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シリア攻撃で不安増す新たな中東枢軸 三井美奈

4/17(火) 8:01配信

産経新聞

 米英仏がシリアを攻撃した。アサド政権を支えるロシアはミサイルが飛来したら「迎撃する」と警告したが、結局反撃しなかった。小国の政治が大戦の引き金になりかねない構図は、1962年のキューバ危機を思わせた。

 ロシアに配慮し、米英仏は早々に「アサド政権打倒が目的ではない」(パルリ仏国防相)と強調した。舞台は国連安全保障理事会に移り、米欧とロシアが対立する「いつもの構図」に戻った。シリア内戦の大勢に影響はない。攻撃の成果は目下、「国際法違反は許さない」と主張した米英仏が面目を保ったことにとどまる。アサド政権の化学兵器使用疑惑では5年前、当時のオバマ米政権がロシアに妥協し、土壇場で攻撃を見送ったからだ。イスラエル紙ハアレツはシェークスピア喜劇になぞらえて今回の攻撃を「空騒ぎ」と皮肉った。

 一方でシリア攻撃は、中東を分断する2つの新枢軸を改めて浮き彫りにした。かつてイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討で協調ポーズをとった米露が、はっきり攻守に分かれた。露側にはイラン、トルコが加わる。

 米側陣営は、欧州に加え、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の湾岸君主制諸国。注目すべきは、エジプトが「軍事紛争の拡大」に懸念を表明するなど、親米だったはずの国が攻撃を支持しなかったことだ。イラク政府は「地域を不安定化し、テロ拡大を招く」と強く反発した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるトルコのエルドアン大統領は攻撃を支持したが、ロシアと組む姿勢は変えていない。攻撃の当日、プーチン露大統領と電話し、シリア安定化で協力を確認した。

 米露の対立は、中東で米ソ冷戦が復活したかに見える。だが、対決の真の主役は、地域覇権を競うイランとサウジである。両陣営は、攻撃前から激しい駆け引きを展開した。攻撃の10日前、イランのロウハニ大統領はエルドアン、プーチン両氏とトルコの首都アンカラに集い、「3国枢軸」をアピール。一方、サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は3月から約1カ月かけて英米仏を歴訪した。イランがシリアを拠点に影響力を広げるのを阻止するため、包囲網構築を狙った。

 皇太子は、米誌との会見で「イスラエル人には郷土を持つ権利がある」と述べた。これまでのサウジ王室では考えられないほど踏み込んだ発言で、イスラエルに秋波を送った。イスラエルにとってもイランは宿敵。サウジと非公式にでも同盟関係を結べば、中東政治の歴史的転換になる。

 シリア攻撃でサウジは一時の満足を得たが、それ以上に大きな不安が浮かぶ。

 トランプ米大統領は攻撃後の演説で「米国人の血と金を注いでも中東に恒久平和は構築できない」と述べ、シリアから米軍を撤収させたい意向を再び示唆した。英仏は、イラン核合意を維持する姿勢を変えない。彼らの関心はIS掃討。陣営の思惑は異なる。

 イスラエル対アラブ、米国対ソ連(ロシア)、イスラム教スンニ派対シーア派-これまでの対立軸とは違う。中東分断の構図は複雑化した。間違いなくいえるのは、米国の空白が生じれば、イランとロシアがシリアの行方を決め、地域の緊張が一層高まるということだ。(パリ支局 三井美奈)

最終更新:4/17(火) 8:01
産経新聞