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精子ドナー17人が500人超の生物学的父親に 英国で驚きの統計

5/9(水) 10:01配信

The Telegraph

【記者:Sarah Knapton】
 17人の英国人精子ドナーが500人以上の子どもの生物学的父親になっていることが、最新の統計で明らかになった。

 この驚くべき数字から、ドナーの男性たちがDNAを通じて自身の遺伝性疾患を無自覚に多数の子どもに伝えてしまった可能性もあるのではないかとの懸念を生んでいる。現在、卵巣がんや乳がんのリスクを高めるBRCA1、BRCA2のような欠陥遺伝子のスクリーニング検査は行われていないからだ。

 きょうだいが思いがけず出会い、血のつながりがあることに気付かないまま付き合ってしまうリスクも高くなる。

 英国では、半分血がつながったきょうだいを少なくとも9人持つ子どもが1万8000人以上生まれているが、英国の不妊治療に関する監督機関「ヒト受精・胚機構(HFEA)」が提供している同じドナーから生まれたきょうだいを結び付ける「ドナー・シブリング・リンク(Donor Sibling Link)」制度に登録しているのはわずか163人しかいない。

 HFEAの最新のまとめによると、1991~2015年の間に少なくともそれぞれ30人の生物学的父親になった男性は17人いる。20~29人の子の父親となった男性は104人、10~19人は1557人。9人以下の子どもの精子ドナーとなった男性は6000人以上に上る。

 提供された精子はHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、B型肝炎、C型肝炎、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ハンチントン病、嚢胞(のうほう)性線維症など主要な疾患のスクリーニング検査を受けている。だが、特定のがんやアルツハイマー病のような症状のリスクを高める遺伝子の検査は行われていない。

 BRCA1遺伝子変異を持つ女性が生涯で卵巣がんになる割合は最大60%で、そうした遺伝子変異を持たない女性の2%を大幅に上回る。また、同様の遺伝子変異を持つ女性が乳がんにかかる割合は最大90%に達している。

 慈善団体「卵巣がんアクション(Ovarian Cancer Action)」は、遺伝子検査は現在、家族のがん既往歴がある場合のみ実施されており、精子提供による人工授精で生まれた子供が検査を受けようとすると「非常に多くの障壁」に直面すると警告している。

 卵巣がんアクションのキャンペーン部門長マリ・クレール・プラット(Marie-Claire Platt)氏は、「遺伝性腫瘍の遺伝子変異スクリーニング検査が適切に行われなければ、ドナーから卵巣がん、乳がん、大腸がんなどの遺伝的リスクが知らないうちに伝えられてしまう可能性がある」と指摘した。

「これから子どもを得ようとしているカップルは、自分の子どもに対する将来的な影響に気付かない可能性もあり、特に不安を感じている。私たちは政府に対し、何らかの行動を起こし、精子および卵子の提供プロセスに遺伝子変異検査を含めるよう働き掛けている」と、プラット氏は述べた。

 HFEAの規則では、ドナーによる提供は10家族までと決められているが、このことから考えられるのは、精子提供による人工授精で生まれた子どもの多くに半分血がつながったきょうだいが生まれると、その全員が遺伝子欠陥を保有する可能性があることだ。

 2013年、腫瘍を誘発する神経疾患を抱えるデンマーク人男性、ヘンリク・コーク(Henrik Koch)氏が精子ドナーとなり、生まれた子どもの50%に無自覚のまま疾患を伝えてしまっていたことが発覚した。

 男性も女性もBRCA1、BRCA2の遺伝子変異を保有するが、片方の親が遺伝子変異を持つ場合、子どもに受け継がれる確率は50%になる。だが、両親ともに遺伝子変異を持つ場合は、その子どもは必ず保有者となる。

 2005年以降に精子提供による人工授精で生まれた子どもはドナーが誰かを知ることができるようになったが、それ以前に生まれた子どもは生物学的父親が誰なのか知ることはできない。

 一方、英シェフィールド大学(University of Sheffield)の男性病学を専門とするアラン・ペーシー(Allan Pacey)教授は、ドナーに対する検査を増やすと、英国内で精子ドナーは不足してしまう可能性があると主張する。現在、英国で提供される精子の約3分の1は海外から輸入されている。

「完璧なドナーなど存在しない」とペーシー教授は述べ、こう指摘した。「全てをスクリーニングし始めたら精子ドナーは一人もいなくなってしまうだろう」【翻訳編集】AFPBB News

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1855年に創刊された「デーリー・テレグラフ」は英国を代表する朝刊紙で、1994年にはそのオンライン版「テレグラフ」を立ち上げました。「UK Consumer Website of the Year」、「Digital Publisher of the Year」、「National Newspaper of the Year」、「Columnist of the Year」など、多くの受賞歴があります。

最終更新:5/9(水) 10:01
The Telegraph

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