだ。

 協議会会長も務める石田氏は「設立2年で知名度は低く、まだ(採用という)成果は出ていないが、村もメンバーに入っており心強い」と前向きだ。2年前の設立総会であいさつした山田修村長は「原子力関連施設の安定的な維持管理には何においても人材育成が一番大事。村も精いっぱい支援したい」と協力を惜しまない。

 東海村には日本原子力研究開発機構(JAEA)や大強度陽子加速器施設(J-PARC)など原子力の開発拠点のほか、関連企業の多くが事業拠点を置く。同村の就業者約1万7400人のうち原子力関連(学術研究、専門・技術サービス業)は約2300人で、製造業に次いで多い。

 この比率は全国平均の4倍強と原子力人材の層は厚く、世界有数の最先端科学の研究に携わる人材育成の中心地になり得るポテンシャルを持つ。施設の安全性・健全性確保に加え、廃炉に向けた技術開発という課題解決にもこの地域資源が生きる。

 だからこそ東海村は主要産業を支える各社の共通課題である人材不足の解消を支援。同時に「地元で働くメリット、つまり子育てに優しいといった村の魅力を発信。教育予算や施設などが充実する『TOKAI』をアピール」(村長公室まちづくり推進課の大道雄治課長)。若者に就職・定住を呼びかけ、持続可能なまちづくりにつなげたい考えだ。

 しかし原発事故で原子力産業へのイメージが悪化、親の反対などで就職をためらう高校生は少なくない。村内の日本原子力発電東海発電所は廃炉作業中で、同第2発電所は運転停止が続く。このままでは高度な技術を持つ50代の熟練工が若手に技術を伝えることなく退職期を迎えてしまう。

 ◆技術伝承には経験

 東海・同第2発電所の仲田拓士副所長は「現場には今のところ、昔から顔なじみで『発電所の主』的なベテランから中堅まで各社健在なので不安はない」と冷静だ。だが将来を考えると「何事も経験なので技術伝承が心配」と東海総合研修センターの藤田幹雄副所長は指摘する。

 協議会は設立以来、高専・大学生向けと高校生向けの原子力産業インターンシップを16年度に2回、17年度に6回開催した。初年度は「見せるところがない」と企業見学に消極的だった会員も今では就労体験やワークショップなどで学生と活発に交流。夜の懇談会では社長や若手技術者が熱く語るようになった。

 ■「種まきは終わった」採用第1号に期待

 背中を押したのは、JAEAから2年前に出向してきた技術者で、同推進課に籍を置く松尾一臣係長。「売りを知らない企業に専門家の立場から意見をいった」(大道氏)ことで、企業が主体的に動くようになった。

 また協議会独自や東海村合同の就職面接会を実施したほか、進路指導担当の先生を対象とした企業説明会も昨年6月に開催。意見交換会では村長や社長らが学生の就職に理解を求めた。会員企業同士の情報交換も活発化、魅力ある会社づくりへの意識も高まってきたという。

 大道氏は「インターンに来て説明会に参加し採用が決まるというパターンを作りたい」という。そのためには「接触した学生に対するフォローが重要」と指摘する。石田氏は「2年がたち、種まきは終わった。高校や大学から評価され、定着してきた」と採用第1号の誕生に期待する。

 原子力エンジニアリングは今月2日、新卒5人を含む18人を迎えて入社式を行った。来年4月の新卒採用に向け、秋葉原の合同企業説明会で出会った学生がエントリーしており、吉報が待たれる。(松岡健夫)

最終更新:4/16(月) 7:15
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