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教師の“ブラック労働”が横行 その根源「給特法」の実態とは

4/17(火) 6:35配信

ITmedia ビジネスオンライン

 「学校教員の労働環境は劣悪で、ブラック企業をしのぐ」――。いつからか、こんな説がささやかれるようになっている。

【画像】教師の“ブラック労働”の根源である「給特法」の文面

 ただでさえ、思春期の生徒を相手に学業を教えるのは根気が必要だが、授業後の部活指導、“モンスターペアレント”への対応、授業準備なども適宜発生するため、教員の負担は増すばかりだ。

 適切な労務管理ができないブラックな学校は私立・公立を問わず存在するが、どちらかといえば公立校の方が悪質だろう。なぜなら、公立校の教員は“とある法律”の規定によって「残業が存在しない」ことになっており、何時間残業しても残業代が発生しないからだ。

●教員の“ブラック労働”を生み出す法律とは……?

 このブラック労働の根源といえる法律は、名称を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という。一般的には、略称の「給特法」で知られる。



 給特法は、「公立校の教員は授業以外の仕事も多岐にわたり、業務内容が複雑なため、勤務時間を厳密に管理することが難しい」――という前提のもとで制定されている。施行されたのは1972年だが、40年超が経過し、状況が変わったいまも内容はそのままだ。

 そんな給特法は、公立校教員に月給の4%分をあらかじめ「教職調整額」として支給する代わりに、残業時間がどれだけ長かったとしても「時間外勤務手当・休日勤務手当を支給しない」という規定になっている。

 そのため、夜遅くまで仕事をしている公立校の先生たちは「残業ではなく、好きで学校に残っている」と判断され、残業代が支払われないのだ。

●「過労死ライン」の公立教員が続出する事態に

 この規定のせいで教員の労務管理を怠り、長時間勤務の実態把握や対策が進まない公立校は数多い。

 文部科学省が2016年度に公立校教員を対象に実施した「教員勤務実態調査」によると、「過労死ライン」と呼ばれる月80時間以上の残業をしている教員は、小学校で全体の3割、中学校で6割存在することが明らかになっている。

 公立教員の労働環境を是正し、過労死ラインの労働を減らすためには、給特法の改正が必須といえよう。しかし、実際に全教員に対して残業代を支払うとなると、1兆円規模ともいわれる莫大な予算が必要となるだろう。どこから捻出するのか、今後の論点となりそうだ。

●私立校も対岸の火事ではない

 ただ、給特法が適用されない私立校にとっても、こうしたブラック労働は対岸の火事ではない。

 今年1月発表の「第3回 私学教職員の勤務時間管理に関するアンケート調査報告書」(公益社団法人私学経営研究会)では、教員の出退勤についてシステム的に把握できている私立校は約2割にとどまっていることが判明した。残る約8割は単に出勤簿に押印するのみで、具体的な勤務時間を把握できていないという。

 残業代の扱いについても、公立校と同じく月給4%分を「教職調整額」として支給している学校や、それに若干の手当を追加支給しているだけの学校が多いことも判明した。

 こうした環境を問題視した労働基準監督署が、私立校に指導や是正勧告を行うケースも増えており、何らかの指導を受けた学校は全国で約2割に上るとしている。

 これまで労基署が直接私立校に立ち入って調査や指導をするというのは極めてまれだったが、時代は変わったようだ。

●関西大学に是正勧告も

 4月上旬にも、関西大学高等部、中等部、初等部の教員に違法残業をさせたとして、運営する私立の学校法人「関西大学」が茨木労基署から計2回の是正勧告を受けていたことが判明した。

 一部報道によると、1回目の是正勧告は昨年4月で、労基署は残業実態や労働時間の記録不備などを指摘した。2回目は今年3月で、違法残業などを指摘したという。

 労使協定を結ばないまま残業した教員が52人に上ったほか、残業時間が最長で年間2042時間に達した教員もいたとしている。

 一流の学校法人として知られる関西大学でも、このようにずさんな労務管理がまかり通っていたのだ。まだ調査の手が及んでいない学校を含めると、潜在的に違法状態にある学校はさらに多いだろう。

●教員にこそ“働き方改革”が必要だ

 公立・私立を問わず、教育機関はこれ以上、教師の使命感と善意に頼り切った運営を続けるべきではない。適切な労務管理を導入し、働き方改革を進めるべきだ。

 心身ともに健康な教員が少ない学校は、いずれ保護者や受験生から選ばれなくなるだろう。そんな環境を志望する新人教師も減っていき、悪循環は加速するばかりだ。

 逆にいえば、いち早く覚悟を決め、意識と仕組みを変革できた学校こそ、優秀な教師がそろい、多くの受験生の志望の的になるに違いない。