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社説:シリア攻撃 和平シナリオが見えない

4/15(日) 11:15配信

京都新聞

 限定的とはいえ、一方的な武力行使は残念だ。
 米英仏3国がシリアへの軍事攻撃に踏み切った。
 攻撃を示唆していた米トランプ大統領は国民向け演説で、シリアのアサド政権が化学兵器を使い市民を殺傷したことが理由と述べた。
 攻撃対象になったのは軍事施設や科学研究施設、化学兵器が貯蔵されているとみられる施設などだが、民間人にも被害が出ている模様だ。
 トランプ政権によるシリアへの軍事攻撃は昨年4月に続き2度目になる。
 シリアが化学兵器を使用したとすれば、重大な国際条約違反であり、シリアに対する相応の制裁は必要だ。
 しかし、シリアは化学兵器の使用を否定し、化学兵器禁止機関(OPCW)に現地調査を要請。OPCWは14日に現地に入る予定とされていた。
 OPCWは化学兵器禁止条約に基づいて設置され、強い調査権限がある。3国は、国際機関が査察を始める当日の朝に攻撃を始めた。なぜ査察を見守れなかったのか。
 米政府は「米独自の情報に基づき、アサド政権が化学兵器を使ったと確信するに十分な証拠をつかんでいる」と説明している。しかし「証拠」の具体的な説明は避けている。
 どのような理由があれ、国連での合意もない武力行使は、国際法上の正当性を欠いている。
 国連安全保障理事会では、米国がシリアの化学兵器問題の真相解明と責任者の特定を目指す調査団設置を提案したが、アサド政権の後ろ盾になっているロシアの拒否権で廃案になった。
 トランプ氏は、ロシアがシリアによる化学兵器使用を止められなかったと非難した。英国のメイ首相は「他に選択肢がない」、フランスのマクロン大統領は「シリアは一線を越えた」と述べた。
 3国は化学兵器阻止の決意を協調しているが、シリア和平に向けた構想に基づいているようには見えない。
 トランプ氏は先月、支持者向けの集会でシリアからの撤退を突然表明した。今回の攻撃との間の一貫性のなさには、驚くばかりだ。
 トランプ氏とメイ氏、マクロン氏はいずれも支持率の低迷に苦しんでいる。力の行使は国内向けのアピールでもあろう。
 ロシアは米英仏による攻撃を強く非難している。ならば、国連安保理での調査団設置についてなぜ、かたくなに反対しているのか。
 ロシアは2013年、体制存続を前提にアサド政権から化学兵器放棄の約束を取り付けた経緯がある。ロシアには重大な責任があることを自覚してほしい。
 安倍晋三首相は「事態の悪化を防ぐ措置」と述べ、攻撃への理解を示した。
 米国との「強固な同盟関係」を掲げる安倍政権としては、他に選択肢はないのかもしれない。
 それを前提としても、攻撃の向こうにどのような和平シナリオを描いているのかを、トランプ氏にただす必要があるのではないか。

[京都新聞 2018年04月15日掲載]

最終更新:4/15(日) 11:15
京都新聞