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夫の姓、むしろ好きだけど……「旧姓」使い続けなければならない理由 「私の実績が消えてしまう」

4/27(金) 7:00配信

withnews

 夫婦別姓の議論をめぐって、「旧姓を通称で利用すれば済む話」という意見がよくあります。しかし、通称利用でも仕事や生活上の不便は解消されず、それ以上に違和感が残ると言う当事者も少なくありません。二つの名前を使い分ける違和感に直面した岡山市の松川絵里さん(38)に、その理由を語ってもらいました。(朝日新聞文化くらし報道部記者・田渕紫織)

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「ペンネームと同等なのか」

 「どちらの名前も本物の名前と思えなくなってきたんですよね」

 取材時には、確定申告を前に、源泉徴収票や領収証の山と格闘していた松川さん。結婚前の「松川」姓と結婚後の「三好」姓が混在する宛名を眺め、こうこぼしました。

 本業は哲学者。約半年前、ある市の公共施設から講師の依頼を受けて書類を書くとき、松川姓でもいいか聞くと、「大丈夫ですよ。ペンネームの人もいますから、何でも」と言われました。

 「『松川絵里』はペンネームと同等なのか」と衝撃を受けた。

「暮らしのなかで公私は分けられないのに」

 コンパクトな岡山の街では、仕事で知り合い松川姓を名乗った人とオフの日にばったり会うことや、プライベートだからと三好姓を名乗った夫の知人と後に一緒に仕事をすることも日常茶飯事です。

 「暮らしのなかで公私は分けられないのに、二つの名前を使い分けなければならないことに、無理を感じます」

 はんこも年賀状も、二つの名字を使い分けます。

 実は松川さんは婚姻届を出す前、3年以上、事実婚をしていました。生活上の不便はなかったといいますが、友人が亡くなった時に、「自分たちのどちらかに何かあったら、一体誰が、公的な夫や妻として認めてくれるんだろう」と不安に駆られたそうです。

もしもの時、考えて決断

 職場でも、親戚にも友人にも、「いつ結婚するの?」と聞かれ続けました。

 「『2人の間では夫婦同然と思っていたけど、周囲から見ると違うんだ』と、絶えず不安を抱えている状態に耐えきれなくなりました」

 自身も重い病気を患っており、常勤の仕事はできず、日常的に寝込んでいます。

 このままでは、仮に自分が意識を失って家族が治療方針などを判断しなければならないときも、夫でなくて大阪に住む高齢の両親の手を患わせてしまう。「自分が何も判断できなくなった時は、夫に判断を任せたい」と思っていました。

 夫と話し合い、2013年に法律婚をすることにしました。

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最終更新:4/27(金) 11:22
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