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法的権利よりも沈黙を選んでしまう同性カップルの心情

5/7(月) 11:24配信

BuzzFeed Japan

4月26日、同性パートナーの遺産の引き渡しなどを求める訴訟が大阪地裁に起こされたという報道に驚きました。日本で「同性婚」を問う、こんな直球の裁判が起こされるとは予想してなかったからです。

この裁判の内容をご紹介すると共に、現状でもできる対策と、それでも対策に踏み切れない当事者の心情をお伝えします。
【寄稿:永易至文・行政書士、NPO法人事務局長】

報道内容によれば、

 ・原告男性(69歳)のパートナー(故人)は8歳年上の男性。1971年ごろから同居し、自営事務所を設立。パートナーが代表だが、実際には男性だけが働いて生計を立てていた。

 ・パートナーは前立腺がんなどで度々入院し、男性は毎日見舞いに訪れていた。

 ・相続問題に備えて養子縁組も検討していたが、2016年3月に心臓発作で急死した。

 ・親族は、男性が葬儀で家族席に座ることや火葬への立ち会いを拒否。事務所の賃貸契約を解除したり、パートナー名義の通帳を持ち出したりし、事業の閉鎖を余儀なくされた。

 ・遺言はないが、男性側は「相手が亡くなった場合は全財産を相続する」と13年ごろに口頭で合意したと主張。

 ・親族に慰謝料700万円の支払いと財産の引き渡しを求める。

同性カップル間での婚姻制度がないため法定相続がなく、死亡時には(往々それまで疎遠だった)親族が現れて財産を持っていってしまう話はしばしば聞かれ、同性カップルの典型的悲劇の一つとされています。

これに対し、立法の場で進捗が見られないなか、司法で問う必要が言われてきましたが、裁判をどう構成するかは悩みでした。婚姻届を出し、(予定通り)不受理になり、その取り消しを争うなども、訴えの利益がなく却下(門前払い)される懸念があります。

訴訟の前哨戦とするべく、現在、日弁連に対し、「同性婚人権救済申し立て」が取り組まれているところです(2015年7月7日、申立人454人)。

同性カップル間での相続には従来、(1)遺言を作成する、(2)養子縁組をする、などの対策が知られてきました。婚姻でき、同性間でも法定相続があるなら、あえてとらなくてもいい方策です。

今回は遺言もなく、一見、「無理筋」な訴えの感はあります。しかし、あえて直球で挑むこのケースには、悲しい事態に至ってしまった当事者がいたからではありますが、私はコロンブスの卵的な驚きを禁じ得ませんでした。40年以上のパートナーシップを否定され、最後の別れすら満足にできず、さらに生活の糧をも奪われる事態に至った原告男性の心中はいかばかりでしょう。

私は裁判のなかで、裁判所がどのようなことを述べるのか、そこにこそ注目したいと思います。判示はかならずや、立法を推進するちからとなると信じます。司法の場へ、「これ、どうしてくれるんや」と問いかけた弁護士のみなさん、そしてなにより悲しみをふるって訴えを起こされた原告男性に、心からの敬意を表します。

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最終更新:5/7(月) 11:47
BuzzFeed Japan