ここから本文です

「あいつ、スゲーむかつく」と言われる先輩にならないために

4/20(金) 7:00配信

@IT

 春ですね。人事異動や役職変更など、立場や役割が何かと変わる季節です。新入社員も入ってきます。リーダーになった、初めて後輩ができた人も多いのではないでしょうか。

自分なりの理想像を作ろう

 学生時代の部活やサークル活動などで後輩を持った経験があれば、何となく「こんなふうに接すればいいんだな」と分かるかもしれません。でも、仕事における「後輩との関わり方」は、学生時代とは少し違うかもしれませんね。学生のように年齢が1つか2つしか違わないとは限りませんし、仕事を教えなければいけませんし。

 「先輩業」を務めることに不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

 そこで今回は、初めて後輩を持つ若手社員が知っておきたい「理想の先輩像」と「振る舞い」です。

●「Tips」は役に立たない

 「理想の先輩像」や「振る舞い」というと、一般的には「自分が先頭になって模範を示そう」とか、「常にスキルを磨こう」とか、「後輩の話を聞いてあげよう」とか、「たまには飲みに誘ってみよう」とか、「仕事を教えるときは、『やり方』だけではなくて、『何のために』も伝えよう」とか、Tips的な話が多いのではないかなぁと思います。

 あ、近年は飲みに誘うよりも、ランチの方がいいんでしたっけ?

 もちろん、これらも大切だとは思うのですが、人はみなそれぞれ違うので、「こうすればいい」という一辺倒な正解は、あまりないような気がします。また、「あるべき理想像」も大切かもしれませんが、自分とかけ離れた理想は、なかなか実践できないことも多いものです。

 それならば、「大切なのはこれだよな」といつでも思い出せて、シンプルな「先輩の理想像」を自分なりに持っていた方がいいのではないでしょうか。

●自分なりの「先輩の理想像」を探せ

 例えば、私が「先輩の理想像」として真っ先にイメージするのは、新入社員時代の先輩です。個人的な話になりますが、しばしお付き合いください。

 当時私は、自動車会社で働いていました。

 所属された職場の同じグループに「竹内さん」という先輩がいました。名字が同じだったこともあり、竹内さんは私を下の名前で呼んで、気軽に接してくれました。そのおかげで、周りの社員からも「竹内兄」「竹内弟」と、まるで兄弟のように呼ばれ、居心地の良い環境を作ってもらえました。

 また、とても親切でした。分からないことは聞けば何でも教えてくれました。

 感謝しているのが、仕事以外の時間を一緒に過ごしてくれたことです。竹内さんは、よく飲みに誘ってくれました。いろんな話をしましたし、聞いてもらいました。酒の飲み方とか、周りの人との付き合い方とか、ずいぶんと教わった気がするなぁ。

 休日には、竹内さんが活動していた車のレースやラリーなどのサークル活動にも連れていってもらいました。会社と違う場に行くと、社内の違う部署の人がいたり、社外の人がいたりするんですよね。職場では出会わない人たちと話すきっかけができて、人間関係も広がったような気がします。

 新入社員、若手時代を過ごして、私にも後輩ができるようになったとき、振る舞い方のモデルとしたのが竹内さんでした。特徴を挙げると、「面倒見がいい」「おとこ気がある」「仕事ができる」「場を仕切るのが上手」みたいな感じでしょうか。「こういうことをしてもらったとき、うれしかったよな」をまねました(もちろん、これらの要素全てを私が持っているとは到底思えませんが)。

 今も、若い世代と接するときのロールモデルは竹内さんです。

 「理想の先輩像」の見つけるには、先輩社員の言動で「うれしかった」「楽しかった」「やる気が出た」といった特徴を挙げてみるといいでしょう。特定の1人ではなく、さまざまな先輩社員の「いいな」と思う要素をまとめてみるのも良い方法です。

 この記事を書きながら、若い頃お世話になった先輩たちを改めて思い出しました。「あのとき、○○さんにお世話になったなぁ」とうれしい気持ちになってきました。

●「あいつ、スゲーむかつく」から理想を探す

 でも、周りに理想の先輩や上司がいない人もいるでしょう。「あいつ、スゲーむかつく」と思った経験の方が多い方もいるはず。

 私にもあります。「話を聞いてくれない先輩」「理想は語るけれど、口だけで何もしてくれない先輩」「ちゃんと説明もしないで、仕事を丸投げする先輩」「後輩よりも顧客に肩入れする上司」「残業したのにごまかそうとする上司」「とにかくストレスをかけて、人を動かそうとする上役」など、「こういう先輩や上司はイヤだなー」「何であんな振る舞いをするんだろう?」と思う人にもたくさん会ってきました。

 もし周りに「理想の先輩」がいなければ、「その、逆を探す」というのも良い方法です。

 例えば、「話を聞いてくれない先輩はイヤだ」の裏には、「先輩に話を聞いてほしい」や「話を聞くって大切だな」といった気持ちがあるはずですし、「理想は語るけれど、口だけで何もしてくれない先輩はイヤだ」の裏には、「言動一致が大切」という理想があるはず。

 「ちゃんと説明もしないで、仕事を丸投げする先輩はイヤだ」「後輩よりも顧客に肩入れする上司はサイテー」「残業したのにごまかそうとするなんてふざけんな」「とにかくストレスをかけて、人を動かそうとするなんて馬鹿じゃないの?」の裏にも、「仕事は相手が分かるように説明した方がいい」「まずは、社内のチームが大切」「やった仕事はちゃんと評価したい」「みんなが楽しく働けた方がいいよね」などの理想があるはず。

 「あいつ、スゲーむかつく」といった感情はネガティブに見えますが、その裏には「本当はこうだったらいいのにな」という理想があります。ネガティブな感情の「逆」から、「理想の先輩像」を探してみるといいでしょう。

●自分が「良いな」と思うことを体現するだけでいい

 「理想の先輩像」なんていうと、「あれをすべき」「これをすべき」と、何となく気負ってしまいますが、このように見てみてみると、理想は「自分の外」にあるのではなく、何かを見たり、聞いたりしたときに、「あのとき、うれしかったな」「○○さん、すごいな」と感じたり、思ったりした、「自分の中」にあることが分かります。

 もちろん、理想通りにいかないこともあるし、うまくできないこともたくさんあるとは思います。でも、別段すごいことをやろうとしなくてもよくて、自分が「良いな」「うれしいな」「こういうことが大切だよな」と思うことを、感じることを、周りの後輩に体現するだけでいいんでしょうね。

 「理想の先輩像」を体現するためにも、まずは、皆さんが「良いな」「うれしいな」と思える状態でいること。そのためにも、楽しく働くこと。その姿を見せることが、後輩にとっては一番の刺激になるのではないかと思います。

 新年度を機に、一緒に頑張りましょう。

●筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。

最終更新:4/20(金) 7:00
@IT