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Armの独壇場にはならない? AI向けコア市場

4/16(月) 12:21配信

EE Times Japan

 プロセッサコア市場では現在、クライアント上でマシンラーニング(機械学習)を行うことを想定した十数種類の製品が、SoC(System on Chip)への搭載をめぐって競争を繰り広げている。スマートフォン向けに設計されている製品も既にある。Armが新製品の発表を間近に控えていることから、さまざまな企業が、いち早く市場に投入することを狙っている。

 米国の市場調査会社であるThe Linley GroupのアナリストLinley Gwennap氏は、米国カリフォルニア州サンタクララで2018年4月11~12日の日程で開催された年次イベント「Linley Processor Conference」においてEE Timesのインタビューに応じ、「現在、機械学習向けチップの開発競争は、低消費電力のクライアント側への搭載を狙う方向に移行しつつある。しかし、データセンター向けの高性能チップをめぐる競争に関しては、まだほんの初期段階にすぎない」と述べている。

●Arm以外のメーカーにもチャンスが

 同氏は、「ArmはCPUだけでなく、GPU市場でも優勢を確保してきたが、AI(人工知能)エンジンは、CPUコアベンダーにとって全く新しい市場となっているため、Arm以外のメーカー各社が有利なスタートを切っている状況にある」と続ける。

 既存のデザインウィンの多くは、携帯電話機市場全体の約3分の1を占めるプレミアムスマートフォンにみられる。Gwennap氏は、「AIアクセラレーションは今後2~3年の間に、携帯電話機市場における、残りの全ての分野に波及していくだろう」と予測する。

 AIチップのターゲット市場としては、スマートフォン市場以外では、自動車市場が期待されている。この他、PCやタブレット、IoT(モノのインターネット)機器などの市場が挙げられる。

 Armは後れを取り戻そうと、2018年2月に「Project Trillium」と呼ぶ包括的な取り組みを発表した。しかしGwennap氏は、「Armが競争力を確保する必要があるのは、電力効率を最適化することが可能な、特殊なハードウェアアクセラレーターの分野である」と述べる。

 「Armは、このようなアクセラレーターの開発を進めており、2018年夏には最初の製品を発表できる予定だとしている。しかし実際のところ、Armが後れを取ったことで、新しい企業に市場参入のチャンスが生まれている」(同氏)

 Armは2017年10月に、機械学習グループを設立したと発表した。また2018年2月には、今後の計画に関する詳細をいくつか明らかにしたところだ。

 同社は、米国シリコンバレーで2018年10月に開催する予定の年次イベントにおいて、製品の詳細を明らかにするとみられる。ただし、ニューラルネットエンジンとCPUとの間には必ずしも密接な関係があるわけではないため、Armが巻き返しを図ることができるという保証はない。

●優れたベンチマークが必要に

 最終的に、このまだ新しい市場での競争で勝利を獲得するのは、性能と電力、ダイ面積の最適な組み合わせを実現する半導体チップだろう。

 Gwennap氏は、「問題なのは、われわれはチップ自体の性能を気にしてしまう傾向にあるという点だ。本当は、ニューラルネットワーク上で動作したときの性能を見るべきなのである。そのためには、例えば“1秒間で分類できる画像の数”といったような、優れたベンチマークが必要になるだろう」と指摘する。

 Baiduは、早い段階からAIベンチマークをオープンソースとしてリリースしていたが、広く普及するには至っていない。トランザクション処理性能評議会(TPC:Transaction Processing Council)は2017年末に、問題の解決に向けてワークグループを設立したが、今のところまだ何の進展もないようだ。

 Gwennap氏は、「ベンチマークを考えるのは簡単だが、メーカー各社の合意を得て結果を比較することが難しい。物事は常に変化するため、どのベンチマークも、関連性を維持するために進化させる必要がある」と述べる。

 同氏によると、現在のところ、Videantisが発表したマルチコア「v-MP6000」は、一番近い競争相手であるCEVAの「NeuPro」の性能を、わずかに上回っているという。NeuProは、SIMD DSPとシストリックMACアレイを組み合わせている。

 この他にも、Synopsysの「EV64」は、活性化/プーリング向けにSIMD DSPとカスタムロジックを組み合わせている。また、AImotiveの「AIware」は、Videantisと同様に、多くのカスタムハードウェアブロックを使用しているという。

 低コストの製品群の中では、VeriSiliconの「VIP8000-O」が、GPUと最大8個の深層学習エンジンと組み合わせたときに、最高クラスの性能を実現しているようだ。皮肉なことに、CambriconのCPUは、小型のマトリックスエンジンを搭載し、既に発表されているチップの中でも最も性能が低いが、Huaweiのスマートフォンで重要なデザインウィンを確保している。

 また、Imagination Technologiesも、MACアレイを搭載した非GPUアーキテクチャの「PowerVR 2NX」を投入している。NVIDIAは、プロセッサ「Xavier」のNVDLAコア向けIPをオープンソースで無償提供することにより、Armのサポートを獲得した。

●データセンター向けAIチップで確固たる地位を持つNVIDIA

 Gwennap氏は、「現在のところ、全体で約40社もの企業がAIチップを開発している状況にある。その多くはデータセンターをターゲットに定めているが、そこではNVIDIAのGPU『Volta』が、Amazonなどの巨大ハイテク企業のトレーニングエンジンとして採用されており、確固たる地位を確立している」と述べる。

 同氏は、「今のところVoltaの競合製品としては、Googleのアクセラレータチップ『Tensor Processing Unit(TPU)』と、MicrosoftのFPGAベースの機械学習用システム『Brainwave』とみている。これら以外の選択肢として挙げられるメーカーは、それほど多くない」と語った

 「Wave Computingは2018年中に、新しいAIデータセンター向けアーキテクチャを実用化する予定だとしており、一歩抜きんでることになるだろう」(同氏)。Wave Computingは、完全なシステムを提供することを目指していることから、同社のターゲットは、独自に最適化された大規模なデータセンターではなく、ティア2およびティア3サプライヤーだと考えてよいだろう。

 Intelは最近、「Nervana」の製造が2019年以降になる見通しであることを明らかにした。新興企業であるGraphcoreは、2018年後半に半導体チップを発表する予定だとしている。また、もう1つの新興企業Cerebrusは、何も動きがない状態が続いているが、ビットコインASICを手掛けるBitMainは2017年末に、データセンター向けAIチップの開発予定を明らかにしている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

最終更新:4/16(月) 12:21
EE Times Japan