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川崎医科大学循環器内科学の上村史朗教授に聞く

4/16(月) 10:51配信

山陽新聞デジタル

 伝統が息づく研究室で、先端治療に挑む臨床の最前線で、スタッフを束ねて指揮する新進の医学教授に決意を伺う。9回目は川崎医科大学循環器内科学の上村史朗教授に聞く。

     ◇

 ―循環器内科は心臓と血管に起こる病気を中心に検査や治療を行います。疾患の特徴や最近の傾向を教えてください。

 心臓の病気にはたくさんの種類がありますが、最も多いのは心臓に栄養を送る冠動脈の動脈硬化が原因となって起こる狭心症や心筋梗塞です。他にも弁膜症、不整脈、心筋症、動脈瘤(りゅう)など多くの病気があります。これらの心臓病が進行すると、全身に十分な血液が送れなくなり、息切れやむくみが起こる「心不全」に行き着きます。

 日本人の死亡原因の第1位はがんですが、心臓病は約20%を占め第2位です。ただ65歳以上の高齢者では、心臓病が女性で1位、男性も年齢が進むにつれてがんとの差が小さくなります。2025年には第1次ベビーブーム期に生まれた方が後期高齢者になりますから、今後高齢の心臓病患者さんがさらに増えると予測されています。循環器分野の医療をいかに適切に、効率的に行うかが大きな問題になりつつあります。

 ―川崎医科大学付属病院では心臓病の新しい画像診断の開発をするなど、先進的な研究を行っていると伺っています。

 心臓の検査法には、患者さんの体に負担のかからない非侵襲的なものと、多少の侵襲を伴いますが診断精度が非常に高いものがあり、両方とも大変進歩しています。特に非侵襲的なエコーやCTは画質が大変良くなっています。2次元の画像をコンピューターで3次元に再構築して、いろいろな方向から心臓を観察できるようになり、病気の有無や程度を詳細かつ正確に判断することが可能になりました。特に心エコーは川崎医科大学が積極的に取り組んでいる分野であり、3次元心エコーも前任の教授が国内に先駆けて開発しました。

 私自身はカテーテルを使った検査と治療が専門です。川崎医科大学では冠動脈疾患の診断と治療に近赤外線を用いた光干渉断層法(OCT)という技術を応用しています。OCTを先端に取り付けた細いカテーテルをこの血管に入れ、動脈硬化の程度を内側から観察しますと、血管壁にたまっているプラーク(脂質成分)の状態などを詳細に診断することができます。

 川崎医科大学付属病院ではこれら精度の高い検査法を組み合わせて、患者さん一人一人で異なる病状を的確に診断して、最適なテーラーメードの治療を提供できるように努力しています。

 ―診療科の目標として「安心の24時間対応」も掲げていらっしゃいます。

 循環器病を発症すると命に関わることがありますから、一刻も早く適切な診断と治療を受けていただくことが必要です。

 川崎医科大学付属病院では24時間体制で循環器内科の専門医が常駐し、緊急の循環器病患者さんを受け入れるため、近隣の医療機関とホットラインをつくっています。倉敷市、岡山市西部の多くの1次医療機関、救急隊と専用電話回線を結び、患者さんを受け入れた開業医や救急隊員が心臓・血管の病気の疑いがあると判断すれば、私たち専門医と直接話ができます。このシステムによって治療開始までの時間が大変短くなり、救命できる患者さんが増えてきています。

 ―心臓病患者は高血圧、糖尿病、脂質異常症といったさまざまな基礎疾患を抱え、メタボリック症候群と関連すると言われています。予防するにはどんなことに気を付けたらいいでしょうか。

 循環器疾患の危険因子として、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などが挙げられます。これらを併せ持つ人も多く、二つある人は一つの人の2倍くらいの危険があるでしょうし、三つ、四つと持っている人は、相乗効果で4倍、8倍といったように、どんどん心臓病を起こしやすくなります。一つ一つの危険因子をきちんとコントロールする必要があります。

 つまり心臓病は、たばこを吸う、運動不足、過食などといった良くない生活習慣が積み重なって起こりますので、まず、その生活習慣を改めることが重要です。さらに定期健康診断やメタボの特定健診を受け、例えばコレステロール値が高いのであれば、食事療法、運動療法に取り組み、それで改善しなければ服薬治療も必要です。

 ―臨床医として、患者さんと接する際に心掛けていることは何ですか。

 診察を始めるに当たり、最初のあいさつが大切と思っています。初対面の患者さんが病気について話しやすい雰囲気をつくることを心掛けています。学生や研修医に対しては、不安を抱えて受診される患者さんに対して、自分がどんな印象を与えているのかを意識することが大切だと話しています。最新の医学的な知識を広く身に付けることは当然ですが、患者さん一人一人のことをよく考え、親身になって適切な診療ができる循環器内科の医師を育てたいと思っています。

 うえむら・しろう 奈良県吉野町出身。奈良県立医科大学卒。博士研究員として米スタンフォード大学に留学。奈良県立医科大学准教授などを経て、2015年1月から川崎医科大学循環器内科学教授、同大学付属病院循環器内科部長。日本内科学会認定内科医・指導医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターべンション治療学会専門医・指導医など。56歳。