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見えない乱気流から飛行機を守れ JAXAとボーイングが検知実験開始

4/16(月) 10:30配信

産経新聞

 飛行機にとって乱気流による「エアポケット」は厄介な存在だ。発見が困難で、激しい揺れで犠牲者が出たこともある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月、米航空機大手ボーイングと共同で検知装置の飛行試験を開始し、5年後をめどに実用化を目指す。(小野晋史)

 ■一瞬で天井に頭

 エアポケットは「晴天乱気流」によって引き起こされる下降気流だ。乱気流は文字通り空気の乱れで、積乱雲のような雲の中だけでなく、民間機が飛行する高度1万メートル付近の雲の上でも起きる。雲の上は晴れているので、ここで起きるものを晴天乱気流という。

 エアポケットに巻き込まれると、機体は激しく上下に揺れ、数秒で数百メートルも急降下する場合がある。2011年に紀伊半島沖上空で5人が重軽傷を負った事故では、乗客らは「機体が突然、突き上げるように持ち上げられ、その後、大きく突き落とされた」「一瞬で頭が天井にぶつかった」と証言した。

 晴天乱気流による事故は日本近辺だけでも何度も起きており、1997年に北太平洋上空で死者1人、重軽傷160人以上の被害が発生。66年には富士山上空で英国海外航空機が空中分解し、124人が全員死亡する大惨事となった。

 エアポケットは「ジェット気流」と呼ばれる強い偏西風が吹き続ける高い高度で生じやすい。高度によって向きが異なる風に挟まれた場所で、上下方向に渦を巻くように発生する。渦の高低差は数百メートルに達することも珍しくない。

 雲の中で起きる乱気流であれば、機体から前方に電波を発射し、雲の水滴にぶつかって反射してきた電波をとらえることで検知できる。だがエアポケットは雲がない場所で起きるので、検知が難しい。

 ボーイングの担当者は「乗客と乗務員が負傷する一番の原因だ。検知できれば乗客の快適さが増す」と強調する。

 ■70秒前に対策

 こうした飛行機の脅威を防ぐため、JAXAは三菱電機と共同で乱気流を検知し事故を防止するシステムの開発を進めている。

 機体に「ドップラーライダー」と呼ばれる装置を搭載。進行方向に赤外線パルスを1秒間に千回のペースで発射し続け、大気中を浮遊する「エアロゾル粒子」という微粒子の動きをとらえる。

 エアポケットでは、直径千分の1ミリ以下のちりや氷の粒が激しく飛び回っている。赤外線が粒にぶつかると波長が変化して戻ってくるため、これを利用して検知する仕組みだ。

 遭遇するまでの時間や距離、風の強さや向きも分かる。小型ジェット機を使った実験では、平均17・5キロ先の乱気流を検知できることを確認した。時間に換算すると遭遇まで70秒ほどの余裕があり、乗客にシートベルトの着用を促すことができる。

 エアポケットを検知しても、高速で飛行する航空機が回避できるとはかぎらない。無理な回避はむしろ危険な場合もある。

 そこで重要になるのが、機体の揺れを低減する技術だ。ドップラーライダーのデータを基に揺れを短時間で予測。主翼の後ろ側に取り付けた補助翼を作動させるなどして機体を制御すれば、揺れを半分程度に抑えられるという。

 ■ボーイングが試験

 JAXAは今年3月、ボーイングとの飛行試験を開始し、検知技術の信頼性などを検証している。ボーイング777大型貨物機に装置を搭載。米国西海岸のシアトルを拠点に、4月末までの予定で周辺の海上や内陸部を飛行する。大型機を使った飛行試験は初めてで、パイロットの評価や検知装置の設置場所に関する知見などが得られる。

 装置は小型軽量で搭載しやすいのが特徴で、JAXAからの技術移転で三菱電機が商品化する見通しだ。ボーイングは「世界で最高のシステムの一つ」と評価しており、同社機に搭載される可能性がある。

 JAXAの井之口浜木研究領域主幹は「基礎研究から始めて20年。実用化へあと一歩のところまできた。できるだけ飛行機の事故を減らしたい」と意気込む。

最終更新:4/16(月) 10:30
産経新聞