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「高速バス通勤」の実態とは 住宅街から座って都心へ 理想的スタイルは現実的か

4/23(月) 6:30配信

乗りものニュース

アクアライン経由の通勤高速バスは「地下鉄並み」の本数

 大都市の郊外から都心への通勤は電車が一般的かもしれませんが、なかには高速バスを通勤に利用する人もいます。そのような「高速バス通勤」をする人の姿が最も目立つ路線群のひとつが、千葉県の木更津市や市原市などから東京湾アクアラインを経由して東京や神奈川に向かう各路線です。

【図】こんなにある! 房総と都心を結ぶ高速バス路線

 木更津から海を渡って通勤といえば、一定の年齢の方の中には、『男女七人秋物語』(1987年に大ヒットしたテレビドラマ)で、明石家さんま扮する今井良介が川崎の会社までフェリー通勤しており、船上で様々なシーンが展開されたことを覚えている人もいるでしょう。1997(平成9)年にアクアラインが開通し、フェリーは廃止され代わりに高速バスが運行を開始しました。都心へ直通する便利さが人気を博し、路線新設や増便を繰り返しています。

 たとえば、東京湾アクアラインの木更津金田ICにほど近い木更津金田バスターミナルからは現在、平日午前7時台の1時間の間に東京駅行きの高速バスが18便も発車します。平均すると約3分間隔ですから「地下鉄並み」です。さらに、品川、新宿、川崎、横浜行きなども発車します。

 木更津金田~東京駅間の所要時間はおよそ40分、運賃は1250円です。一方の鉄道は、平日朝7時台にJR木更津駅から発車する東京方面の列車は8本(うち3本は千葉駅止まり)で、所要時間は約1時間22分(内房線・総武快速線直通列車の場合)、運賃は1317円(IC利用の場合)となっています。

 千葉県から東京都心へは、千葉市(内陸部および幕張地区)、佐倉市(ユーカリが丘など)、浦安市などからも、通勤利用をおもなターゲットにした高速バスが運行されています。このほか、たとえば神奈川県からは、東急田園都市沿線の住宅地から渋谷駅へも、朝のラッシュ時に高速道路を経由して運行する直通バスがあります。

東京以外でも見られる「高速バス通勤」 回送を有効利用した例も

 東京以外の都市でも、通勤利用をおもなターゲットにした高速バス路線は数多く運行されています。たとえば、愛知県豊田市や三重県桑名市郊外の住宅地から名古屋都心、京都府京田辺市の住宅地から京都および大阪都心などへの路線です。このほか、山形と仙台のように県庁所在地どうしを結ぶ都市間路線でも、鉄道より速くて運賃も安いことから通勤利用が目立つ路線もあります。

 神戸市の郊外にあたる垂水区の住宅地から、都心の三宮に向かう路線も、増便を繰り返している人気路線ですが、この路線は誕生の経緯がユニークです。

 山陽バス(当時は山陽電鉄の自動車営業本部)は1998(平成10)年、明石海峡大橋の開通と同時に三宮と徳島を結ぶ高速バスの運行を開始しました。同社の営業所(車庫)は垂水区にあるので、そこから三宮のバスターミナルまでバスを回送したうえで、徳島行きとして運行していました。営業所の周囲は新興住宅地で三宮に通勤する人が多く住んでおり、同社の路線バスと鉄道を乗り継いで通勤をしていたので、「どうせ車両を回送するなら、運賃をいただいて営業運転しよう」と考えたのが、誕生のきっかけといわれています。乗り換えが不要なうえ、リクライニングシートに必ず座れることから予想外の人気となり、高速バス車両をわざわざ増備して増便を繰り返す「ドル箱路線」に成長しました。

 この路線のほか、前出の豊田市、桑名市などの路線は、郊外の住宅地内できめ細かく停車してから都心へ向かいます。一方、木更津金田バスターミナルのように、巨大な「パークアンドライド駐車場」が乗り場に隣接し、マイカーから高速バスへの乗り換えに便宜を図っているケースも。環境のいい郊外に住み、自宅の前から、あるいはマイカーでバスターミナルまで向かい、高速バスに乗り込めば、あとはリクライニングシートでくつろいでいるうちに都心へ到着している――理想的な通勤スタイルのひとつと言っていいのではないでしょうか。

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