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逆転裁判オーケストラコンサート2018、歌あり笑いありのコンサートの模様をリポート! 巧舟氏らへインタビューも

4/17(火) 10:01配信

ファミ通.com

文・取材:堅田ヒカル

 2018年4月15日、東京・渋谷のBunkamura オーチャードホールにて、『逆転裁判』シリーズの約1年ぶりとなるオーケストラコンサートが開催された。本稿ではその夜公演の模様を、記者のインプレッションを交えながらリポートする。また、記事の最後では終演後、巧舟氏、江城元秀氏、岩垂徳行氏らに訊いたホットな感想コメントも掲載しているのでこちらもご注目いただきたい。

 2017年に行われた『逆転裁判』15周年記念コンサートが、ファンの熱い声に応えて再演されるという形での実現となった本コンサート。昼・夜の2公演が行われ、総客席数は2000を超えるオーチャードホールだが、どちらの公演もほぼ満席! 客席は公演前から期待感で満たされていた。


開演前から『逆転』一色! 成歩堂家ご先祖&子孫の掛け合い
 公演開始前には、客席に諸注意を伝えるいわゆる“影アナウンス”が流れる。成歩堂龍一(声:近藤孝行)と、成歩堂龍一のご先祖様、成歩堂龍ノ介(声:下野紘)が掛け合いをしながら、携帯電話の電源の確認などを促してくれた。

成歩堂龍一「会場ロビーでは、オリジナルグッズやCDの販売も行っております」

成歩堂龍ノ介「よかった、お金なら今日はたくさん持ってきているから。ええと……12円50銭! よぉし、買いまくるぞ!」

成歩堂龍一「値段を見てショック死しないでくださいね……成歩堂家が断絶しますから」

 といった具合にユーモアの効いたこの影アナウンスは、『逆転裁判』シリーズの生みの親である巧舟書き下ろしとのこと。最初から最後まで工夫が凝らされ、ぜいたくなイベントとなっていたのだ。



東京フィルハーモニー交響楽団による、圧倒的クオリティーの演奏!
 曲はまず『成歩堂龍一 ~ 異議あり!』から開幕。シリーズの名曲を演奏するのは、2018年にも名演を聴かせてくれた東京フィルハーモニー交響楽団、指揮は栗田博文氏。ゲームの楽曲をオーケストラ用の楽譜に作り直す“オーケストレーション”は、『逆転裁判』シリーズの曲を多く手掛けた岩垂徳行氏みずからが行ったとのこと。作品のメインテーマでもあるこの曲が、一部の弦楽器から始まり、しだいにオーケストラの種々の楽器で音が増していく様子は、じょじょに音楽のパワーが増していくようで、1曲めから非常に心が盛り上がる。

 曲はさらに、『逆転裁判1~6 麗しの組曲』へと続く。ステージの後方には、巨大なスクリーンが設置されており、曲に合わせてゲーム中の名場面が流れる仕組み。モニターに映し出されるゲーム画面がプレイ時の記憶を思い起こさせて、当時の記憶ともリンクし、音楽と映像、記憶の相乗効果で、ほかでは味わえない感動が生まれていく。


 東京フィルハーモニー交響楽団の演奏力については、いまさら述べるまでもないだろうが、それでもあえて書いておこう。もうね、すっごいじょうず。すっごい。あの、みんな弾く、じょうずに。バイオリンとか。それにね、吹く。トランペットとか。すっごい……と、思わず語彙力を失うほどの圧倒的クオリティーで感動が胸に迫ってくる。

 もう少し丁寧に書いておくと、音楽全体を織りなす楽器の音色ひとつひとつがしっかりと際立っているのに、それが溶け合うようにまとめられていて、しかも『逆転』シリーズの曲それぞれの個性がきっちりと活かされている。シリアスな曲はよりシリアスに、楽しい曲は思わず踊りたくなるほど元気よく、かっこいい曲はとろけるほどかっこよく奏でられているのだ……というところだろうか。

 『逆転検事組曲 巡り会い組曲』に続き演奏された『ゴドー ~ コーヒーは闇色の薫り』の、色っぽくカッコイイことと言ったら! サクソフォンのソロ演奏は歌うようになめらかで、もとの曲の魅力をこれ以上ないほど引き出している。とくにソロ演奏のある曲は、奏者の個性があらわれ、生演奏の特徴が際立つように感じられるので、CDなどでコンサートの演奏を聴くときにもぜひ注目してみてほしい。


