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オタク女子の「お布施学」 オタク経済を動かす“覚悟の浪費”とは?

5/8(火) 8:40配信

オリコン

  昨年8月発売の『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(小学館)という本が、「オタク女子のリアルな生態が描かれている」としてSNSで話題となった。そこに登場するのは、アニメやマンガ、同人誌や商業BLといったいわゆるアキバ系文化、さらにはアイドルの追っかけやホスト通い等々、自分の“推し”にお金や時間を“浪費”する女性たちの赤裸々な姿。そんな、いわゆるオタク女子の“お布施”が、現在のコンテンツ産業を動かしているのだという。果たして、オタク女子たちを突き動かす“覚悟の浪費”の心理とは? その実態を探ってみた。

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■オタク女子は身の回りにいる!? 推しへの浪費は“愛”

 ここで言う“お布施”とは、「葬儀や法事の際に僧侶に渡す謝礼」のことではない。アニメやアイドルなど、自分の好きなジャンル(推し)の関連グッズを購入したり、イベントに参加したりする一連の消費行動のことを指す“ネットスラング”だ。宗教的な意味合いはなく、推しの作品やキャラに浪費する姿が一種“信者”のようにも見えるとされ、そう名づけられたようだ。

 2010年代、オタク文化が“一般化”され日本の主流コンテンツとなると、世の男たちは自身の内に潜む“オタク性”を社会に発信するようになった。そして昨今、時代は一歩進み、オタク系女子であることを告白できる土壌が築かれつつある。

 『浪費図鑑』では、そうした女性たちの“オタク心理”が事細かに描写され話題となった。本書を読んだネットユーザーからは、「あれ共感ポイントしかなかったし『アニメ、アイドルのオタクを経てホスト通いになった人』の話はしんどすぎた」、「わかる!わかる!がいっぱい。浪費ではなく愛なんです」と、共感する女性の声が数多く見られた。

■浪費することに意義がある 好きなコンテンツを支えている“ぷちタニマチ感”

 オタク女子の浪費は、単純な“無駄遣い”とは違う。彼女たちは「好きなコンテンツを自分が支えている」という安堵感を得るために行動している面もあるという。毎月のパート代10万円以上を、すべて同人活動につぎ込んでいるという主婦・Aさんは、「スマホゲーのアイドル育成ゲームをプレイしていますが、これってゲームとしては全然おもしろくない。でも、私が課金することでアニメに展開したり、グッズ販売に繋がるかもしれない」と、その想いを告白。例え“クソゲー”であっても、推しキャラへの“お布施”だと考え課金を惜しまないのだという。

 こうした “お布施”行為はいま、日本の多くのコンテンツを支えている。例えば、人気テーマパークの年間パスポートを購入し、足しげく通う行為は“総本山”への参拝行為にも近い。また、人気男子フィギュアスケートの追っかけは海外遠征にまで同行。その総額が「高級車一台分」というファンもいるようだ。

 このあたりは宝塚歌劇団を応援する女子たちにも共通する「日本の伝統的スポンサー文化」とも呼べるかもしれない。言ってみれば、“ぷちタニマチ”でもあり、一般人ながら後援者やスポンサー的な満足感を味わえるのだ。

■コンテンツの継続を左右 オタク経済を動かす“お布施”の功徳

 こうした、オタク女子たちの献身的な“お布施”行為は各業界で認知されている。実際、東京ビッグサイトで3月に開催された『アニメジャパン2018』では、アニメ業界の関係者が「今、アニメコンテンツを支えているのは“女性”といっても過言ではありません」とコメント。その関係者が言うには、オタク女子は購買意欲が高く、しかも、一度ファンになったらなかなか離れないのだという。

 それらを明確に示したのが、5月5日にNHK BSプレミアムで放送された『全ガンダム大投票』だ。『機動戦士ガンダム』の40周年となる今年、NHKが全ガンダムシリーズを対象に人気投票を実施したのだが、ガンダムは関連市場規模が700~800億円と言われる日本を代表する巨大コンテンツ。そして、その支持層はこれまで男性が中心だった。

 しかし、当番組で放送された作品別ランキングでは、『ガンダムSEED』(3位/女性票44%)、『ガンダムOO』(4位/女性票35%)、『鉄血のオルフェンズ』(6位/女性票45%)といった“平成ガンダム”が上位にランクイン。男女比率を見れば、女性票の存在がこれらの作品を上位に押し上げたことが分かる。昨今のアニメが人気を獲得するには、女性ファンの取り込みが重要となっているのだ。

 前述した通り、彼女たちの浪費には、自身が“推す”コンテンツや作品を“次”につなげたいという願いが込められている。つまり、推しコンテンツの継続、漫画ならばアニメ化への展開やDVD化、さらに映画化や舞台化など、愛するコンテンツの発展のためにお布施をしているのだ。事実、彼女たちの“浪費力”によって、アニメや漫画が「舞台化(2.5次元)」するのはスタンダードとなり、アニメ界の新たな消費スタイル・ビジネスモデルとさえなっている。

■オタク女子の“覚悟の浪費”に付随 男性人気は後からついてくる 

 そんな、オタク女子の“覚悟の浪費”による経済効果だけでも凄いのに、オタク女子に男性が紐づくことで新たな経済効果も生まれる。それは、オタク女子たちが自分の彼氏や夫、子どもたちと一緒に“聖地巡礼”をしたり、テーマパークに“参拝”するということになれば、入場料その他、グッズ代や食事代など何かしらプラスアルファの消費に繋がるのだ。

 とは言え、オタク女子も目が肥えており、コンテンツのキャラクターやシナリオ、設定などの微妙なニュアンスなどに対する感性が鋭く、ちょっとした矛盾やあざとさ、狙いすぎ、露骨なビジネス臭などを感じ取れば、急速に熱が冷めるケースもあるようだ。

 また、昨今は1シーズンに60タイトル以上ものアニメ番組が放送されており、それゆえに“目移りもしやすく”、アニメコンテンツの寿命も以前よりも短くなってきている。2015年、大ブームとなったギャグアニメ『おそ松さん』も、二期放送開始まで約一年半というタイムラグがあったため、一期ほどの盛り上がりを起こせなかった事例もある。

 いずれにしろ、コンテンツの発展を考える際は、“オタク女子”たちの動向は決して無視できないものとなっている。今後、彼女たちの“お布施=愛”がどんなコンテンツを育て、新たなムーブメントを発展させていくのか楽しみだ。

最終更新:5/8(火) 10:14
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