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航空を超えた「ANA経済圏」をつくる

4/30(月) 15:02配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 片野坂真哉ANAホールディングス社長(1)

 ANAは今やJALをしのぎ、日本を代表するエアラインである。30年余り前にリスクを取って進出した国際線が成長をけん引する。さらにピーチ・アビエーションとバニラ・エアの経営統合をこのほど決めて、LCC(格安航空会社)でも攻勢を強める。ANAホールディングスの片野坂真哉社長がこれからのANAグループを語る。(聞き手は経済ジャーナリスト、森一夫)

 ――まず世界の航空業界の長期的な展望から、お尋ねします。

 一番大事なのは航空需要の見通しです。過去から景気や戦争、テロなどで浮き沈みがありましたが、基本的に成長してきました。今後も波はあっても堅調に伸びていくだろうと思います。

 特にここ2年間は、世界景気はいいですね。米国の景気もいい。それと航空需要は連動しますので、旅客も貨物も伸びていくであろうと、これから先も非常にポジティブに見ています。

 その中で我が国も企業がグローバル化しています。昔から海外出張の定番でした電機メーカーや商社などに加えて、最近は保険会社やビールメーカーなどが海外でM&A(合併・買収)をしています。このため日本企業の海外出張が全世界的に増えています。

 さらに国を挙げて力を入れている訪日外国人の増加があります。2020年に4000万人、2030年には6000万人に増やそうという高い目標が、着実に実行されています。ですから世界も我が国も航空需要は伸びていくと見込んでいます。

 ――環境は非常にいいわけですね。

 ただし航空会社は飛行機を買ってパイロットをそろえれば、やれるビジネスなので、新規参入も多いんです。世界の各エアラインのサービスも似たり寄ったりですよね。

 これが基本的な航空会社の形ですが、技術イノベーションとも関連して、マーケティングのあり方が変わりました。我々航空会社のコールセンターが電話で予約していただく時代から、数年前からインターネットで予約を受けるように変化してきました。

 そうなると私たちのホームページがものすごく大事になります。プラットホームと言いますか、ここを通じて航空券や旅行を売る従来のパターンから広げて、例えばANAグループの保険とか、医療、健康関連のサービスなども売れるわけです。

 2022年度までの5年間の「ANAグループ中期経営戦略」を2月に発表して、航空事業で伸びるのに加えて、「ANA経済圏」を作っていこうという方針を出しました。

 ヨーロッパのライアンエアーというLCCの社長が「我々の会社の事業はプラットホームである。そこに航空会社がぶら下がっているだけだ」と、的を射た話をしています。その意味で、航空は面白い業界になって行くのではないですか。

 ――「ANA経済圏」ということは、プラットホーム型のビジネスに変わるのですか。

 流れはそうですね。私たちにはフルサービスキャリア(FSC)のANAとLCCがあるわけです。航空事業は17年から5年後の22年に向けて、飛行機も約40機増やして成長していきます。

 しかしもう一方で、やはりマーケティングで新しいお客様のニーズをとらえて行かないと、出遅れてしまうとの危機感を持っています。

 例えば、中国人の方は現金を持たずにスマホ決済のアリペイでいろんな物を買っています。私たちも従来、電子マネーの世界を作ってきたわけですが、それをはるかにしのぐ勢いで電子ペイメントが進んでいます。我々も研究していきます。

 ――日本人は現ナマ主義が根強いですが、中国やアジアでは驚くほど代わっていますね。

 中国の方は明治神宮などにお参りしても、おさい銭を出せないんですね。おカネを持っていないので。

 私はスマホでおさい銭を受けたらどうかと提案したくらいです。紙が出て、おみくじになっていると、なおよしです。私どもの関連会社のANA Xで特許が取れるアイデアとして、やってみたらどうかとも思いますけどね。

 ――神社にANAの電子さい銭箱がで きたら面白いですね。

 これからは、そういう新しい発想でやっていかないと大変だと思います。

 ――目指すのは「世界のリーディングエアライングループ」だそうですが、これは具体的に何を意味するのですか。

 私どもグループの長期的な経営理念は「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」で、ここに「世界」が入っているでしょう。

 もう1つ、中期的な経営ビジョンがあって、「お客様満足と価値創造で、世界のリーディングエアライングループを目指します」となっています。

 13年にホールディングス体制になった時に作ったビジョンで、その前の「アジアでナンバーワン」から「世界の」になったのです。

 今度の中期経営戦略では、少し踏み込んで、20年にはこの経営ビジョンを達成して、次のビジョンを作ると発表しました。

 では何をもって「世界のリーディングエアライングループ」と言えるのか。それは、旅客数で世界15位の我々が、ナンバーワンになるとかベストテン入りするとか、そういったことではなかろうと思います。

 やはり我々の知名度が国際的に上がって、世界で存分に成長できることでしょう。

 以前は知名度が低かったので、努力しました。最近、機内を見ればわかりますけど、外国の方が本当に多いんです。ANAの知名度は低いという調査もありますが、日本に来る乗客の4割近くは外国のお客様というというのはざらです。

 この勢いで世界的にネットワークを広げていきます。それに合わせてグループ会社も、80社近くありますけれども、グローバルで成長していこうという思いが強いのです。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:4/30(月) 15:02
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