幕あいのMCにも大注目! 下野紘さんがオーチャードホールで歌声を披露
 演奏のあいだには、出演声優らによるトークコーナーが。おもに成歩堂龍一役の近藤孝行さん、御剣怜侍役の竹本英史さんが司会となり進行し、『逆転裁判』シリーズの生みの親である巧舟氏やシリーズプロデューサーの江城元秀氏、作曲家の岩垂徳行氏が登壇。ここでしか聞けない開発秘話などを披露した。

岩垂 『逆転裁判3』のときは、「これまでの曲に似せなきゃいけない、でも違うものを作らなきゃいけない」と悩んで、当初はなかなか難しかったのですが、ゴドーの曲は1発でオーケーをいただいたことを覚えていますね。すごくたくさんの曲を分析して、『逆転裁判』の曲は“ケチャ”(バリ島の伝統舞踊)と音楽の作りが似ているという発見もしました。

巧 ゴドーのテーマは非常によくて、1発で「これだ!」となった記憶があります。しばらく自分の携帯電話の着信音にもしていました。コンサートは昨年も実施したのですが、ちょうど『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の制作が佳境に入り、いちばん忙しい時期で、僕は現場で見られなかったんです。今日は見ることができ、本当にうれしいですね(笑)。

 さらに、成歩堂龍ノ介役の下野紘さんが登壇し、「まさか『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』で歌うことになるとは思わなかった」(※イーカプコン限定版特典)との裏話を披露。すると、会場からは大きな拍手が。その盛り上がりにも乗せられ、下野さんが『ロンドン橋』をアカペラで独唱するという、予定外の(!?)ひと幕もあった。


『大逆転裁判』はオケ演奏に相性バッチリ! 最後は全員で「トノサマン万歳」!?
 休憩を挟んだ後半の演奏は『王泥喜法介 ~新章開廷~』、『続・大逆転裁判組曲』へと続く。『続・大逆転裁判組曲』は、昨年のコンサートよりも後に発売された『大逆転裁判2 -成歩堂龍ノ介の覺悟-』の曲も加わっており、よりダイナミックな構成となっていた。クラシカルな雰囲気で統一された『大逆転裁判』の楽曲はもとよりオーケストラに相性がよく、アコーディオン奏者も加わって懐古的な雰囲気はさらに増し、あたかも本当に19世紀末に巻き戻ったかのようだ。それほど楽曲と作品世界に没頭できた。組曲の中でも、とくに『相棒 ~The game is afoot!』部分では、コンサートマスターのソロパートがあり、これがもう、鳥肌が立つほど、滅茶苦茶に格好よかったのだ。ゲームプレイ時もすばらしかったこの曲だが、本物のバイオリンとバイオリニストによる生演奏はさらに深みと迫力、美しさが増している。しびれた。

 さらに最後のMCを挟み、『大逆転裁判 覺悟の大偉人組曲』へ。MCの最後に「つぎの組曲1曲めは、みなさんぜひ笑ってください」とのひと言が。どういう意味だろう? と思っていたら、ステージに新たな演者がスタスタと登壇。楽器などは何も手にしていない。まさか……。

 そのまさかだった。登壇した歌手は胸を張って朗々と、『大逆転裁判』シリーズ初のボーカル曲である『独逸歌曲 -怒りの独唱-』を歌い始めたではないか。

 ゲーム中でも、シリアスなシーンで流れるシュールな味わいの曲だけに、会場からも思わず笑いがこぼれていた(その中でマジメに歌い続けるすごくいい声の歌手の方という図が、まさにゲーム中のワンシーンを彷彿とさせるシュールさで、個人的にはまさに本公演のハイライトとも言うべき1曲だった)。あの曲が本職の方による独唱と生演奏の伴奏で聴くと、すごい名曲に聴こえるから不思議だ。ドイツ人民の怒りが伝わってくる。

 もちろんそのほかにも『豆籾平太 ~ブンヤ一匹、豆籾主義』や、『マダム・ローザイク ~謎は蝋にからめて』、『ドビンボー博士 ~科学の子』、『イーノック・ドレッバー ~科学と魔術の輪舞』といった、個性的すぎるキャラクターたちのBGMが惜しげもなく組み込まれていた。

 ラストの『逆転裁判1~3 法定組曲』では、『逆転裁判』初期3部作の名曲たちがつぎつぎと演奏され、客席の興奮と感動は最高潮に。オーケストラもよりいっそう力を込めて演奏しているのが見て取れ、指揮者台に立つ栗田氏も、飛び上がらんばかりに全身を使って激しくタクトを振っている。演奏を聴いていると、奇抜なキャラクターたちの姿や奇想天外な事件のことを思い出し、もう一度ゲームをプレイしたくなった。

