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「価格破壊者」だった大塚家具がニトリに敗れた理由

4/23(月) 6:10配信

ITmedia ビジネスオンライン

 家具チェーンで勝ち負けに明確な差がついた大塚家具とニトリ。ニトリを運営するニトリホールディングスは2018年度2月期決算で、31期連続増収増益を達成した。一方、大塚家具は17年12月期単独決算で最終損益が72億円の赤字だった。

【グラフ】新設住宅の増加とともに大塚家具は成長してきた

 大塚家具は店員が丁寧な接客で高級家具を販売するというイメージが強いが、創業時は家具業界の価格破壊者だった。その姿はかつてのニトリと重なるが、いったいどこで大きな差がついてしまったのだろうか。

●安売りからスタートした大塚家具

 大塚家具の創業者である大塚勝久氏(現・匠大塚代表取締役会長)は1969年に家具やインテリアを販売する「大塚家具センター」を設立した。大塚家具のWebサイトには「創業当時から、問屋などの中間業者を介さずに、直接取引できる工場を開拓。大規模な倉庫を持って大量に仕入れをすることで、『最も競争力のある価格』での販売を実現しました」とある。

 楽天証券経済研究所長の窪田真之氏は創業当初の大塚家具のビジネスモデルをこう説明する。

 「当時、家具は『原則国内産』『手作り』で高価格だった。卸しを通じて仕入れた家具店やデパートで買うのが普通の時代に、大塚家具は価格破壊を起こした。郊外の大型店舗に、メーカーから直接買い付けた家具を並べて安売りする戦略で成長したが、顧客を奪われた家具流通業界からは、怨嗟の声が上がった」

 大塚家具は順調に成長を続け、80年に株式を公開した。92年から会員制度を導入して、ショールームで丁寧に接客するスタイルを定着させた。90年代後半から高級家具も数多く取り扱うようになり、「大塚家具=高級家具が中心」というイメージが広まった。このビジネスモデルには合理性があった。国土交通省の調査によると、91年の新設住宅着工戸数は約140万戸、96年には約160万戸まで増加した。家具のまとめ買い需要とともに大塚家具は成長した。

●安売りからスタートしたニトリ

 ニトリは、67年に「似鳥家具店」としてスタート。72年に「似鳥家具卸センター株式会社」を設立。当時の状況を、創業者である似鳥昭雄氏(現・ニトリホールディングス代表取締役会長)は自著『運は創るもの ―私の履歴書』(日本経済新聞出版社)で次のように説明している。

 「もともと安売りのイメージを出すためだけに『卸センター』を掲げていた(中略)。きちんとした名前でまっとうな商売にしようと思い、『詐欺』のような看板を下ろした」

 当時は、倒産品を仕入れて安く売る業態だったという。しかし、その後は「海外商品の直輸入」「家具メーカーの実質子会社化」「海外自社工場の稼働」と着実に製造小売業としての地歩を固めていった。

 大塚家具のビジネスモデルに陰りが出てきたのは2000年代後半からだ。新設住宅着工戸数が減少するにつれ、国産家具と輸入家具の市場が縮小し続けた。住宅の新築にあわせた家具のまとめ買い需要は減少し、消費者は家具を必要なときに必要なだけ購入するようになった。そのニーズをとらえたのがイケアやニトリだった。窪田氏は潮目の変化をこう解説する。

 「かつて『安かろう悪かろう』だった中国製などの家具の品質が向上してきた。価格も手ごろなので『家具はニトリやイケアで十分』と考える消費者が増えてきた」

 家具市場は「高品質で高価格」と「品質がそこそこで低価格」に二極化した。高価格帯の需要はそれほどあるわけではない、

 もう1つの変化は、「トータルコーディネート」という考え方が登場したことだ。ソファー、テーブル、本棚などまとめて部屋づくりを提案するというスタイルだ。イケアやニトリは手ごろな価格で部屋作りを提案し、それが受け入れられていった。地方ではなく、都市部に住む住民が増えた結果、手狭な住宅では高級な大型家具ではなく、コンパクトな家具が支持された。

●中間マーケットは存在するか?

 これまで大塚家具が取り込んでいた顧客が低価格帯に流れ始め、業績は徐々に悪化していった。高級化路線を選んだ間違いについて窪田氏が解説する。

 「もともとマスマーケットではない高級家具市場を上場企業が手掛けることが間違いのもとだった。大塚家具は仕入れの方法や店舗設計が高級向けになっている。大塚久美子社長は高級でなく、安売りでもない中間マーケットを狙う方針を出してるが、そもそもマーケットボリュームがとても小さい」

 従来の路線を継続するかを巡り、大塚久美子社長は創業者である大塚勝久氏と対立。見事勝利し、15年から新体制をスタートさせた。「高級」というイメージの象徴だった会員制を廃止し、顧客層の拡大を狙っているが再建の道のりは険しいだろう。

●ビジネスモデルが利益率の差を生む

 ビジネスモデルが時代に合わなくなってきたことに加え、利益が出にくい事業構造であることも影響している。それは、大塚家具がニトリと比べてナショナルブランドを扱う比率が高いことに起因している。

 まず、一般論として、小売店はナショナルブランドの商品を、卸業者を通して仕入れる。ナショナルブランドの商品はどこでも買えるので、価格競争に陥りやすい。全体として、利益率がどうしても低くなる。

 一方、現在小売業で成功しているのは「製造小売業」と呼ばれる業態だ。自ら企画した商品(プライベートブランド)を自社工場で生産し、卸を通さずに自社店舗で販売する。自社工場を持たなくても、提携先の工場の品質や生産計画に深く関与し、ほとんどを自社で買い取るスタイルもある。自社で在庫を抱えるリスクはあるが、ナショナルブランドを扱うより利益率は高くなる。ニトリやユニクロを運営するファーストリティリングを筆頭に、小売業で成長しているのはこの形態をとっている。自社開発したオリジナル商品なので差別化が容易になるメリットもある。大手スーパーやコンビニチェーンでもプライベートブランドを積極的に開発しているのは、利益率を向上させるためだ。

 ニトリは商品の約90%がプライベートブランドだ。一方の大塚家具は「オリジナル商品(プライベートブランド)の売り上げは、17年度における売上高の約6割を占める」(広報担当者)という。

●経常利益率に注目すべき理由

 大塚家具は中間工場を通さない直接取引や、計画発注による大量取引で製造原価の低減などに努めている。前述したように、プライベートブランドの開発も積極的に進めている。だが、ニトリとの力量の違いは数字に如実に表れている。

 小売業は基本的にモノを仕入れて販売する業態だ。仕入れ値と売価の差額が利益になる。利益率は最も重要な指標となる。

 企業の利益には本業のもうけを示す営業利益、営業利益に本業以外の活動で得られる損益を加えた経常利益、経常利益から税金などを差し引いたあとに残る純利益がある。

 窪田氏は「小売業の強さを比較するときには売上高経常利益率に注目すべきだ」と指摘する。ニトリホールディングスの18年2月期における連結ベースの売上高経常利益率は16.6%と高水準を維持している。一方、大塚家具の17年12月期における非連結ベースの経常利益は約51億円の赤字なので、売上高経常利益率はマイナス12.5%となる。両社の差は歴然だ。

 かつて同じ「安売り」からスタートしたニトリと大塚家具。両社の明暗を分けたのは、時代にあったビジネスモデルを迅速に構築する力量の差にあったと言えそうだ。