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智弁和歌山の球史に残る大逆転劇 今は部長を務める元主将「逆境に腐らず」

4/15(日) 17:45配信

朝日新聞デジタル

 2006年の第88回大会は「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹(現日本ハム)を擁する早稲田実(西東京)と田中将大(現ヤンキース)の駒大苫小牧(南北海道)との決勝、引き分け再試合抜きには語れない。だがこの大会、球史に残る大逆転劇があった。帝京(東東京)と智弁和歌山(和歌山)の準々決勝だ。帝京が九回2死から本塁打などで8点を奪い、12―8と逆転。しかし、その裏、智弁和歌山は本塁打などで同点に追いつき、最後は押し出し四球でサヨナラ勝ち。1試合で両チーム計7本塁打は今も大会記録として輝く。

【写真】智弁和歌山の古宮克人部長=和歌山市冬野


 「逃げ切って終わりの試合」。高嶋仁監督にとってそんなゲームのはずだった。八回を終了し、智弁和歌山は本塁打4本を含む11安打と自慢の強打で4点をリードしていた。勝てば、準決勝で、チームが対戦を目標にしていた駒大苫小牧との試合を控えていた。客席にも空席が目立ち試合の結果は見えたかのようだった。

 しかし、九回表、土俵際に追い詰められた帝京の打線が火を噴く。2死一、二塁から一気に5連打。さらに、3点本塁打も飛び出し、この回一挙8得点。8―12と、智弁和歌山は4点をリードされた。帝京スタンドはお祭り騒ぎ。「この世の終わりだと思った」と当時の智弁和歌山の主将、古宮克人(29)。「打った瞬間本塁打と分かったが、左翼手に『諦めず球を追いかけろ』と叫んだのを鮮明に覚えている。放心状態だった」

 勝利目前から一転、追い込まれた智弁和歌山。九回裏の攻撃前、高嶋監督は「お前ら、マー君(田中将大)とやりにきたのじゃないんか」と発破をかけた。帝京の投手の制球が乱れ、連続四球で無死一、二塁。そしてこの日2安打の4番橋本良平が打席に立った。

 「ネクストバッターズサークルにいるときから橋本の雰囲気が違った。『これは放り込むな』と思った」と古宮は振り返る。だが、高嶋監督が出したサインは「待て」。「本塁打を狙って力んでいて、飛球になる」と感じたからだ。2球連続「待て」のサインのあと、橋本はいったん打席を外して体を伸ばした。

 「これで行ける」と高嶋監督が期待した通り、橋本の打球は左中間に吸い込まれ、1点差に迫る3点本塁打。さらに代打青石裕斗の中前適時打で同点とした。そして、1死満塁で打席に入った古宮。「本塁打を狙っていた」というが、気負いはなかった。しっかりと球を見極めて四球を選び、サヨナラ押し出しで激戦を制した。

 「1イニング(九回)の短時間であんなにも感情が上下したことはない」という古宮。「順境におごらず、逆境に腐らず」。現在、智弁和歌山で部長を務める古宮は選手の指導で繰り返し伝えている。「野球は最後まで分からない。帝京戦で身をもって感じたからこそ、伝えられることがある」。特にチームが逆転負けした試合後に、あの帝京戦のことを話すという。=敬称略(片田貴也)

朝日新聞社