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ANA ヒューストンなど新・国際路線がはなから好調

5/6(日) 15:04配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 片野坂真哉ANAホールディングス社長(2)

 ――国際線を軸とする成長戦略は、軌道に乗っているのですか。

 発着枠を少し多くもらえたこともありましてね。私が社長になった2015年頃から、ANA(全日本空輸)が頑張ってくれて、新規路線を次々と開いてきました。

 米国のヒューストン、ベルギーのブリュッセル、中国の武漢、カンボジアのプノンペン、マレーシアのクアラルンプールなどです。こうした路線は最初からいいんです。

 社内にはもともと、ニューヨーク、ロサンゼルス、フランクフルト、ロンドン、パリといった大どころは押さえた。これからはセカンダリ―・マーケットだという議論がありました。

 実際にヒューストンに飛ばしたら、はなから利用率が高くていいわけです。休止していた羽田―シドニー線も久々にやりまして、これもこの冬の期間に、利用率が9割でした。

 世界の市場はまだまだ可能性があると思いますね。しかしリスクは常にあります。景気変動は当たり前で、アイスランドの火山噴火、タイの水害、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザ、アフリカのエボラ出血熱と、一杯あります。

 ――これからも何か起きそうですね。

 必ず起きます。保護主義による貿易戦争もブレーキになる。そうしたことを意識しながら、国際線で成長する戦略をANAもLCC(格安航空会社)も追求します。

 このたびLCCのピーチ・アビエーションとバニラ・エアを統合して中距離に出ると発表したのもその一環です。

 ――以前からLCCに積極的でしたね。

 日本で初めてLCCをつくったのは当社です。ピーチ・アビエーションがそれで、ヨーロッパのLCC大手、ライアンエアの創業者からアドバイスをもらいながら、関西国際空港に設けたのです。

 1社で十分だったのですが、マレーシアのエアアジアのトニー・フェルナンデスCEO(最高経営責任者)と一緒にやろうという話になって、エアアジア・ジャパンをつくりました。しかし経営方針が合わず、別れて自分たちで成田国際空港に設けたのがバニラ・エアです。

 ピーチは最初から順調で利益剰余金を積み上げる会社になりました。成田を拠点とするバニラは競争が激しくて赤字でしたが、昨年度に黒字になりました。このタイミングをとらえて両社を統合することにしたのです。

 2社の間でいがみ合いが生じるのではないかと懸念されましたが、今のところ起きていません。バニラのパイロットたちも新しい世界に行こうと前向きです。中距離に飛べるようになれば、職域も広がります。何としても成功させたいですね。

 私の考えでは、フルサービスキャリア(FSC)とLCCとはお客様が分かれていますので、両方をやっていかないと幅広い需要に応えられないと思います。

 例えば、お客様は会社の出張ではFSCを利用して、プライベートや定年退職後に家族で旅行する場合には、LCCでいいとなります。お客様と生涯お付き合いするには、両方必要だと考えています。

 ――ピーチとバニラは統合により中距離の路線を広げていくわけですね。

 そうです。それとセットで、統合して無駄なコストの削減や、パイロット不足への対応も進めます。乗員養成も1社でやった方が効率的なので、統合を決めたのです。

 路線は、関空と成田からそれぞれ国内線と国際線をやっていて、ダブりは3路線しかありません。1足す1が3くらいの力になります。

 どちらも今、地方創生に貢献しています。例えば、ピーチは千歳空港から台湾や、沖縄からタイのバンコクに飛んでいます。

 バニラはどこもやらなかった成田―奄美大島の路線をやっています。年間10万人が行くようになって、地元に30億円から40億円の経済効果をもたらしました。バニラは何とフィリピンのセブ島にも飛んでいます。

 私たちのANAは市場予測をして石橋をたたきながら堅実にネットワークを広げるような感じですが、LCCはのびのびと決めています。駄目だったら引きあげるというやり方ですね。

 ――カンボジアのプノンペンに行くANAの路線はどうですか。

 ほとんどの会社はアンコールワットのあるシュムレアップ空港に就航しています。そこをあえて首都のプノンペンを選んだのですが、意外なほど乗っていただいています。つまり出張が多いんですね。観光客もプノンペンからシュムレアップに行く人がいて順調です。

 私はジャスト・フライと言っていますけど、鉄道のように線路を引く必要がありません。空港はありますから、そこへ飛べばいいんです。駄目なら撤退すればいい。

 その意味で私たちはいろんな可能性に向けてチャレンジする必要がある。私自身の考えでは、なるべく新規路線をやろうと思っています。

 ――LCCを積極的に伸ばしていますが、フルサービスのANAの客を食うことになりませんか。

 カニバリゼーション(カニバリ)の問題ですね。ヨーロッパで起きていますね。私がIR(投資家向け広報)で回ると、投資家からLCCがフルサービスを食うのでないかと質問されます。これには実績を見せて、納得してもらっています。

 ――LCCが国際線の中距離に積極的に出てくると、いかがですか。

 カニバリが起きているかどうかはスーツ族が乗っているかどうかでチェックできます。LCCは今のところ、仕事で乗る方に便利な乗り継ぎの面倒を見ていないんです。バゲージを最終目的地までそのまま運ぶ、フルサービスのネットワークのサービスを、LCCはやっていませんので、しばらくカニバリは無いような気がします。

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:5/6(日) 15:04
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