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【木内前日銀政策委員の経済コラム(14)】 日銀のETF 無傷の正常化はありえない

4/24(火) 16:01配信

ニュースソクラ

現実的な選択は新たな受け皿機関への売却

 日本銀行が先行き金融政策を正常化させていく中で、一つの焦点となるのは、大量に買入れたETF(指数連動型上場株式投資信託)の扱いだ。

 日本銀行が保有するETFは、既に簿価で19兆円超にまで達しており、自己資本の8兆円と比べて非常に大きい。このもとでは、株価がひとたび大きく下落すれば、日本銀行は一気に経常赤字あるいは債務超過の状態に陥るリスクがある。

 ETFの処理のスキームとしては、
(1)株式市場に悪影響が及ばないように極めて慎重に市場で売却していく
(2)株価が下落した際には、政府に損失を補てんしてもらうように取り決めをしておく
(3)新たな受け皿機関に売却し、日本銀行のバランスシートから外す、の3つが考えられる。このうち第3がより現実的ではないか。

 この第3の選択肢は、ETFを市場で売却することなしに、日本銀行のバランスシートから外すスキームだが、それには、政府の協力が必要となるだろう。

 参考となるのは、2002年に設立された「銀行等保有株式取得機構」ではないか。銀行等が持ち合い株解消のため、短期間で大量に保有株式の売却を市場で行うと、株式市場に悪影響を及ぼし、銀行経営を不安定化させる可能性があることから、それを回避するための受け皿としての役割を担っている。株式を銀行等から市場を通さずに買取り、十分な時間を費やして市場に売却していくことを主な業務としている。

 買い取り資金は、政府保証付きでの銀行からの借り入れや、銀行等保有株式取得機構債の発行で調達する。買い取った株式を市場に売却して損失が出た場合には拠出金で穴埋めするが、拠出金を超える損失が出ると公的資金で穴埋めすることになる。

 この銀行等保有株式取得機構は民間銀行とその株式持ち合い先の企業を対象とする枠組みであることから、当然のことながら日本銀行がここにETFを持ち込むことはできない。しかし、それをモデルにして新たな機関を新たに作ることはできるだろう。

 その場合、例えば、日本銀行がその新しい機関に拠出し、政府保証付きでの銀行からの借り入れや、同機関の債券発行で資金を調達したうえで、日本銀行からETFを買い取り、それを相応の時間をかけて処分していく。処分の過程で拠出金を超える損失が生じた場合には、公的資金で穴埋めすることになる。

 日本銀行のETF買入れの基本要綱では、ETFを売却する際には、信託銀行を通じて市場で売却することが求められていることから、この基本要綱を改正して、市場を通じないで新たな機関に簿価で売却できるようなルールを新たに作ることも必要になる。

 このスキームでは、日本銀行は自らの失策の後始末を政府に要請することになり、また国民負担が生じるリスクも完全には排除できない。その結果、日本銀行は国会であるいは国民からの批判に晒されることになり、またそれが日本銀行法の改正を通じた独立性の制限へと繋がっていく可能性も残されるだろう。

 ただし、大量のETFの買入れをいたずらに進めてしまった結果、日本銀行がダメージを受けることなく無傷で正常化を進めていくことなどは、もはや考えられないのである。

■木内 登英(前日銀政策委員、野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
1987年野村総研入社、ドイツ、米国勤務を経て、野村證券経済調査部長兼チーフエコノミスト。2012年日銀政策委員会審議委員。2017年7月現職。

最終更新:4/24(火) 16:01
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