ここから本文です

新任執行役員の半分は派遣社員から登用

4/22(日) 15:02配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 若山陽一UTグループ社長兼CEO(4)

 ――新中期経営計画(2017年3月期―21年3月期)の数値目標は変わりませんか。

 変えていません。5年で3倍に成長する計画です。年25%の成長を実現するプランですが、2年目が終わった時点で年40%ずつ成長しているので、当初の計画より1年前倒しの勢いで進んでいます。

 我々のビジネスは、収穫逓増の法則が働くIT(情報技術)やゲームなどとは違います。1人ひとりによる各職場での積み重ねです。それで4割成長は結構な伸びだと思います。

 それだけ需要がかなり強いんですね。毎月400人ずつ職場が広がっている状態ですから、うっかりすると会社の理念が薄れやしないかと危惧しています。常に原点回帰をはかる努力を怠れません。

 ――「はたらく力で、イキイキをつくる」が企業理念でしたね。

 その理念で一貫しているつもりですが、本当に社員1人ひとりが自分の成長を実感できているのかという不安をぬぐい切れないんです。理念と現実とのギャップが広がると、会社はうまく行かないと思います。このため、いろんなことをやっています。

 例えば「エントリー制度」というのがあります。派遣職場で働いている社員の人たちが手を挙げて、認められれば現場の監督者になれるという制度です。

 現場監督者の経験者は、執行役員にエントリーできます。

 ――現場から執行役員にエントリーする人はどのくらいいるのですか。

 多いですよ、今年度は執行役員の約3倍の90数人がエントリーしました。

 執行役員は前期が31人で、4月から36人になりました。31人のうち5人が再任されず、10人が新たに登用されました。そのうち5人が派遣職場からで、残り5人は社外からです。

 ――再任されなかった人は、がっくりしませんか。

 また社員に戻って再挑戦していいんです。明るくやっています。暗くやると、じめじめしますからね(笑)。経験を生かして、来年、また頑張れよとね。

 中には、毎年選ばれないのですけど、ずっとエントリーする人もいます。参加することに意義があるみたいな人もいるんです。

 ――明るくやれるのは社風でしょうか。

 そうだと思います。カラッとしています。社風は大事ですね。

 もう1つ、執行役員は私も含めて全員が「バック・ツウ・ザ・ファクトリー」といって、工場に研修に行く制度があります。

 今年が4回目で、例えば私は4月中旬に、岩手県のお客様の工場で2日間、勤務させてもらいます。現場の派遣社員たちが、どんなふうに働いて、どう評価されているのか、短期間ですが、ともに体験して、ギャップを少しでも埋めたいためです。

 ――社長もやる必要がありますか。

 逆に私がやることに意味があると思います。なんだかんだと言うけど、社長は偉そうに言うだけじゃないかと、なりかねないのでね。(笑)

 実際に、こんな問題があるんだなとか、ああ言ったけど全然伝わっていないなとか、様々なことに気づきます。

――これから製造現場は、AI(人工知能)やIoT(もののインターネット)などで、急速に変わると思いますが。

 当社も、研修センターで、ロボット・ティーチングといって、工場でロボット全体を操作するオペレーターの育成をしています。

 新しい技術によって、無くなる仕事もあれば、必要になる仕事も生まれます。変化に適応する教育を会社としていかにやっていくかが重要で、きちんとやっているつもりです。

 ――製造現場に派遣している約2万人の社員のために、いろんな方策が必要なのですね。

 派遣会社では珍しいですが、派遣職場で働いている社員にキャリア面談を行っていて、のべ9000人に終えました。

 社内に認定キャリアカウンセラーというのが500人近くいまして、派遣先で1人ひとりと面談します。それぞれのキャリアビジョンをアドバイスしながら一緒に作り、キャリアシートに書きこむ作業をしています。

 これも、ウエブベースでいつでもできるようにする必要があると思っています。

 ――派遣先企業への派遣社員の転職にも前向きに対応しているそうですね。

 「NEXT UT」といっていまして、お客様が求めて社員が望めば、どうぞ採用してくださいと、手数料をいただいて転籍を進めています。

 これも増やそうと10%を目標にしています。2万人の10%ですから2000人です。中計でやりたいと思います。

 当社を通じてソニーやパナソニックの社員になる人が増えるのは面白いでしょう。お客さんになったら、うちを使ってねと。(笑)

 社員の人たちが自分の可能性を広げられることが、当社の事業価値だと考えています。

 ――中計で新しいビジョンを掲げていますね。

 「日本全土に仕事をつくる」ですね。社員向けのビジョンはもう少しリアリティーがあって、現場で働く社員の給料を5年間で20%上げるというものです。

 言った後で、大丈夫かなと心配になりましたけど(笑)。派遣単価をお客様と交渉して上げていただいたら還元するというやり方で、ここ1、2年は非常にうまく進んでいます。

 ――リアルでいいですね。

 これは私と社員とのコミットメントなんです。やらなければならなりませんが、社員に言っているんです。給料は何もせずに勝手に上がるものじゃないよと。

 皆さんが努力しないと、お客様は派遣単価を上げてくれない。今より生産性を2割上げる仕事を自分で考えてやってください。そうしたら会社はお客様としっかり交渉します。

 だからビジョンを一緒に実現しようよ。それをカラッとやっているんです。

(若山陽一氏のインタビューは今回で終わりです)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:4/22(日) 15:02
ニュースソクラ

あわせて読みたい