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「世界の常識」となったキャッシュレスを急げ

5/5(土) 14:01配信

ニュースソクラ

現金を扱うコストは大きすぎる

 中国に出張して感じるのは、いまさら何を驚くのかと笑われそうだが、中国のキャッシュレス社会の広がりだ。大都市の街角で見かける風景は、中国人がコーヒー、ハンバーガー、コンビニなど少額決済からレストラン、デパートでの支払いにいたるまでQRコードにスマホをタッチするだけで済ますことだ。中国人が日本観光に来て、銀聯カードこそ普及したが、スマホ決済ができずに怒っているという話ももっともだ。

 日本では、クレジットカード、スマホなどのタッチ型決済などのキャッシュ決済比率は18%程度なのに中国ではその逆で現金決済が約20%しかない。

 中国のスマホ決済をリードするのはアリババのアリペイとテンセントのWeChatPayである。前者が54%、後者が38%のシェアを持つという寡占状態である。アリペイの運営会社は非上場であるが、株式時価総額は15兆円程度とシティーやHSBCに迫っているという。

 またオンラインショッピングのアリババが「独身の日」(独身=1人なので11月11日)を設けてセールをすると、24時間のうちに邦貨換算で2兆7千億円という驚異的な売り上げを記録したのは記憶に新しい。こうしたオンラインショッピングもアリペイのスマホ決済で対応するので決済額は膨れ上がる一方である。

 アリペイは単なる決済のビークルに止まらずスマホ画面で7%の金利が付くMMFを買うことができるほか、保険・証券の購入や個人・中小企業向けのローンもユーザーの決済利用額、MMF購入額などでスコアリングして供与している。何せ中国全土で6億人にあたる個人情報を持っているのでビッグ・データ解析はお手の物だ。明確にスマホ画面上で総合金融機関を目指す戦略を取っている。情報漏洩で米国議会から叩かれたフェースブックが銀行業を営んでいるようなものなのだ。もろ手を上げて賛成というわけではないが、決済情報を利用した一つのビジネスモデルではある。

 中国のスマホ決済に対して欧米ではクレジットカードのタッチ型決済が進んでいる。ロンドンの地下鉄の駅で多くの人がクレジットカードをタッチするだけで改札ゲートを進んでいく姿に驚いた覚えがある。日本のスイカやナムコもタッチ型ではあるが、国際標準モデルではないガラパゴス型モデルで、他国で通用する技術ではない。元々、英国などはスーパーで買い物をする際も、お婆ちゃんが数ポンドでも平気で小切手を切っていた。2~3ポンドでもカード決済は当たり前だ。

 日本の現金信仰が根強いのは承知であるが、外人観光客がWiFiネットワークの貧しさとキャッシュ決済の横行を不思議がるような国際情勢から縁遠いわが国のキャッシュ社会は見直さなくてはいけない。メガバンクや地方銀行が日銀の量的緩和、マイナス金利政策に影響で、資金利ザヤが大幅な圧縮を続ける中で、人員・経費の圧縮を目指しているのであればなおさらである。

 正確に計算したわけではないが、お札や硬貨のいわゆるハンドリングコストは膨大なものであろう。商店が売り上げを夜間金庫に入れる、銀行がそれを数えなおして、過剰な現金は現金センターに集めてさらに日銀に持っていき当座預金に入金するのである。日銀は日銀で偽札が混じっていないか、よれよれになった古いお札を交換する、などの作業を経て再び銀行に必要に応じて現金を受け渡す。このプロセスだけでもコスト削減は眼に見えて大きいものである。

 現金社会の日本がキャッシュレス社会に踏み込むには、中央銀行がデジタル貨幣を発行することも考慮に値する。個人個人が日銀に預金口座を持ち、そこの預金を引き出す形で商品購入やサービスを受けた時に決済するのである。もちろん、中央銀行が個人情報を持つことになるだけに厳格な管理を必要とすることは言うまでもない。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:5/5(土) 14:01
ニュースソクラ