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【漢字トリビア】「栞」の成り立ち物語

4/15(日) 11:31配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「栞」。四月二十三日は親しい人の間で本を贈り合うサン・ジョルディの日。日本ではこの日を「子ども読書の日」に制定しています。

「栞」という字は、まず「干」という漢字をふたつ並べて書きます。
これは、上を平らに削ってそろえた二本の竿を表す象形文字。
さらに、その下に「木」という字を組み合わせて、山や森の中を歩くときに迷わないよう、道の途中にある木の枝を折り、削って目印にした様子を表しています。
「栞」の語源は「枝」を「折る」と書いて「枝折る(しおる)」。
「栞」とはまさに、木の枝を折り、削って作った道しるべ。
そこから派生して、読みかけの書物の間にはさんでおくものや、遠足や旅行に出かけた際の案内となるものを意味するようになったのです。

思いがけず日差しの強い、あたたかな春の日。
少年は一人前の男とみなされて、狩りや漁へと駆り出されます。
日ごろ遊んでいた場所よりもさらに分け入った、暗くて狭いけもの道。
一斉に目覚めた命があちこちでうごめいているような気配。
自分の知っている山とは異質な空気に感化され、気持ちばかりが先走ります。
もっと遠くへ行ってみたい、獲物をしとめて名をあげたい。
そんな少年に大人たちが最初に教えること。
それは、家族のもとへ必ず帰ってくる、ということ。
雪解けの後、春の初めの狩りの日は、安全の確保が最も大事な仕事です。
けもの道の様子を把握し、分かれ道では足を止め、木の枝を折って目印を作ります。
自然に折れた枝と間違えぬよう、手をかけてきれいに削られた竿。
それを木にくくりつけたり、土にしっかりとさしこんだりしています。
この分かれ道が、生死の分かれ目になるかもしれない。
自然に対峙するときに欠かせない謙虚さ、立ち止まる勇気。
あらゆる状況を想像する力と、惜しみない創意工夫。
未来の自分を助けるのは、あなた自身が作り出す栞なのです。

ではここで、もう一度「栞」という字を感じてみてください。

予想を超えた物語の展開に呆然として立ち止まり、栞をはさんで静かな余韻を楽しむ日。
厳しい現実から逃れるために、栞を探す手ももどかしく本を開き、思う存分、魂の自由を味わう日。
久しぶりに取り出した愛読書にはさまれていた栞に、迷い悩んでいたかつての自分を見つけた日。
今日も栞に導かれるまま、心の旅へと出かけましょう。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『日本の言葉の由来を愛おしむ ―語源が伝える日本人の心―』(高橋こうじ/著 東邦出版)


(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年4月14日(土)放送より)

最終更新:4/15(日) 11:31
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