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中国の「手話弁護士」 各地のろうあ者からSOS相次ぐ

4/16(月) 20:45配信

東方新報

【東方新報】手話ができる弁護士の動画が、中国のインターネット上で最近、特にろうあ者の間で話題になっている。一夜にして有名になった「手話弁護士」のもとには、各地のろうあ者から法律に関するさまざまな悩みや相談が寄せられているという。

 重慶市(Chongqing)の法律事務所に在籍する唐帥(Tang Shuai)弁護士は、両親がいずれもろうあ者だったため、幼い頃から手話を自然に身につけた。

 手話には、ろうあ学校で使用する「共通手話」と、日常で使用する「自然手話」が存在する。両者の違いが裁判の中で障壁になっていることを目の当たりにしたことがきっかけで、唐弁護士は「手話弁護士」の道を歩むことになった。

 ■共通手話と自然手話の差が、ろうあ者を不利な立場に

 ろうあ者に広く使われているのは「自然手話」だが、法廷の手話通訳者はろうあ学校の教師が多いことから、「共通手話」が使われる。両者の違いが原因で、意思の疎通がうまく行かないことが多々あるという。

 また、法律の専門用語も多い。ろうあ者に法律の知識を説明する必要があるが、手話通訳者は法学部出身者ではない場合が多いため、ここでも問題が生じる。したがって、ろうあ者の権利や義務がきちんと明確にされているとは言い難いのが現状だという。

 唐弁護士が法律の世界に入るきっかけとなった出来事は、盗みの疑いをかけられた、あるろうあ者の女性の取り調べの動画を見た時だった。女性は必死に、「盗んでいない」と「自然手話」で訴えていたが、手話通訳を介した結果、「私は金色のiPhoneを1台盗みました」と通訳されてしまっていた。

 この動画が、当時、手話通訳者だった唐弁護士を大きく揺さぶった。手話通訳者はろうあ者の「口」の代わりになれるかもしれないが、当人の意思の伝達者であると同時に、重要な情報の受け手でもあるのだ。しかし、そこには誤解が生じない保証はまったくないのだ。唐弁護士は一念発起して法律を勉強し、2012年に司法試験に合格、晴れて弁護士となった。

「自然手話」は、あまり洗練されていない。これに対し、法律用語には微妙な表現の差がある。例えば「強盗」や「強奪」など、一文字違うだけで性質や判決に大きく影響する。

 また、ろうあ者に法律用語を理解してもらうために、時間をかけて一つ一つ説明して理解してもらわなければならない。

 ■専門用語を扱える通訳者の要請が目標

 唐弁護士の事務所は昨年、5人の新卒のろうあ者を採用し、法律の知識を学習させている。弁護士に手話を学習させるよりも、この方がろうあ者とコミュニケーションが取りやすいからだ。

 唐弁護士は現在、手話通訳協会を設立しようとしている。「自然手話」を使用する人材を集め、法律や医学、コンピューターなどの専門用語や専門知識を学習させ、その知識を必要としているろうあ者たちへ発信したいのだという。「自然手話」と「共通手話」の隔たりを埋めることができると同時に、手話通訳の基準とルールを制定したいと考えている。

 唐弁護士は、「中国には2000万人以上のろうあ者がいる。この人たちがもっと社会生活に参画できるように、『言葉』の壁を乗り越える手助けができればうれしい」と話している。(c)東方新報/AFPBB News

※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。

最終更新:4/16(月) 20:45
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