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首相の言葉に何を思う 記者コラム「野中さんの遺影」

4/17(火) 18:30配信

京都新聞

 官房長官や自民党幹事長などを歴任し、今年1月に亡くなった野中広務さんの「お別れの会」に参列した。14日、京都市内のホテルの大広間。報道陣のエリアで立ちながら聞いた遺族代表、長女多恵子さんの言葉に少々ぐっときた。
 「報道の記者の皆さまも温かいまざなしで政治家野中広務を評してくださり、丁寧な記事を書いていただきました。私たちはどんなに救われたことでしょう。娘に生まれ、家族として生きたことに大きな誇りを持つことができました」
 野中さんが全盛期、「影の総理」「政界の狙撃手」などといわれ、舌鋒(ぜっぽう)で政敵を攻撃し、追いやる姿は勇ましい半面、大きな反発もあった。「私はいいんだけど、娘らに迷惑がかかってなあ。これがかなわん」。そうこぼすのを直に聞いた。当時、幾ばくか野中さんの記事を書き、文句も言われた身としては、記者の宿命とはいえ胸につかえていた。多恵子さんの言葉に、勝手に救われた気がした。
 横にいた年配の記者のメモを取る手が止まった。この人も、私と同じだったのかもしれない。
 自民党総裁として、安倍晋三首相もあいさつした。「平和の番人たる野中先生の言葉にはすごみがあった。正義を貫き、弱き者に寄り添われた。先生が守り引き継いでくださった素晴らしい国、日本を守り抜きます」。こちらは、何とも空々しく聞こえた。
 森友学園や加計学園をめぐり次々と不可解な問題があぶり出され、国民の信頼を失いつつある安倍首相だ。憲法9条の改正に本気で動くというが、「あの戦争を知る者として、それだけは絶対に認められない」と最後まで言い続けた野中さんである。
 追悼の辞を読む首相の前に大きく掲げられたその遺影は、ほほえんでいたけれど、この時だけは「どの口で言うか」と今にも怒鳴り出しそうに、私には見えた。

最終更新:4/17(火) 19:03
京都新聞