 演奏終了後も強い拍手の音は鳴り止まず、アンコール演奏が行われた。曲目は『大逆転裁判 覺悟の大法廷曲』、そして、『大江戸戦士トノサマン』! トノサマンの演奏では、栗田氏がスタッフにわざわざ買ってきてもらったという日の丸扇子で指揮をするという場面も。フィナーレではキャスト、ゲストたちも再び壇上へ上がり、「トノサマン、万歳!」そして会場全員で「異議あり!」と叫び閉幕となった。




●昼公演セットリスト

成歩堂龍一 ~ 異議あり!
逆転裁判1~6 麗しの組曲
逆転検事組曲 華麗なる軌跡
大いなる復活 ~ 御剣怜侍
王泥喜法介 ~新章開廷!~
大逆転裁判組曲
大逆転裁判 覺悟の大偉人組曲
逆転裁判6 法定組曲
大逆転裁判 覺悟の大法廷組曲
大江戸戦士トノサマン

●夜公演セットリスト

成歩堂龍一 ~ 異議あり!
逆転裁判1~6 麗しの組曲
逆転検事組曲 巡り会い組曲
ゴドー ~ コーヒーは闇色の薫り
王泥喜法介 ~新章開廷!~
続・大逆転裁判組曲
大逆転裁判 覺悟の大偉人組曲
逆転裁判1~3 法定組曲
大逆転裁判 覺悟の大法廷組曲
大江戸戦士トノサマン



「ファンの方の熱い声にはお応えしていきたい」(江城氏)
 コンサート終了直後、控室で巧氏、岩垂氏、江城氏からそれぞれ今日の感想をうかがった。

――まずは本日の感想をお聞かせください。

江城 『逆転』シリーズのオーケストラコンサートはこれで通算4回めになりますが、『逆転裁判』らしい盛り上がりになってよかったと思います。いい意味で、オーケストラコンサートとは思えないくらいの盛り上がりでしたね。ライブみたい(笑)。昨年の公演終了後から、「またやってください」と、サイン会などいろいろな場所でお声をいただいていたので、ちょうど1年くらいで公演できたのはよかったなと。去年以上の盛り上がりで、また続けていけたらいいなと個人的には思っています。指揮の栗田さんもエンターテイナーだし、東京フィルハーモニー交響楽団の方にもすばらしい演奏をしていただけました。今回は、弊社コンポーザーの北川(保昌氏)も、リハーサルの段階から大阪から東京に来てもらって、岩垂さんとともに打ち合わせをしていただいたので、クオリティーもより引き上げられたんじゃないかなと思っています。

巧 僕は去年のオケコンに来られなかったので、今年は来られてよかったなというのがまずあります(笑)。2008年にもオケコンをやって、それ以来の現地での鑑賞になったのですが、オケコンならではの感動を久しぶりに味わいました。今回初めて客席で演奏を聴きましたね。

岩垂 客席は初めてだったんですね。

巧 前回は舞台袖で聴いていました(笑)。舞台袖から聴くのもそれはそれでうれしいのですが、今回、客席で聴いてすごく感動して涙が流れて「おいおい、そろそろ(自分の)出番だぞ」と、慌てたり、開演前の自分で書いた掛け合いで笑いが起きているのを見て赤面しながらだったり(笑)。前回のときは『逆転裁判4』が出たばかりで、今回そこからバーッと曲数も増え、『大逆転裁判』シリーズの曲も聴けたのはすごくうれしかったですね。岩垂さんのおかげです、ありがとうございます!

岩垂 ファンの方たちの声でこのコンサートが行われたというのが本当にうれしくて、僕も江城さんと同じように、いろいろなところから「コンサートをやってほしい」という声を聞いていましたので、今回の公演が、ユーザーの声で実現したんだなと、感慨深く思っています。じつは昨年のコンサートは、僕は別の場所で『逆転裁判』の曲を演奏するというスケジュールかぶりがあって観られませんでしたので、今日はうれしかったです。曲も増え、バリエーションも出てきましたし、もっともっと……

江城 いけそうですよね。

岩垂 いけそうですね、まだまだ。作品ごとにもできそうだし、可能性がもっと広がってきたなと。

江城 今日はとくにお客さんが楽しそうでよかったですね。

岩垂 客席が「バンザイ」と叫ぶコンサートはなかなかないですね(笑)。

――(笑)。ゲーム音楽はDTM(PC上で作曲すること)で作ることが多いと思うのですが、ご自身の作られた曲がオーケストラで演奏されるというのは、実際どういう気持ちになるものなのですか? 

