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<都はるみを再評価>「歌屋」と名乗る理由、第二の故郷・伊豆大島への想い

4/16(月) 12:38配信

MusicVoice

 デビュー55周年を迎えた歌手の都はるみ。2015年来、事実上の音楽活動休止状態にあるが、17年にラジオ出演した際には「良い歌詞に出会えば良いけど、なかなか巡り合えない」とその活動に含みを持たせた。一般的には「演歌歌手」という印象はあるものの、自身を「歌屋」と例えるなどその音楽性は型にはまらない。なぜ「歌屋」なのか。そこにはジャンルにとらわれずに歌いたいという思いがある。それは彼女のコンサートにも表れている。

自然とともに生きる人に寄り添う演歌

 怒号にも似た風の音、波が波を打ち消す音、椿の花びらから滴る水の音、人のすすり泣く声――、そうした情景を、言葉、そして歌唱法をもって表現しているのが演歌ではないか。

 民謡の流れを汲む演歌は、郷土との関わりが強い。それは、歌詞に使われる言葉からもうかがえる。例えば「海峡」や「白波」、あるいはその土地の名称。若い世代には少し遠い存在になってしまったが、改めて真剣に向き合うと、演歌は、自然と共にあるのではないかということに気が付く。自然とともに生きる人の営み。それを歌詞やメロディ、そして歌唱法をもって表現している。

 美空ひばりの後継者ともうたわれた都はるみ。「はるみ節」と呼ばれる、うなり声のような力強いこぶし回しや、波打つような深いビブラートが特長で、それらを駆使した圧倒的な歌唱力で人々を感動させている。その特長こそが自然界そのものと言える。風林火山ではないが、こぶしは時に雷鳴のごとく、深いビブラートは荒波のごとし、表情豊かな歌声は雲海を帯びた峰のように。都はるみから発せられる歌はそうした自然界の脈動を感じさせる。

 しかし、都はるみのコンサートをみると、演歌だけではない様々な音楽性がうかがえる。圧倒的な歌唱力をもって表現するのは“演歌”という枠組みを超えたものと言える。それこそ自身を例える「歌屋」の真意が見え隠れする。

伊豆大島を描いたアンコ椿

 その一端は、今年2月に発売された、“都はるみ伝説の野外コンサートの映像3作品にも表れている。そのうちの一つのコンサートを引き合いに、都はるみの歌と向き合ってみたい。

 伊豆大島波浮港開港200周年記念として2000年7月26日に、東京・伊豆大島のトウシキ広場でおこなわれた野外コンサート。この地での単独コンサートは約20年ぶりだった。都はるみはこの地との関わりが深い。都はるみの代表曲に「アンコ椿は恋の花」がある。実はこの曲は都はるみにとって3枚目のシングル。期待の新人としてデビューした都はるみだったが、そのデビューシングルは思いのほか振るわなかった。そして3枚目、その後彼女の歌の半数以上を手掛けるようになる市川昭介とタッグを組み作詞家星野哲郎がこの地を舞台に詞を書いたのが「アンコ椿――」だった。この曲の大ヒットで都はるみの名前と伊豆大島は全国に知れ渡った。第二の故郷と言うのはこのためだ。そんな都はるみが20世紀の終わりにコンサートの地に選んだのがここ伊豆大島。

 この年、三宅島では火山性地震が頻発し、神津島では震度6弱、新島では震度5弱などを観測。不安が募るなか、町民の想いに押されるように来島した都はるみは歌をもって元気にした。大島町によればこの時の観客動員数は4500人。当時の島民人口が9224人(総務省統計局・国勢調査)だから、その半分が訪れたことになる。なお、コンサートの入場料は無料、会場内にチャリティーボックスを設置し、その収益はこの地震の被災者に寄附された。

 コンサートを触れる前に「アンコ椿――」についてもう少し触れたい。この曲は、力強いうなりで<アンコ~♪>と歌いあげる姿が印象的だ。歌の舞台は伊豆大島で、歌詞には島や人々の様子が描かれている。この「アンコ」は、伊豆大島の言葉で、目上の女性に対する敬称「姉っこ」がなまったものと言われている。また、「椿」は同地域を代表する植物だ。1965年には同名で映画化され、淡い恋物語として描かれた。叶わぬ恋心、または遠くの人あるいは故郷を想う心がうかがえる。言葉にできない心から触れ出す愛しさが、前述の<アンコ~♪>から滲み出ている。その後に続く歌詞はこうである。<アンコ椿は アンコ椿は ああ すすり泣き>。筆者には何とも切なく響いた。

 都はるみは、それを<アンコ>と力強いこぶしで表現し、<椿は>は糸のように細く伸びやかに歌い上げている。もしかしたら男の心情をもああいう力強いこぶしで表現しているのかもしれない。また、「恋物語」を描きつつも、三原山大噴火などの大震災があるたびに故郷を離れなくてはならない、島民の辛い思いも投影されているように感じる。それは伊豆大島に限ったことではなく、今も避難生活を送らなければならない東日本大震災などにも重なる。

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最終更新:4/16(月) 12:38
MusicVoice