岩垂 僕の場合は、オーケストラっぽい曲はもともとオーケストラをイメージして作曲しますので、違和感はそんなにないんですけど、生の人間が演奏することで生まれる意外性というか、音の膨らみ、音楽の膨らみが生まれて、自分の思っていた以上の広がりになるというのが、おもしろいなあといつも思いますね。自宅で作っているイメージ以上に、広がっていくというのがうれしいです。

――『独逸歌曲 -怒りの独唱-』を曲目に入れたのは、巧さんのアイデアですか?

巧 はい。お願いしました。半分は希望で「できればいいな」というくらいだったのですが、江城Pから「演奏する曲を選んでくれ」と言われ、キャラクターごとに選んでいったときに希望を出したのですが……無理が通りましたね。

――あの歌手の方は、『怒りの独唱』のためだけに来られているわけですよね。

巧 そうです。昼公演のときは、この曲がどういうものだったか説明が行っていなかったのかもしれないのですが、お客さんから笑いがこぼれたときに、歌手の方は「あれ? 俺、何かミスったかな?」と怪訝に思ってしまったかもしれないですね(笑)。

岩垂 昼公演のあとに話をしたのですが、実際にそう思ったそうです。「間違えたかな? 歌詞がヤバイ曲なのかな?」って。

一同 (笑)。

巧 それで、夜公演の前に「あの曲は、お客さんはあの反応で間違っていないんです」とご説明差し上げました。まぁ、実際にヤバイ歌詞の曲でもあるんですけどね(笑)。

※記事末尾参照。



――キャラクターごとの曲では、ウイリアム・ペテンシーの曲があるかな? と個人的に予想していたのですが……。

巧 おそらく全体の時間の都合上、入れられなかったのだと思います。

江城 尺の都合がある中で、『大逆転裁判』シリーズはまだまだ曲がありますからね。

――19世紀末が舞台の『大逆転裁判』シリーズの曲はオーケストラによく合いますね。

巧 合いますねえ! 『逆転裁判』シリーズも、電子音で聴いていた曲をオーケストラで聴くという意外性楽しさがあるのですが、もともとオーケストラ調で作られている『大逆転裁判』の曲はより膨らむだろうというイメージがあり、まさに思い通りに、パワーが増しているなと感じました。ゲーム版ではあえて編成を少なめにしているのですが、それを多くした瞬間に、やはりスケールが大きくなりましたね。

――それでは、最後に江城さんにおうかがいします。いま岩垂さんからも「ファンの皆さんの声で公演が実現した」というお話がありました、ということは、また声が届けば、“2度あることは3度ある”で、改めてこういったコンサートが開かれることもあり得るでしょうか?

江城 そうですね。会場の問題とかスケジュール問題などもあるのですが、ファンの方にこうして喜んでいただけるのであれば、続けられるように考えていくのが僕の役目かなあという思いもあるので。

岩垂 今回、海外からも来ていただいたお客さんがいらっしゃったようです。

江城 ええ。アジアからも来ていただけるような熱心な方や、この『逆転』というコンテンツをすごく愛してくれている方がいるので、何らかの形で、その思いに応えていけるような取り組みはしていきたいなと。ゲームの情報がなかなかお出しできなくて申し訳なく思っているのですが、そちらも考えつつ、『逆転』シリーズでいろいろなエンターテインメントができるように、これからもやっていきたいなと思っています。


特別企画 『独逸歌曲 -怒りの独唱-』歌詞を大公開!
 本公演で上演され、インタビューでも話題に上がった『独逸歌曲 -怒りの独唱-』。その歌詞と日本語訳をここに公開しよう。(※週刊ファミ通2017年9月28日号に掲載されたものです)


 この曲は、巧氏が日本語で作った歌詞を、ドイツ人のカプコン社員が独語に訳したそう。ゲームに入っているのは、そのドイツ人写真がそのまま歌ったものだという逸話もある。週刊ファミ通2017年9月28日号にはそんな秘話も満載の音響チームのインタビューなど、12ページにわたる『大逆転裁判2』特集が掲載されているので、電子書籍などで手に入れてみてはいかがだろうか。

最終更新:4/17(火) 10:01
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